2019年11月に発売された上沼恵美子のシングル「時のしおり」が、ロングセラーを続け、既に出荷3.5万枚を超える自身最大のヒットとなっている。

 作品「時のしおり」情報

 この「時のしおり」は、昭和の東京五輪や大阪万博、そして平成の大震災を回想しつつ、令和となった今、「心を繋いで 生きましょう」と熱く歌い上げる演歌。昨年11月13日の発売時には、約4年ぶりの新曲という期待もあり、オリコン演歌歌謡部門週間1位に初登場(総合31位)、以降も今年3月まで、演歌系のCDショップを中心に毎週数百枚のセールスをほぼコンスタントに重ねてきた。

 しかし、4月上旬の緊急事態宣言で、多くの人々が不要不急の外出を控え、エンタメ界全体も暗いムードに。そこで、上沼は自身のレギュラー番組で視聴者を元気づけようと「時のしおり」や、カップリングの応援歌「人生これから」を披露するようになった。

 すると、STAY HOME期間中でテレビを観ている人も多かったのか、CDショップが閉まっている間もネット通販が伸びて、4月下旬には2か月ぶりに総合TOP100入り、5月末に緊急事態宣言が全国的に解除されると、もともと応援してきたCDショップも営業を再開し、セールスは一気に上昇。6月15日付では、海原千里・万里時代の「大阪ラプソディー」の最高位(24位)を上回り、自身初のオリコンTOP20入りした。

 さらに、6月29日付では総合12位をマーク。興味深いことに、首都圏ではどの地区もTOP100圏外ながら、北海道、関西、中国、四国、九州など『快傑えみちゃんねる』や『上沼・高田のクギズケ!』の放送地区では、なんと7位まで上昇している。(いずれもオリコン調べ)

上沼恵美子「時のしおり」ジャケ写

 あわせて、週間USEN HIT 演歌・歌謡曲ランキングでも、7月8日付、7月15日付と2週連続1位、またレコチョクの演歌・歌謡曲部門でも6月度3位(ちなみに1位はカップリング曲の「人生これから」)にランクインするようになり、CDセールス、有線放送、音楽配信と多方面で人気に火が付いた。

 このロングヒットを受けて、上沼自身もYouTubeで次のようにコメントを発表した。「この歌を聴いていただいて、歌っていただいてみなさんに元気になっていただきたい。音楽ってほんとうに深い力をもっていますね。改めて感じています。私もがんばります。どうかみなさんも頑張って。歌で元気づけられてください!」

 本作は、2020年7月13日付の最新のオリコン週間シングルランキングでも総合24位、演歌歌謡部門でも2位と、今年後半に向けて累計5万枚突破も射程圏内に。これは、1種類のCDリリースでは大健闘のセールスで、ここ数年、NHK紅白歌合戦の初出場を決めてきた演歌系歌手の多くがヒットの一つの目安としてきた数字でもある。上沼の場合は、CDセールスのほかに、お茶の間での知名度も、『わが心の大阪メロディー』などのNHKの貢献度も抜群な訳で、歌手として紅白歌合戦に出場しても何ら違和感がない。

「コンサート愛唱歌撰」ジャケ写

 ちなみに、もし上沼恵美子が歌手として紅白出場となれば、応援団(1975年)、司会(1994年、1995年)、ゲスト審査員(2019年)、そして歌手として、女性歌手では史上初の4役での出場となる(男性では西田敏行が1990年に達成)。本人も、「あとは歌手として出場できれば紅白グランドスラム達成!(笑)」と意気込んでいるとのこと。

 とりわけ、今年後半は、音楽のチカラで日本を元気にしようという動きが活発になるはず。だからこそ、上沼恵美子の「時のしおり」「人生これから」が、全国区になる可能性は十分にある。【文:臼井 孝(音楽マーケッター)】

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