ももすももす「目標はももすももす展」理想像への過程となる『彗星吟遊』
INTERVIEW

ももすももす「目標はももすももす展」理想像への過程となる『彗星吟遊』


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年03月05日

読了時間:約11分

音楽は目に見えない刺繍

『彗星吟遊』初回盤

――「saboten」なのですが、なぜタイトルをローマ字表記に?

 Tシャツに描かれたサボテンって、チープなイメージが私の中にあるんです。そのチープさを文字で表現したくて、ローマ字にしたらチープに見えるかなと思いました。サボテンは英語だとカクタスというんですけど、それはちょっと違うなと思いました。なぜサボテンをテーマにしたかのかは、私にもわからないんですけど(笑)。

――自然と降りてきたテーマなんですね。この曲はサイレンの音が入っていて、細かいところも面白いです。

 あれは自分の声でやってみました! 合唱と同じくこれもすごく大変で(笑)。

――人力で色々やっているんですね。ちなみに他の曲では、アレンジ面でこだわったところは?

 「桜の刺繍」のコーラスは桜が散る情景をイメージしていたり、「うさぎの耳」はデモの時とはキーも変えて取り直していたり、「ハネムーン」でバグパイプを生で入れたところなどこだわりました。

――バグパイプが生というのは、新鮮ですね。

 最初はシンセの音でバグパイプを入れていたんですけど、何か物足りないなと思って悩んでいたんです。プロデューサーから生で入れてみたらと言っていただけて。最初私は日本にバグパイプ奏者っているのかな? と疑問だったんですけど、いらっしゃいました(笑)。今年の一番最初のレコーディングがバグパイプで、演奏してくださったのが十亀(正司)さんという方なんですけど、デモと同じフレーズを吹いてもらおうと思ったら、バグパイプでは吹けない、構造上無理な音階だったみたいで…。急遽アドリブで吹いていただきました。

――その「ハネムーン」は日本だと新婚旅行で使う言葉ですけど、ももすさんの中ではどのようなイメージでつけられたんですか。

 けっこう前に付けたので、なんでこのタイトルにしたのかは自分でも謎なんですけど、サビが出来た瞬間にハネムーンにしようと思ったのは覚えています。ハネムーンは英語だとHoney Moonと書くんですけど、その綴りが好きというのも関係していると思うんです。

――さて、「隕石」はMVも撮影されていますが、ももすさんのセーラー服姿が見れますね。

 制服が良いんじゃないかという強烈な意見が出まして(笑)。バケツを振り回したり撮影はすごく楽しかったです。そのバケツは編集の関係で回す方向が決められていたんですけど、やっていくうちに右手と左手がどっちに回すのかわからなくなってきて。

――大変だったんですね。撮影も屋外と屋内なので移動もあって大変だったんじゃないですか。

 そんなに大変ではなかったんです。なぜかと言うと「アネクドット」と「プルシアンブルー」と「シクラメン」のMVは移動はなかったんですけど1日で3本撮ったので、それと比べると「隕石」はそうでもなかったんです。「アネクドット」の撮影ですごく成長出来たんです。

――もっと過酷な時があったんですね。「隕石」の歌詞はドラスティックかつロマンチックですね。

 ありがとうございます。この曲は好きという感情と同じくらい、嫌いという感情も孕んでいます。目に見えない感情もいっぱいあるので。この歌詞は私の本心かも知れないし、全部ウソかも知れないけど、この歌詞を書くことに意味があると思いました。おそらくこの歌詞に出てくる主観の人は本当に隕石が落ちてきたら、好きだと言っている人のことは助けないんじゃないかなと。なので、好きと嫌いは紙一重なんじゃないかなと思うんです。

――「隕石」で歌い方とかこだわったところは?

 語尾のニュアンス、ポルタメント(※滑らかに徐々に音程を変えながら移る技法)してみたりすごくこだわりました。この主観の人に対して、好きだった人は隕石みたいな存在だったんだろうなと思うんです。自分に向かって落ちてきたら自分が死んでしまう感じも、歌で表現したかったんです。

――深いですね。さて、「うさぎの耳」という曲もありますが、うさぎはどうのような象徴で登場しているんですか。

 うさぎはすごく耳が良いので、遠くまで聞こえる、そういった意味で登場させています。でも私、子どもの頃からうさぎはアレルギーで触れないんです...。

――そうだったんですね...。でも、うさぎの耳は憧れますね。

 はい! うさぎの耳に関する豆知識なんですけど、人間も耳をつぼめるとより集音するので聞こえが良くなるんです。

――確かに聞こえが良くなりますね! さて、ももすさんにとって音楽とはどのような存在ですか。アルバムが完成して、音楽への価値観が変わった部分があるんじゃないかなと思いまして。

 目に見えない刺繍だと思って私は音楽を作っています。目には見えないけど、それは確かに存在しているものはこの世に沢山あって、世の中は目に見えることで語られがちだと思っていて、実は目に見えないものの方がこの世は多くて、その一つが音楽なんです。

――すごく精神面を支えてくれる存在でもあると思うんですけど、ももすさんは音楽に助けられたことはありますか。

 あると思います。音楽を作ることによって今の自分があるし、色んな音楽を聴いて心を癒やされたり、価値観が少しだけ広がったりするので、自然と助けられているのかなと思います。昨日もエディット・ピアフ(仏・シャンソン歌手)を聴いていたら、すごくよく眠れました。ジャン・コクトーがエディット・ピアフが亡くなったことに衝撃を受けて、その日に心臓発作で自身も亡くなってしまったというエピソードがあるんですけど、それを思い出しながらエディット・ピアフを聴いて、猫とおしゃべりをする夢を見ながら寝れて最高です!

(おわり)

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