女性4人組グループMaison book girlが6月24日、初のベストアルバム『Fiction』をリリース。本作はリレコーディング楽曲のほか、ライブで披露し話題となっているマッシュアップ曲「river」、新曲「Fiction」「non Fiction」など全18曲を収録。本編CDは全形態共通で新曲を除く、全楽曲リマスタリング音源化。2015年の結成からキャリア5年で初のベストアルバムになる本作について話を聞くとともに、自身最大規模となったワンマンライブ「Solitude HOTEL ∞F」の感触についても語ってもらった。メンバー自身も「洗練されていった結果が今」という現在のブクガの魅力に迫る。【取材=平吉賢治】
新しいブクガを見てもらえた自身最大規模ワンマン
――自身最大規模となったワンマンライブ、1月5日のLINE CUBE SHIBUYA「Solitude HOTEL ∞F」公演の感触はいかがでしたか。
矢川 葵 去年の9月くらいからダンスの振り付けのHIROMI先生がずっとついてくれていて、ライブの演出などにも関わって頂いたんです。そのまま1月5日のワンマンもその先生がみてくれたんです。以前のライブより一つステップアップしたと実感したし、お客さんにもそこが伝わっていたらいいなと感じました。「良くなった」と言ってくださる方もいたので、その先生がついたことによって新しいブクガを見てもらえたライブになったなと思います。
――コショージさんもステップアップしたと感じた?
コショージメグミ そうですね。一つ前のワンマンライブでも一生懸命やってその時の最高のものを頑張ったという印象だったんですけど、ソールドアウトできなかったことに少し負い目を感じていたというか…そういう意味で今回は達成感が違いました。目標を一つクリアしたので思い入れがありました。
和田 輪 今までのワンマンライブの中では、一番ライブが終わった時の成し遂げた感がありました。HIROMI先生が演出についてくれたりして、精神的に余裕を持って挑めたというのもありました。いつものワンマンライブだと終わった後に後悔することが浮かんだりするんですけど、今回はそれがあまりなかったんです。自分達ができることができたという感触がありました。
井上 唯 今までのワンマンライブだったらギリギリのリハーサルの時までけっこうバタバタしてたりすることが多かった印象だったんです。でも今回は今までに比べたらリハーサルの時間がとれたり、詰めてできたりして心の準備もできたし、ソールドアウトしていたというのも心の余裕があった要因だったと思います。準備期間があったことで出し切れたという充実感がありました。
――みなさま好感触だったという点が一致していますね。「Solitude HOTEL ∞F」の公演からしばらくして自粛期間という特殊な時期に入りましたが、どのように過ごしていましたか。
コショージメグミ 基本、休みの日は友達と遊ぶタイプなんですけど、それができなかったので夜中とかにグループ通話をしながら走ったりしていました。LINEなどでみんなと繋いで走ってそれぞれの場所で「スカイツリーだ!」「雨降ってきた!」とか話しながら(笑)。けっこう楽しかったです。
――斬新ですね(笑)。和田さんは?
和田 輪 アコースティックギターの練習をしていました。まだあまり弾けないので、スピッツさんの曲のコードを弾いたりして。スピッツさんはお母さんとお父さんがよく聴いていて、私が子供の頃からよく聴いていて馴染みがあるんです。「空も飛べるはず」とか。
井上 唯 私は新たに始めたということは特にないんですけど、映画を観たりして過ごしていました。『氷菓』とかを観ていました。
矢川 葵 私はゲームの『あつまれ どうぶつの森』とかをやって過ごしていました。この自粛期間にプレイするにはぴったりの時に発売されたのでずっとやっていました!
私達が歌うから意味がある曲
――キャリア5年の集大成となるベストアルバム『Fiction』が完成していかがですか。
コショージメグミ 新作を出すイメージに近いんです。いつもシングルを出す時は、だいたい2曲歌があって1曲ポエトリーとかなんですけど、今回は1曲新曲があってポエトリーも入っているから、シングルにいっぱい曲が入っているみたいなイメージというのもあります。今回のベストアルバムを機にブクガを初めて聴いてくれる方が増えたらいいなと思います。ベストでわかりやすいとも思うので。
――本作では新曲「Fiction」、ポエトリー「non Fiction」、そしてマッシュアップ曲「river」がありますね。「river」はどういったアプローチのトラックでしょうか。
和田 輪 「river」は、「karma」という曲のトラックとメロディに「cloudy irony」の歌詞と振り付けを当てはめたパフォーマンスをライブでやって、その時は収録する予定は特になかったんですけど、今回こういう形になりました。
――トラック名の末尾にアンダーバーがついている楽曲がいくつかありますが、これらにはどのような意図があるのでしょう。
コショージメグミ オリジナルと違う、録り直したものです。「言選り_」は、『yume』というアルバムに入れた時にアンダーバーがついてそのままで、「rooms__」はその時もアンダーバーがついていて、今回もまたついたのでアンダーバーが二つになっているんです。
――リレコーディングした楽曲にアンダーバーが付いている?
