中島愛「自分を見つめ直せた」原点回帰で見えた新たな自分と掴んだ自信
INTERVIEW

中島愛

「自分を見つめ直せた」原点回帰で見えた新たな自分と掴んだ自信


記者:榑林史章

撮影:

掲載:21年02月03日

読了時間:約12分

 声優・歌手の中島愛が2月3日、5枚目のオリジナルアルバム『green diary』をリリース。尾崎雄貴、清竜人、RAMRIDER、tofubeatsなど多彩なクリエイターが参加し、中島が好きだと言う歌謡曲やシティポップのテイストが織り交ざった作品に仕上がった。歌詞にはネガティブ思考だった自分を肯定する、未来を見据えた前向きさが込められている。今作を通して「自分を見つめ直せた」と話す彼女にその真意を語ってもらった。【取材=榑林史章】

緑は自分を表す色

『green diary』初回盤ジャケ写

――『green diary』というアルバムタイトル、グリーンという色が中島さんにとっての原点的な色であるとのことですが。

 私のデビュー作となったアニメ『マクロスF』で私が演じたランカ・リーの髪がグリーンで、そこからイベントなどでファンのみなさんが振ってくださるペンライトが緑色になったんです。私からファンのみなさんにペンライトの色をリクエストしたわけではないのですが、アニメフェスや海外でライブをやった時は、自然とみなさん緑に統一してくださって。その緑の海のような光景が印象に残っていて、緑は自分を表す色、自分のアイデンティティだなと思っています。

――今作はそんな中島さんの原点である緑をテーマに制作され、楽曲ごとに違った緑色がイメージとして設定されています。

 10曲入りで、そのうちシングル曲の「髪飾りの天使」と「水槽」が、違ったニュアンスの緑に当てはめられると思ったことから、10曲全部少しずつ違う緑をイメージカラーに据えて、その上で作家さん方に「この緑色です」とカラーチャートをお見せしながらテーマを説明しました。全員の方と対面またはリモートで打ち合わせをさせていただきました。

――リード曲「GREEN DIARY」(作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴)は、過去を振り返らず今の自分を肯定している曲です。

 このアルバムでは、自分自身と向き合いたいと思ったんです。特に「GREEN DIARY」では、自分はこういう歩み方をして来たということを歌いたくて、デビューしてからの道程やその時々に感じていたことを打ち合わせでお伝えしました。「それで良いじゃないか」というメッセージが込められた素晴らしい曲を、尾崎さんが作ってくださいました。

――アルバムタイトルと同じく、1曲目の「Over & Over」の歌詞の最初にも<新しいダイアリー>と出て来ます。日記をつけているんですか?

 書くんですけど、ただ古い日記をそのまま残しておくのが嫌で、定期的にシュレッダーにかけています(笑)。ずっと前、実家に帰った時に高校時代の日記を発見して、それも全部シュレッダーにかけました。

――嫌なことばかりを書いていたとか?

 良いこともたくさん書いてあるんですけど、虚しくなったりして(笑)。でも、そういうことをしても平気なのは、きっとこの仕事をしているからだと思います。メディアに各年齢の時の写真や言葉、インタビュー記事などたくさん残っていて。それが何より大事な日記のようなものだから、自分の走り書きは躊躇なくシュレッダーにかけられるんだと思います。人からもらったものはどんなに古いものでも大事に保管してあるんですけど、自分のものにはこだわらないと言うか。だから写真も誰かと写っているものはありますけど、一人で写っているものはあったり無かったりですね。

――また今作には「メロンソーダ・フロート」や、清竜人さん作詞・作曲・編曲による「ハイブリッド□スターチス」(※□は居抜きハート)など、大人可愛い楽曲が多数収録されています。「ハイブリッド□スターチス」は、清さんらしいファンタジックな雰囲気のあるポップナンバーです。

 清さんがいろんな方に提供された曲にはハートマークが付いているものが多くて、それがとても可愛いらしくて好きだったので「私の曲にもハートを付けてください」とお願いをしました。そうしたら「ハイブリッド□スターチス」というタイトルにはもちろん、歌詞のワンフレーズごとにハートマークが付いていて、最初に歌詞を読んだ時はびっくりしましたけど、「これが欲しかった!」という感じで嬉しかったです。

――この曲のテーマはどういうものですか?

