圧巻のステージ、愛希れいか

 愛希れいか主演のミュージカル『フラッシュダンス』が12日、日本青年館ホールで幕が上がる。11日は公開ゲネプロが行われ、圧巻のステージを見せた。

 1983年公開、世界中で1億ドル以上の大ヒットを記録した同名米映画の舞台化。オリジナル映画版の脚本・原案であるトム・へドリーを舞台版脚本に迎え、映画版の遺伝子を受け継ぎながら、よりダンスと音楽をフィーチャーしたミュージカルとして、昭和・平成を超え、令和の日本に再登場する。

 舞台は83年のペンシルベニア州ピッツバーグ。昼は製鉄所、夜はバーのフロアダンサーとして働くアレックス(演・愛希れいか)は、日々プロのダンサーになることを夢みて暮らしていた。そんなアレックスに製鉄所の御曹司、ニック・ハーレイ(演・廣瀬友祐)は一目惚れをする。一方、同じくプロのダンサーを目指す親友のグロリア(演・桜井玲香)からダンスの名門学校・シプリーアカデミーのオーディションを受けることを勧められるアレックス。ダンスの恩師であるハンナ(演・春風ひとみ)からも背中を押され、意を決してオーディション会場を訪れるが、周りの熟練ダンサーたちを目の前にして自信を無くし、逃げ出してしまう…。

 光り輝く宝石箱のように歌とダンス、そして情熱が日本青年館ホールに詰まっていた。目を見張るのは圧巻のパフォーマンス後に披露される愛希れいかが大量の水を浴びるシーンだ。水に屈折する光が彼女をさらに美しくさせた。アレックスはチャーミングさも勇ましさもある。愛希はこれまでの歩みをこのアレックスにぶつけるように生きる。その熱量が人ひとつの動作に伝わってくる。カーテンコールの時にみせる笑顔が全てを物語っている。

 愛希れいか「今こうしてこの作品を届けられるということ、チケットを買って劇場に来て下さるお客様がいて下さるということがなによりも幸せですし、感謝の気持ちでいっぱいです。今回、いつもより制限があるお稽古の中でも、とてもストイックに、そして本当に楽しくお稽古できたのは、思いやりに溢れた愉快な個性的なキャストの皆様のおかげです。この状況で、みんなで作り上げたこの舞台はいつも以上にたくさんの想いが詰まっています。エンターテイメントのもつ力を少しでも感じて頂き、観終わった後には、前に向かって一歩踏み出す勇気を持ってもらえるような、明日への活力になる…誰かの背中を押せる…そんな舞台にしたいと思っています。私が今できる全てを懸けて挑みます! どうぞ、宜しくお願い致します」

 音楽は生バンドともあって生き生きしている。歪むギターに、グルーヴを生み出すドラム。アレックスを始めとする登場人物の生きる鼓動をそのまま表現しているかのようだ。そのなかで見せる歌。なかでも、愛希と、ニック・ハーレイを演じる廣瀬友祐のデュエットは美しい。その廣瀬は絵に描いたような紳士。ハマり役だ。

 廣瀬友祐「自分の中で止まってしまったものが、また凄まじいエネルギーで動き出そうとしています。当たり前じゃない一瞬一瞬に命を注ぎたい。危険は常に隣合わせかもしれません。でもだからこその興奮がこの作品には間違いなくあると思います。すでに心が震えてます。このパワーがこの先の未来を照らせるように魂込めたいと思います。宜しくお願いします」

アレックス演じる愛希とハーレイ演じる廣瀬

 日本版脚本・訳詞・演出を手掛けるのは岸谷五朗。高さ十数メートルあろう対の壁を大きく動かし、舞台となる街や工場、バーなどを再現する。ダンスもふんだんに取り入れ、登場人物の喜怒哀楽、葛藤を抱えながらも前に進むダイナニズムをこれらの歌、ダンスに投影させる。閉塞感漂うこの時代に前を進む火を灯す。

 岸谷五朗「三月、四月、五月コロナによって主催する『地球ゴージャス』の大切な25周年記念公演の殆どが吹き飛ばされた! 何処にもぶつけられないエンターテイメントの浮かばれない魂の憤りは沸々と熱を帯び、その時をずっと待っている。この瞬間(とき)に初日を迎える公演は私達だけではなく演劇関係者皆の期待を背負う。他の公演の千穐楽までの完走を我々が祈るように『FLASHDANCE』は繊細に毎日の稽古を重ね周りからも愛されて来た。初日の産声をこれ程未来の可能性だと感じる公演は初めてだ。リスクを背負い劇場に足をお運び下さるお客様!徹底した対策を講じてお待ちしております」

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