コショージメグミ リレコーディングしたり、オリジナルから変わったりしているものです。
――サクライケンタさんからリレコーディングでどのようなディレクションがありましたか。
井上 唯 リレコーディングした3曲を録ったのが4、5年前なので、その時にはできなかった歌い方が今できるようになっているのをふまえたディレクションをしてくれました。歌割りが凄く変わった曲もありますし、新曲みたいな感じです。
――新曲「Fiction」についてですが、Maison book girlの楽曲は変拍子が多いという印象があるなかで聴くと、4拍子の楽曲なので比較的珍しいと感じました。
コショージメグミ 珍しいですね…最初にもらったデモはサクライさんの声で入っているんですけど、いつもそこまでは思わないけど「これはブクガが歌ってきていない曲だな」と感じました。前作のアルバム『海と宇宙の子供たち』はこういう方向性を意識していて、その後に出した新曲という意味ではわりと自然な流れではあるんです。でも、それまでのブクガの過程を考えると、ブクガではない人のデモを聴いているような感覚もありました。
――矢川さんは「Fiction」を最初に聴いた時どう思いましたか。
矢川 葵 しみじみと「いい曲だな」とスッと入ってきました。聴いていて心地よいメロディもあって泣けました。
――確かにメロディも音色も心地よい雰囲気の楽曲ですよね。和田さんは?
和田 輪 今までのブクガにもこういう要素はあったんですけど、こういう風に表題曲ばかり集めると出てこないというか。最初の頃にはなかった感じではあるんですけど、4人の歌声が立つ要素が凄く詰まった曲だと思いました。
――歌がより映えている曲という印象が確かにありました。井上さんはどう思いましたか。
井上 唯 『海と宇宙の子供たち』の曲のデモをもらった時から、わりとブクガではない人が歌っている想像がつくくらいに思っていたんですけど、私達が歌うから意味がある曲になったと思っていました。「Fiction」もそういう風に思うということは、メジャーというかポップに聴こえているのかなと思いました。
――「non Fiction」にはどのような思いが込められている?
コショージメグミ サクライさんが「Fiction」を作る時に私も「non Fiction」を作っていたので、「どういう感じにしますか?」というのは話し合ったりしました。私のポエトリーとサクライさんの曲を1曲にするという案もあったんです。でも結局「やっぱり分けましょう」となって作ったのでわりとテーマは似ていると思います。
――レコーディング面についてですが、スムーズに進行しましたか。
矢川 葵 私はスムーズじゃなかったです。「Fiction」は何かが心にくる曲で、私は泣きそうになっちゃって上手に歌えなくなって一旦録るのを後回しにしてもらったくらい胸がギュッとなって歌えなくなって苦労しました。
コショージメグミ 私は「Fiction」はいい感じにスムーズだったんですけど、何かの録り直しの時に逃亡しました。
――なぜ逃亡を…。
コショージメグミ わかんないんです(笑)。たぶんちょっと一回時間を置こうと思って!
――和田さんがレコーディングで印象的だったことは?
和田 輪 わりとスムーズで、録り終わった後にみんなの声を合わせたものを聴いて「みんな歌えるようになったね!」ってしみじみしたのを凄く覚えています(笑)。昔の曲だと歌い方が変わったとか、はっきりわかるんです。
――Maison book girlの楽曲は変拍子が多くあり、歌うのが難しいと思われるのですが、慣れてくるものなのでしょうか。
和田 輪 そうですね。レコーディングする時ってたいていライブで披露する前に、前日とかに聴いた曲を歌うので難しい曲はわりと必死だったりするんですけど、再録だとライブで歌ったり踊ったりを何回も繰り返しているからというのもあったりします。
――再録も含め、井上さんはレコーディングはいかがでしたか。
井上 唯 リレコーディングした曲はライブで歌い込んでいるというのもあって、レコーディングした後に前のものと聴き比べると本当にガラッと変わっていて面白かったです。昔は声質も今と違うので、表現も淡々としていて、それが良さでもあったんですけど、今歌うとできることの引き出しが増えて深みが増したと思います。
自分達のパフォーマンスに自信を持てるようになった
――現在はライブをおこなうのが難しい状況ではありますが、何か新たなスタイルでの公演などは視野にあるのでしょうか。
コショージメグミ 生配信ライブはやってみたいねという感じがあります。
――まだ具体的には決まっていない?
