BOXER KID「人生を費やせるほどの音楽」レゲエへの想い詰まった新譜に迫る
INTERVIEW

BOXER KID「人生を費やせるほどの音楽」レゲエへの想い詰まった新譜に迫る


記者:編集部

撮影:

掲載:20年04月24日

読了時間:約9分

 大阪を拠点に活動する5人組レゲエ・クルーMIGHTY JAM ROCKのDee Jay・BOXER KIDが4月29日、2nd ALBUM『THE PARTY』をリリースする。『THE PARTY』はBOXER KIDのレゲエへの想いが詰まった全11曲を収録。20年超のキャリアを経て辿り着いた境地がこのアルバムには詰まっている。インタビューでは「常にともにあるべきホーム」だと話すMIGHTY JAM ROCKについてや、7年ぶりに自身のレーベルNAKAMARU RECORDSからソロ作品をリリースする意図、『THE PARTY』の制作背景に迫った。

MIGHTY JAM ROCKは常にともにあるべきホーム

――今回の作品の話に入る前に、改めて所属されているMIGHTY JAM ROCKというクルーについて教えていただけますか?

 MC&セレクターにしてプロモーターも務めるKYARAとROCK、自分と同じくDee Jay(歌い手)であるJUMBO MAATCHとTAKAFINに自分も加えた5人で、20年近く大阪を中心にダンスホール・レゲエ・スタイルを追求し続けるラバダブ・セット(サウンド&歌い手集団)になります。2001年に1st作を発表して以降、昨年2019年まで年1作のペースで毎年リリースを重ねて、現在19枚のオリジナル・アルバムを作り上げており、今年も20枚目を制作予定です。

――ご自身にとってMIGHTY JAM ROCKはどのような存在なのでしょうか?

 メンバーは家族以上に時間をすごした戦友であると同時に、尊敬できる先輩たちであり良きライバルでもある。ひと言で言えば、常にともにあるべきホームだと思います。

――そんなつながりの強いグループに属しながら、今回ソロ・アルバムを制作した経緯はどのようなところにあったのでしょうか?

 まず大前提として、先ほどもご紹介した通りMIGHTY JAM ROCKには僕も含めて3人のDee Jayがいるんですが、当初より「3人の歌い手それぞれがソロで魅せられてなんぼ」というスタンスを持っています。そんな3人がしのぎを削る形で成立させていくのが、MIGHTY JAM ROCKによるオリジナル・アルバムのスタイル。それだけに、それぞれが常に独自の動きも欠かしません。僕自身も自ら主宰するNAKAMARU RECORDSというレーベルを2013年に起ち上げており、そこで前作となる『BOXER KID MIX TAPE BY AKIO BEATS』をユニバーサルミュージックからリリースしていて、その延長線上に今作もあるんだと思います。

――今作の背景には音楽に対するそういう姿勢があるんですね。では、7年ぶりにご自身のレーベルからソロ作品をリリースする意図はどこにあるのでしょうか?

 昨年、改めて自分の人生や音楽への気持ちと向き合う機会があって、今回のプロデューサーであるAKIO BEATSとスタジオに入る形で制作をスタートさせました。これまで約20年近く音楽をやれてきた事実と合わせて、これから先を見つめ直した時、いつエンディングを迎えるかわからないなと感じたんです。だからこそ、できる内にやりたいことをやり切っておこうと思ったんです。

収録曲に迫る

――聴かせていただいた音源からはもちろん、強い想いの元に作られた作品だということが、今の言葉からも伝わってきます。ここで、収録された楽曲についても順番におうかがいさせてください。まず幕開けを飾る1曲目「INTRO ~曲目~」は、イントロとは思えぬほど現場感満点ですね?

 このアルバム『THE PARTY』の案内状的な意味合いを持たせたくて1番最後に作ったんですが、収録曲のタイトルをぜんぶ入れて映画の予告編的な作りになっていると思います。

――今作の表題にもなっている2曲目の「THE PARTY」については?

