上坂浩光氏

 小惑星探査機「はやぶさ2」から分離したカプセルが地球に帰還した6日、都内の映画館では、同機の帰還までを追う『劇場版HAYABUSA2~REBORN~』(公開中)のトークショーが開かれた。映画を監督した上坂浩光氏は「感慨深い」と語った。

 2003年5月に日本が打ち上げた最初の「はやぶさ」は、小惑星イトカワを採取し、2010年6月に地球に帰還。2014年12月3月には小惑星リュウグウを探査するために「はやぶさ2」が打ち上げられた。本作は「はやぶさ2」が、リュウグウでサンプルを採取し、地球に帰還するまでの探索の旅を、全編3DCGで描くドキュメントだ。

 この日帰還した「はやぶさ2」のカプセルの様子を、JAXA相模原キャンパスで見守っていた上坂監督は「2つのミッションをそばで見てきて、それが一つ終わり感慨深く感じている。『はやぶさ』は満身創痍だったが、『はやぶさ2』はスムーズだった。でもそれは、『はやぶさ』の失敗を全て生かしてきたからこその成果だった」と語った。

 一方で、「外から見ると順調に見えたと思うが、内部の人は非常にハラハラしていた」とし、カプセルを切り離す際に行われるシステムを6年間1度も動かすことがなかったため「きちんと動くかが心配だった」と明かした。

 そのうえで、トラブルなくカプセルが帰還出来たことで「映画で描いたことが現実通りになった」と話した。

 「はやぶさ2」が採取したサンプルは、地球誕生を解明するのに大きな影響を与えるとも言われている。監督は「人類にとって第一歩」と期待し、「はやぶさミッションはこれで終わるが、こういう試みは今後も続けて欲しいと思う。自分達がどういう立ち位置にいるのかは知る上で重要だ」と語った。

 「はやぶさ」の技術は「はやぶさ2」、そして形は変えて「MMX」(火星衛星探査計画)に継承される。「思いや技術は生き残っていきます。命の本質は継承するところにあると思っている。まさに体現している」

 更に「映画を見て、機械である『はやぶさ』の苦労を見て助けてあげたいと思う人がいる。人の心の動きは素晴らしい。この作品はミッションを説明するだけでなく、人を思いやる気持ち、優しい気持ちを呼び覚ますと言ったらおこがましいが、それを感じられたのがもう一つの大事な軸だった」と述べた。

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