平山カンタロウ「自分への挑戦状」心機一転スタートで高まる意欲
INTERVIEW

平山カンタロウ


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年08月17日

読了時間:約5分

 平山カンタロウが12日、シングル「キミと歯のうた」をリリース。本作は、7月5日に7年間に及ぶ自身のバンド“図鑑”の活動を終了し、シンガーソングライター“平山カンタロウ”としての新たなスタートとなるメジャーデビュー作品。「キミの成長を見届けながらいずれは別れることになる、親心にも似た乳歯の気持ちを歌いました」という平山の書き下ろしによる「キミと歯のうた」は、 NHK『みんなのうた』8、9月の楽曲に決定。バンドとしての図鑑から新名義で心機一転スタートした平山に、本作に込められた想い、そしてシンガーソングライター平山カンタロウとしての活動を始めた現在の心境に迫った。【取材=平吉賢治】

音楽家として成長した図鑑での活動

――自身のバンドの図鑑の活動を終了し、平山カンタロウ名義として活動をする経緯についてお伺いします。

メジャーデビューが決まったこの機会に、「図鑑」のバンドイメージや活動を一度一新して、バンドサウンドや、これまでの楽曲に囚われない活動を始めたかったという思いもありますし、名前については、このネット社会において、検索しづらい「図鑑」より「平山カンタロウ」の方がいいのではないかという考えもありました。

――7月4日の図鑑のラストライブの印象はいかがでしたか。

「図鑑」とは長い付き合いで、お客さんや元メンバーそれぞれとの心の財産でもあったので、いざ終わるとなると寂しい気持ちになりましたし、大好きな「図鑑」の曲の演奏も最後になるので、1曲1曲丁寧に感謝を込めて歌おうとライブに望みました。
当日は配信で、実際にお客さんを目の前に演奏は出来なかったんですが、みんなと思い切り楽しめたと思いますし、「図鑑」に気持ちよくみんなでお疲れ様が言えた気がします。

――図鑑の活動で、得たものとして大きかったものは何でしょうか。

自分の音楽が、出会ったこともない誰かにきちんと届く可能性があるという感覚や、ライブやレコーディングに臨む準備の仕方など、音楽家として成長させてもらったことはとても大きいです。

――バンドからシンガーソングライターへ、アーティスト名義を改めることにより、活動内容や心境に変化があるのではないかと思われます。特に大きく変わると思われる点は何でしょうか。

元々バンドサウンドが好きでバンドをやっていたのですが、バンドになると(ある意味長所でもあり短所でもあるんですが)、アンプを通したベースの音があって、歪んだギターはなくちゃ、みたいな感覚的な縛りを感じるところはありました。
今回完全にソロアーティストとして、真っ新な状態にしたときに、本当に縛りがないというか、むしろ何でもやれるが故に試されてる部分もあって、どこまで自由にいろんなサウンドや楽曲を作れるかという楽しみと、自分への挑戦状みたいな気持ちでいます。

――バンドとシンガーソングライターというスタイルの移り変わりから、図鑑と平山カンタロウさんの音楽性として異なる点を挙げるとしたら何でしょうか。

シンプルにバンドサウンドじゃなくてもいいというところ。僕自身アコースティックギターで音楽を始めたので、シンガーソングライターという形はより原点には近い気がしてます。でもまだ2曲しか世に出せてないので(笑)、これから「平山カンタロウ」の音楽性を作っていきたいです。

バンドサウンドに縛られない新たな活動を

「キミと歯のうた」

――書き下ろし楽曲の本作がNHK『みんなのうた』8月、9月の新曲となり、率直にどのような心境でしょうか。

嬉しいです! 子どものころから当たり前にテレビで観ていた「みんなのうた」に仲間入りができたことは、作曲家として自分を褒めたいくらい嬉しい。

――本作からは優しく心温かい印象を受けました。NHK『みんなのうた』の楽曲ということで、どのような点を意識して制作しましたか。

 自分の中の「みんなのうた」のイメージが、「優しい」「温かい」「ノスタルジック」だったので、そのど真ん中をいきたいとは思っていました。

――「歯」を題材としたことには特別な理由があるのでしょうか。

 プロデューサーと話し合いながらテーマを決めていたんですが、その中で「子どもの歯」がでてきて、「乳歯」って実は運命的に決められた別れがあって…と想像を膨らませていく内に素敵な曲になるなと思い作りました。

――カップリング曲「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」からはポジティブで前向きなエネルギーを感じました。この楽曲の核となる想いは?

 今はとても不安がつきまとう世の中で、思い切り心からハッピーになれる曲を届けたいという思いで作りました。

――レコーディングやアレンジ面などで、図鑑としてのこれまでの楽曲と変化を感じた点はありますか。

 アレンジは、「図鑑」のころからお世話になっているShinpeiさんに手がけていただいて、毎回素敵な作品に仕上げてくださるのですが、「図鑑」と違う点は、やはりバンドサウンドに縛られないことで、今回ブルースハープやアコーディオン、ホーンセクションなど幅広いサウンドづくりを意識していただきました。また、レコーディングはコロナ禍で、スタジオには僕とエンジニアさんのみがいる状況だったんですが、サポートミュージシャンには自宅録音した音を使用させていただき、プロデューサー、アレンジャーはリモートでレコーディングに参加していただいて、離れた場所にいながらも、みんなで作っている感覚でいれました。もちろん難点もありましたが、距離や時間、労力などを考えると充分すぎる環境で、この先大いに活用できる方法だと感じました。

普段と違うからこそ、普段と違う考えを楽しむ

――これから、シンガーソングライターとしての活動として描いているビジョンは?

 もっともっと多くの方に楽しんでもらえたり、感動していただけるような作品を届けていきたいですし、武道館や地元長崎の稲佐山でライブをしたいです。

――新たな音楽性なども視野にあるのでしょうか。

 やってみたいものはたくさんあります。サウンドもジャンルも。自分に昇華できないものはないと思い込ませていろいろやってみます。(笑)

――新型コロナウイルス感染症拡大という特殊な時期ですが、これから“シンガーソングライター平山カンタロウ”として、どのような想いをみなさんに届けていきたいですか。

 音楽の意味や力というのを考える機会でもありますし、会いたい人に会えないという状況で、改めて本当の”人恋しさ”を感じられる、ある意味そういう時世なのかなと感じています。普段と違うからこそ、普段と違う考えを楽しむのも有りかなあとは思います。
しかしながら、なによりみなさまお体には気を付けて、健康に過ごしていただくのが一番です。

(おわり)

『NHK みんなのうた』「キミと歯のうた」URL

https://www.nhk.or.jp/minna/songs/MIN202008_02/

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