俳優でシンガーの北園涼が2月3日、2nd ALBUM『Frontier』をリリース。2014年にデビューののち、ミュージカル『忍たま乱太郎』シリーズ、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、MANKAI STAGE『A3!』など多くの舞台作品に出演。2019年10月に日本コロムビアよりアルバム『Ark』でメジャーデビューし 、『Frontier』では表題曲となる「Frontier」で初の作詞に挑戦した。上京してきた当時のことを描いた1曲となった。インタビューでは音楽にのめり込んだきっかけから、音楽で届けたい想いなど、シンガーデビューして約1年4カ月、北園涼の今に迫った。【村上順一】
音楽を通して自分の言葉をしっかり発していきたい
――北園さんの音楽との原体験はどんなものでしたか。
僕がよく聞いていた音楽は激しいロックではなかったです。もう少し落ち着いたポップなバンドの曲を歌っていました。GReeeeNやAqua Timez、ロードオブメジャーやMONGOL800とか好きでカラオケで歌っていました。音楽自体はすごく身近にあっていいなと思える曲はドラマの主題歌だったりしたんですよね。役者を目指したきっかけがドラマの『WATER BOYS』だったので、そこで流れていた福山雅治さんの「虹」もすごく記憶に残っています。そこからドラマだけではなく音楽だけでも楽しいと思えるものに出会って行きました。
――ハードな音楽が好きになったきっかけはONE OK ROCKだったとお聞きしています。
東京に出てきてから友達の影響でワンオクとかUVERworldを聴いていたんですけど、そこからどんどん好きになっていった感覚はあります。そこからひたすらはまってワンオクの全部アルバム買いましたから。
――焼肉屋さんでアルバイトをしていた時ですよね?
そうです。でもアルバイトはたくさんやっていたんです。寿司屋とガソリンスタンドと居酒屋と焼肉屋、コンビニもやっていました。あとCM撮影の大道具とかもやっていて、電動ドリルを持って撮影の現場にも行ってました(笑)。
――さて、シンガーデビューされて、この約1年間でご自身の成長はどう感じていますか。
成長出来ていると感じています。前作では表現方法としてのバリエーションがまだまだ少なかったので、今回はそこを重視してレコーディングに臨んだところもあります。喉、身体の使い方を考えてレコーディングしようと心掛けました。そして、音楽を通して自分の言葉をしっかり発していきたいと思っているんです。
――基本的にすごくキーが高いのですが、これは北園さんが望んでこの高さに?
はい。僕がこのキーの高さで挑戦したいなと思って。俳優でも音楽をやられている方は沢山いるんですけど、その中で僕の色を出さなければいけないなと思ったので、自分の良さというところでキーの高さは武器になるんじゃないかなと思いました。
――ライブで実際に歌ってみてどう感じました。
もう少しキーを下げても良かったかな(笑)。あと、落ち着いたミディアム系の曲を入れたいなと思いました。ライブの構成としてアップダウンは必要だなと。アップナンバーが多い分、熱いライブが出来るんですけど、スタミナはすごく重要なのでジムに通って鍛えてはいるんです。
――そういえば英会話もやられているみたいですね。
はい。去年の年末に入会して、コロナ禍で一旦ストップしてしまって。そのスクールからオンラインレッスンを勧められて、今はオンラインでやっているんですけど、最初はオンラインってどうなんだろう? と不安があって敬遠していたんです。でも、実際にやってみると全然問題なくて、先生が言っていることも、僕が話すこともしっかり伝わって。むしろ移動時間のことを考えるとオンラインの方が効率が良いなと思ったり。
――やってみてわかる良さもあったんですね。そもそも英会話を始めた動機は?