 昨年の夏からHEYZ CAFEというバーで月イチ開催している『THE PARTY』に由来しているんですが、このイベントに行ってみたくなるように作っていった曲です。気だるさを感じる聴き心地を意識して、あまりマジメに歌いすぎないようにヴァースをすべて同じフロウにしたのもポイント。さらに、レゲエ・シンガーのDORAにコーラスを入れてもらったことでパーティ感が増したと思います。

――アルバムに先駆けて2月12日に配信された「名称未設定」は、どこか現代の闇をあぶり出すような曲調ですね?

 何気ないタイミングで友人の1人にあるサイトを見せられて、こんな現状を歌にしてくれと頼まれて書き始めました。テーマがテーマなので表現が偏らないように、ストロングなビートでハードに乗せることを心がけました。

――ある意味、今作の肝のひとつとも感じる「NEW ERA」についても聞かせてください。

 ビートの制作中にプロデューサーのAKIO BEATSが、<NEW ERA>というテーマを出してくれたことから内容を広げていきました。

――リスナーとしても本当に印象的な曲だと感じましたが、ご自身でポイントとなった歌詞を挙げるとしたら?

 思い入れのある曲でもあるので1フレーズだけを挙げるのはなかなか難しいですが(笑)、あえて言えば<思いを築くと心に響く>という部分でしょうか。

――おっしゃる通り、確かに胸に響きました。続いては、5曲目の「JOY FOR ALL」。

 最近趣味で画を描くようになったのをきっかけに作っていった曲で、人生をキャンバスに例えて好きなように描いて好きな色を塗ろうとメッセージしました。先ほどの質問にもありましたが、この曲で言えばポイントとなるフレーズは<求めるな与えよ>ですかね。その真意を感じながら聴いていただけたらと思います。

――<毎日誰かの誕生日>との歌詞も印象的な「YEH YEH YEH」は、中盤で気分を上げてくれる曲ですね?

 はい。聴いていて、ただただ楽しくなるような1曲が欲しくてソカのビートをAKIO BEATSにリクエストしました。

――レコーディングの際に意識したことや新たな挑戦になったことがあれば教えてください。

 BPMがかなり早めなので、フロウで緩急をつけることや、サビを4小節にして展開がクイックになるようにした部分だと思います。

――後半戦へ向かう「I NEED YOU」についても解説をお願いします。

 実はこの曲が今作で1番最初にできた曲で、BOXER KIDとして今までにないイメージのものを目指して作り始めました。そういう意味で新たな挑戦をした1曲であり、言葉の強弱を意識して、できるだけ艶っぽくなるように考えて歌っていますね。

――8曲目の「STAND ALONE」は、アルバム発売直前の3月に配信された1曲になります。

 先日『COMBAT』というDee Jayクラッシュ(HIP HOPでいうフリースタイル・バトル的なイベント)があったんですが、その出場が決まってから闘いに挑む者の自問自答を描こうと作っていきました。感情を優先したかったのでレコーディングは一発録り、MVも臨場感を感じて欲しくてライヴ映像を使っています。

――続く「I WANNA …」は、どのような想いで制作していったのでしょうか?

 昨年の夏、鳥取へライヴに行った時に友人とその家族も一緒だったんですが、その5歳の子供の初恋を目の当たりにしてテーマが湧いてきたんです。内容はあくまでフィクションですが、技術的な面ではなく、切ない雰囲気が出るように納得するまで何度もサビを歌い直したのは、今作の忘れられないエピソードのひとつです。

――そして、今作を締めくくる曲が「WHOLE WORLD」。クライマックスにふさわしい沁みる曲ですね?

 お恥ずかしながらこの歳になって少し気になるようになって、この世界の成り立ちやメカニズム、未来といったものをテーマにしています。浅知恵ではありますが、自分なりに調べて感じたことを歌にしました。

――個人的な感想で恐縮ですが、<俺たちはここにいるって事だ>という一節にグッときました。

 自分自身としても気持ちを込めた部分なので、そうおっしゃっていただけたら本当に嬉しいです。これまで様々なかけがえのないつながりを得られてきたからこそ、今の自分がある。僕らの生きている人生は儚いものかもしれないけれど、存在している魂はリアルだと信じたい。とは言え、まだ真に理解しきれていないとも思うので、時間をかけて自分が存在することの意味というか、その神髄に辿り着けたらと思っています」

新しいことを考えながらトライを続けていきたい

「THE PARTY」ジャケ写

――ここまで収録曲を振り返っていただきましたが、今作で表現できたBOXER KIDの世界観というのはどのようなものだと思いますか?