 「大人ハート」というテーマでお願いをして、主人公は自分と同じ31歳くらいの設定で書いていただきました。らしくない私、普段はこうじゃないのに、「あれ? 最近は浮かれてるかも?」みたいな(笑)。歌い方も、可愛げは欲しいけど全部甘くしたいわけではなかったので、そのサジ加減が難しかったです。大人の女性に感じられる可愛らしさが、上手く表現出来たら良いなと思って歌いました。

――タイトルは花の名前だそうですね。

中島愛

 ハイブリッドスターチスというお花で、かすみ草のように小さいお花がたくさん咲く、いじらしくて可憐なお花です。清さんは、打ち合わせの段階からこのハイブリッドスターチスが浮かんでいたそうです。歌詞にハートがたくさん散りばめられているのは、小さいお花が集まった花束みたいなイメージで、まるでハイブリッドスターチスのようで、さすが“清竜人印”だと思える曲になりました。

――「粒マスタードのマーチ」(作詞・作曲・編曲:宮川弾)も、ちょっとユーモアもあって。これはどういうテーマで?

 弾さんの曲の持つ可愛らしさや優しさを残しつつ、ちょっと大人の女性の「今日くらいはダラダラ過ごしても良いかな」みたいな日のことを書いて欲しいとお願いしました。それで、入れたいフレーズや言葉があるか聞かれて、<あとまわし>という言葉を入れたいと答えたら、「ほう~」と言いながらバッチリ入れてくださって、ファニーな感じの音でまとめてもらった感じです。

――<あとまわし>って良いですね。なんかホッとします(笑)。

 そうですよね。今世界中が頑張っている中で、「明日出来ることは明日で良いじゃん」的な力の抜き方は自分にも必要だったし、みなさんの心に響いてくれるんじゃないかなと思います。そういうあくまでもポジティブな意味で、<あとまわし>の曲を作って欲しいとお願いをしました。

――でも、どうして「粒マスタード」なんですか?

 主人公がダラダラしているのはその日だけで、普段はちゃんとしている。そういう人の家には、たいてい粒マスタードが置いてある、みたいなイメージだそうです(笑)。

作家の力を借りて自分を肯定することが出来た

中島愛

――「窓際のジェラシー」と「ドライブ」は、車に乗っているイメージでシティポップ感があります。ここ数年こういうサウンドが流行っていますけど、中島さんはもともとこういう90年代初頭の音がお好きでしたよね。

 はい。アルバム全曲好きな音ばかりですけど、特にこういったシティ感は大好物です。竹内まりやさんの「プラスティック・ラヴ」ではないけど、高速道路をドライブしているような感じがありますね。

 「窓際のジェラシー」の作曲・編曲のRAM RIDERさんは、2年くらい前にドイツのアニメフェス『DoKomi』でご挨拶をさせていただいたことがあって、嫉妬をテーマに歌謡ディスコを提案させていただきました。作詞のSummer Valentineさんには、ちょっとノスタルジックでも現代的な香りもしてと、好き放題に提案させていただいたんですけど、タイトルや<プリンアラモード>など歌詞に出てくるワードが絶妙です。

――「ドライブ」はtofubeatsさんの作詞・作曲・編曲で、しかもバラードという。

 一昨年リリースしたカバーアルバム『ラブリー・タイム・トラベル』の時に、tofubeatsさんに2曲アレンジしていただいて。「真夜中のドア」のアレンジのサジ加減がすごく良くて、今度はもっとバラードで歌ってみたいと思ってオファーさせていただきました。編曲だけでなく作詞作曲もお願いしたのは初めてです。

――これはアナログレコードがテーマですね。

 以前にラジオ番組でご一緒させていただいた時に、「私は蔵を持っている男性と結婚したい」みたいな話をして(笑)。「レコードを収納する蔵や倉庫を持っていると良いな」と。半分本気、半分冗談だったんですけど、今回のレコーディングの時にtofubeatsさんが「中島さんの蔵の話が忘れられなかった」とおっしゃっていて。さすがに<蔵>というワードは入ってはいませんけど、その時にお話したことも含めてこういう歌詞にしてくださったそうです。

――そう言えば「GREEN DIARY」の歌詞にも車が出て来ました。

 全打ち合わせで車に関するワードは一度も出て来なかったのに、それがいろんな曲に出て来ているのは面白いです。きっと30代になると、車で一人出かけるイメージなんでしょうね。夜にドライブしたりとか。きっとそれが大人の女ということなのかなって。でも私、運転免許を持っていないんですけどね(笑)。

――そしてラストの「All Green」(作詞・作曲・編曲:葉山拓亮)は、とてもスケールの大きな曲。歌詞からは、コロナ禍の今に伝えたい気持ちを感じました。

 「All Green」というタイトルをこちらで付けたんですけど、ロケットなどが発進する時に青信号のような意味で「All Green」と言うんです。それで私自身に対して曲が「これからも前進しなさい」と言ってくれている意味と、みんなに対して「一緒に進んで行こうね」という両方の意味を込めました。そういう歌詞を書いて欲しいと葉山さんにお伝えしたところ、「今の世相を織り込みたいですか?」と聞いてくださったので、ぜひにとお返事させていただいてこういう曲になりました。