コショージメグミ 決まってないですね。でも、どんどんやっていくというよりは、一回やって様子を見ていい感じだったらまた次も、という感じになると思うので一つずつ頑張って行きます。
――生配信に特化した、やってみたい公演スタイルはある?
矢川 葵 前回アルバムの特典でスタジオライブというのをして、背景の演出や撮り方も凄くこだわってやって頂いて、私達もその場で歌って踊ってというDVDを作ったんです。VJを入れたりカメラをずっと長回しにしてもらったり、上から撮ったりとか、色々試してもらったりして凄く面白かったんです。ライブだと一つのステージでお客さんが観ているというのしかないけど、配信だと色々な角度に切り替えられたりと、そういうのも試してみたいなと思っています。それと同じようなことを配信でもできたら面白いのかなって思っています。
――色んなカメラワークや画面分割など、ライブではできない配信ならではの見せ方もありますよね。楽しみです。さて、5年間の活動の中で最も成長を感じた部分は?
コショージメグミ 5年やっていたら歌唱力やパフォーマンスはよくなってくると思うんです。そういうところを除くと、ライブとかでのお客さんとの関係性が変わったと思います。ライブのやり方も変わったし、そのぶん見方も変わったと思います。最初の時は着席でライブをするとかお客さんが黙ってライブを見るというようなスタイルは全く想像していなかったので、そう思うとこの5年でホールで着席のライブをするというのは考えていなかったので変わったなと思います。最初はほぼ全曲くらいコールとかもあったので。
和田 輪 私は自分達のパフォーマンスに自信を持てるようになったと思います。パフォーマンス自体に関しては性格上ずっと満足いかないというか、もっといけるんじゃないかと思い続けてはいるんですけど、5年やってきて自信が持てるようになったのは、「このライブ凄くよかった」と言ってくれる人がたくさんいるからこそなのかな、と思います。
井上 唯 最初にブクガを始める時は、正直ブクガについての理解が全然追いついてなかったんですけど、5年やっていくにつれてどんどんブクガに対しての理解が深まりました。どんどん洗練されていった結果が今なので、ブクガがブクガを作ってこれて出来上がった、どんどん固まっていったというのがこの5年の期間だと思います。
矢川 葵 私は成長かはわからないんですけど、顔つきが変わったなと思います。今回のアナザージャケットで過去の衣装を着たりしたんですけど、初期の頃に着ていた自分の写真を見ると顔が子供っぽかったり、衣装に着られている感があったりしたんですけど、今改めて過去の衣装を着たら今の方がしっくりくるというか、ブクガの衣装に馴染むようになった気がしました。
――最後に、今後の展望についてお伺いします。
コショージメグミ さっきのライブの話になるんですけど、逆に今って手軽に生配信ライブなどが観られる時期だと思うんです。会場に行かなくても観られるし、例えば「このライブ凄く面白かったよ!」ってなると「じゃあ観てみようかな」という人が出てくる感じになるんじゃないかなと思って。こういう時期がいつまで続くかはわからないですけど、今は生配信とかでいつものワンマンでやっているくらい面白いものを作って、それで今までブクガを知らなかった人まで届けられたら、またライブができるようになった時にその人達もライブに来て頂けるんじゃないかなと思っています。
(おわり)









Kitri「誰かの心を癒したい」いま2人が考える音楽の在り方
斎藤アリーナ「新たな自分を見せられたら」自粛期間で生まれた新境地
THE BEAT GARDEN、音楽を軸に繋がる方法を模索 自粛期間経て見えた“光”
CUBERS「僕らは常に動いていたい」“今”を乗り越えるための心構え
Maison book girl「参考にするアーティストはいない」独特の存在感に迫る
Maison book girl、悲しみの物語の果てに見えた希望 全国ツアーファイナル
ポップしなないで「共通項を見つけてもらえたら嬉しい」個性あふれる4組で魅せた渋谷の夜
Maison book girl、ライブを繋ぐセトリで繰り返す夢のようなステージ
Maison book girl、夢と現実の交錯したステージで見せた新たなる魅力