 質問の答えになっているかやや不確かではありますが、レゲエへの想いだと思います。多くの人にとってレゲエは特殊な音楽かもしれませんが、今作の制作を通してやはり自分にとって人生を費やせるほどの音楽だとの気づきを得た。そして、生ある内は歌えなくなるまで歌おうとの覚悟を新たにしました。すべては気持ち次第であり、行動すれば何かが変わっていくということ。改めて今、いつまでもワクワクして新しいことを考えながらトライを続けていきたいと思っています。そうして生み出す自分の音楽が聴いた人のきっかけのひとつになれば幸いです。

――このリリースを経て、2020年はBOXER KIDとしてどんな動きを見せられそうですか? 意気込みを聞かせてください。

 主宰レーベルNAKAMARU RECORDSも改めて動き出せたので、いろいろチャレンジをしたいと思っています。先ほども少しお話しした最近描いている画もキャンバスに落とし込んで発表したいのと、Tシャツなどアパレル面での動きも考えています。その他、毎週OA中のラジオやHEYZ CAFEでのイベント『THE PARTY』もぜひチェックしてみて欲しいです。

――MIGHTY JAM ROCKとしての今後の予定も教えてください。

 今年クルーとしてのアルバムが20枚目を迎えるにあたり特別なことを考えているので、来年に計画中のツアーも含めてぜひ期待していてください。

――改めておうかがいします。ソロ2枚目となる今作を受け取ったみなさんにどのように聴いて欲しいですか?

 作った側から言わせてもらうと、完成した時点で100点なんです。この後は聴いたみなさんそれぞれで少しでも何かを感じてもらえたらと思います。また、昨今の新型ウイルスの影響でライヴはもとより外出を控えている人も多いと思います。こんな時こそ、作品に触れて音楽の力を再確認してみるのはいかがでしょうか。その上で、この騒動が収束に向かって世の中が落ち着いた際には、ぜひダンス(ライヴやイベント)の現場にも足を運んでもらって、とにかく好きなように楽しんで欲しいです。時間は絶対に戻ってこないので、後悔のないように充実した毎日をすごしてください。

――最後に、今作を手にしたリスナーの方々にメッセージをお願いいたします。

 自分の気持ち次第で景色も行動も周りも、すべての世界が変わると思います。だからこそ、グッド・ヴァイブスでいきましょう!

(おわり)

▽BOXER KIDプロフィール

 BOXER KID PROFILE/大阪を拠点に活動する5人組レゲエ・クルーMIGHTY JAM ROCKのDee Jay(HIP HOPで言うラッパーやMCに相当する歌い手)。他のメンバーに同じくDee Jay のJUMBO MAATCH、TAKAFINとMC&セレクター兼プロモーターのKYARA&ROCKがいる。伝説のTOKIWA CREWの発展的解消後、同僚であった前述の4人とともにMIGHTY JAM ROCKを結成、サウンド・システムDANCEHALL MECHA-DOGを擁して日本有数の夏フェス『HIGHEST MOUNTAIN』などを主催してきた。グループとしてのオリジナル・アルバムは、2019年まで19年連続で発表しており今なお継続中である。ソロとしても17歳でマイクを握って以降、ハードコア・メッセンジャーの異名のもと活動。2013年、主宰レーベルNAKAMARU RECORDSの設立と同時に初のソロ作品『BOXER KID MIXTAPE BY AKIO BEATS』(ユニバーサルミュージック)をリリース、7年ぶりとなる2020年4月自身名義のアルバム『THE PARTY / BOXER KID』を完成させた。

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