――未来に向かっている感じがあって、この曲があることですごく整いますね。

『green diary』通常盤ジャケ写

 10曲目ということも決めていて、1曲目から9曲目までのすべてのグリーンをまとめる曲にしたいという意味も込めて「All Green」と付けて、それも葉山さんにお伝えして作っていただいたんです。

 有観客のライブがなかなか出来ないことを悩んでいた時期に制作したので、その気持ちも正直にお話をさせていただいて。<la la la…>と歌っているところには、いつかライブでみんなと一緒に歌えるようにとの願いが込められています。

――制作はいつくらいからだったんですか?

 出すことは一昨年の暮れくらいに決まっていて、コロナの状況の中で昨年の『FULL OF LOVE!!』と今作の構想を同時に練って、作家さんとの打ち合わせは夏から秋にかけてやっていました。

――2枚ほぼ同時進行で、大変ではなかったですか?

 声優・歌手としてデビューした自分を軸にしたオリジナルアルバムを作ろうというコンセプトだったので、むしろキャラソンアルバムが同時進行だったおかげで自分自身を見つめ直しやすかったです。

――見つめ直した結果、何をどう感じましたか?

 今作のコンセプトをスタッフにプレゼンした時に、「これをきっかけに自分に自信が持てるようになりたい」という話をしたんです。原点を見つめ直して、ここが良かったんだと自分で言いたいし、周りからも言ってもらうことによって、自分を肯定したいという目標がありました。いざ出来上がったアルバムを聴くと不思議なもので、「自分ってこういう人だったんだ!」という発見のほうが大きかったです。「みんなが見てくれている私はこういう人なんだ」と。それが自信に繋がった感じですね。

――そんなに自分に自信が無い人だったんですか?

 まったく無かったです。褒め言葉も素直に受け取れないタイプで、どんな昔のことでも「なんであんなことをしちゃったのかな」って、ずっとウジウジと考えてしまうんです。日記をシュレッダーにかけてしまうのは、そういう性格もあるからでしょうね。そんな私でも、視点を変えればそこも魅力だと、そう言ってもらえて救われた1枚になりました。たくさんの作家さんたちのお力を借りて、「それで良いんだよ」と励ましてもらった感覚です。

――きっと中島さんのように、ウジウジと思い悩んでしまう人は多いんじゃないでしょうか。

 多いと思います。そういう同年代に向けて共感してもらうことも、テーマの一つでした。こういう時ってあるよねって共感してもらえたら、自分も安心するし、聴いてくれる人も少しは心が楽になってくれるんじゃないかなって。

――今作は等身大の中島さんが投影されて、これまでの中でも落ち着いた大人の1枚という印象です。中島さんにとっての大人ってどういうイメージですか?

 まだ大人の入り口に立ったばかりなので、難しいですね。でも、上手く変化していけるということなのかな。自分はこうじゃなきゃいけないというものに縛られることをやめて、人が良いと言ってくれることを受け入れることが出来たり、ちょっとずつ柔軟になっていくのが大人になるということなのかもしれないです。その大人になる手助けを、たくさんの人にしてもらったアルバムです。こうじゃなきゃダメだとか、こうじゃなきゃ変に思われるとか、そういうものを1回手放したいと思っていたので、今作を作ったことでちょっとは手放せたんじゃないかと思います。

(おわり)

作品情報

中島愛
5thアルバム『green diary』
2月3日発売
*グッズ付き完全生産限定盤[CD+BD+GOODS]/8,900円+税
*初回盤[CD+BD]VTZL-182/5,000円+税
*通常盤[CDのみ]VTCL-60543/3,000円+税

<収録曲>
M-1:Over & Over(作詞・作曲・編曲:三浦康嗣)
M-2:GREEN DIARY ※アルバムリード曲(作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴)
M-3:メロンソーダ・フロート(作詞:児玉雨子、作曲:SoichiroK / Nozomu.S、編曲:Soulife)
M-4:ハイブリッド□スターチス(作詞・作曲・編曲:清竜人)
M-5:髪飾りの天使(作詞・作曲:吉澤嘉代子、編曲:清竜人)
M-6:粒マスタードのマーチ(作詞・作曲・編曲:宮川弾)
M-7:窓際のジェラシー(作詞:Summer Valentine、作曲・編曲:RAM RIDER)
M-8:ドライブ(作詞・作曲・編曲:tofubeats)
M-9:水槽(作詞:新藤晴一、作曲:矢吹香那、編曲:トオミヨウ)
M-10:All Green(作詞・作曲・編曲:葉山拓亮)

プレゼント情報

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