英語の歌詞を歌う事も多いですし、自分で歌詞を書く時に英語は使いたいなと思ったのがきっかけです。あと、去年、海外でお仕事をさせていただくことも多くて、英語が話せればもっとコミュニケーションが取れるかなとも思ったんです。
自分が大事にしているものを伝えられる場所がずっとあり続けて欲しい
――そして今回、ご自身で作詞された曲「Frontier」が収録されています。
前作『Ark』の時から作詞にチャレンジしたいと思っていて、普段から歌詞に使えそうな言葉を探してメモを取っていました。初めて出す作品は自分の始めたきっかけのようなものを書きたい、それがみんなの背中を押すような曲になったらいいなと思いました。それで、今回作詞させていただく曲が届いたんですけど、僕が書き溜めていたものとうまく言葉数が合わなかったんです。メロディに言葉をはめる難しさを痛感しました。書きたかったテーマは変わってはいないんですけど、かなり書き直しました。
――具体的にはどのような情景を浮かべて書かれたんですか。
僕が東京に出てきて、一度就職しているんですけど、その時に働きながらオーディションを受けていたんです。その頃のことを思い出しながら作詞しました。そして、自分が大事にしているものを込めました。
――<まだ見てない理想の景色をこの目に映したい>と歌詞にありますが、その見たい景色は今も昔も変わっていないですか。
変わってはいないんですけど、色んな理想の景色が生まれてきたと思います。最初はとにかく売れたい、という想いが強かったんです。もちろんそれもありながらも、もっと自分が大事にしているものを伝えられる場所がずっとあり続けて欲しいなと思っています。昔から思っていることなんですけど、言葉に力が欲しい、影響力のある人間になりたいなと思っていて、一人で生きていける人もいるとは思うんですけど、そうではない人の助けになりたいと思っていて、一人でも多く引っ張ってあげられたらなって。
――今作で北園さんが特に印象的な曲をあげるとしたら。
「Gold」です。ライブでぶち上げてくれる曲なんです。この曲からレコーディングはスタートしたんですけど、その時に自分の歌の表現に挑戦したので、印象として残っています。
――「Road」もグッときますね。すごく孤独な部分を感じさせてもらえるといいますか。
この曲もすごく良いですよね。最後は割と強がりな感じもあるんですけど。歌に関してもそういったイメージを持ちながら、大人っぽくというよりは、幼さを感じさせるように歌ったので、注目していただけると嬉しいです。
――「Great Escape Runnner」という楽曲がありますが、北園さんが脱走、逃げ出した経験というのはありますか。
全然偉大なる脱走ではないんですけど、ガソリンスタンドのアルバイトを、2日で辞めてしまったことです。とにかく寒かったのと、深夜の時間帯を選んでしまったので眠くて、これは無理だなと当時思ったんです(笑)。居酒屋でのバイトもそうだったんですけど、夜の仕事は自分に合わないなと思って。
配信ライブで気づいたお客さんの存在の大きさ
――音楽活動でプラスになったことは?
芝居と歌で相乗効果は生まれています。歌の表現だったり、自分が抱えているものを発散出来たというのはプラスでした。役者は意外と我慢が必要で、舞台ではその部分は意外と発散できていなくて...。音楽でその部分を補えている感覚はあります。作詞とか一つのものを作り上げるというのは貴重な経験でしたし、使っていなかった脳が動いたなと感じています。
――今作は楽曲に対して、どんな曲を歌いたいとリクエストされたりしたんですか。
みんなで歌える曲が欲しいというリクエストはさせていただきました。あと、『Ark』にはなかったミディアムな曲調もあったら嬉しいなということもお伝えして。ライブ映えする曲というのも大きくて、それはやっぱりライブに来て欲しいからなんです。家で音楽を聴くのももちろん良いんですけど、僕はライブが好きなので、どうやってライブを楽しむか、というのを考えた選曲でした。
――昨年おこなったライブはいかがでした?
配信ライブもやったんですけど、すごく勉強になりました。あと、お客さんの存在の大きさだったり、みんなにすごく助けられていたんだなと思いました。それは舞台とはまた違った感覚で、幕を開けた瞬間やカーテンコールでは感じるんですけど、芝居が進んでいくと入り込んでしまって舞台中はあまりお客さんを感じていないんです。でも、ライブは頭から最後までずっとお客さんの存在を感じられる、それもあってお客さんが目の前にいない配信ライブは難しさを感じる部分はありました。
――ちなみに北園さんは他のアーティストのライブを観に行った時はどんな感じで見るタイプですか。
一緒に行く人だったり、席の場所にもよるんですけど、割と棒立ちかもしれません。本当はみんなと一緒に乗りたい、という気持ちもあるんですけど、隣に知らない人がいると萎縮しちゃう感じで(笑)。僕はライブの雰囲気、空気感が好きなので、そこにいるだけでも楽しいんです。
――これまで観に行って印象的だったライブは?
やっぱりワンオクの東京ドームでのライブです。TAKAさんがセンターステージでスポットライトを浴びてアカペラからスタートするんですけど、1曲目から鳥肌が立ちました。このまま終わってもいいと思えるくらいで、1曲目だけでチケット代以上のものを感じたライブで感動しました。
――最後に2021年の音楽活動の展望は?
かなり皆さん疲弊してきていると思います。状況もこれまでとは違ってきていて、思い切り騒げる場所というのがなくなってしまっているので、まずはそういう場所が戻ってくることを願いながらも、そうじゃなくても楽しめるライブというものを考えながら活動していきたいなと思っています。作品としては全曲作詞したものを出せるように頑張りたいと思っています。
(おわり)
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