新型コロナでコンサート自粛、音楽市場の“悲痛”
コンサートのイメージ
RADWIMPSの野田洋次郎が悲痛な思いを呟いた。
「自然災害等と違ってウィルスは興業の保険適用外となる。ドーム4カ所を含む今回のツアー、全部中止にした場合ウチのような個人事務所が生き残る可能性はどのくらいあるんだろうかと考える。安全、安心、リスク。あれこれ頭に巡らせながら毎日リハをしています」
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、政府は今後2週間の大規模イベントの中止、延期を要請した。それよりも前に、自身もアイドルグループをプロデュースする指原莉乃はテレビ番組で、コンサート中止に踏み切れない主催者側の思いをくんだ。
「保険が下りないのでコンサートは大損害。天候、雷や嵐は(契約書のなかに)入っているので損害がないんですけど…」
コンサートは規模や形態などによっても異なるが、単独公演の場合は音楽、芸能事務所が主催、協賛を得るケースが多い。最近はレコード会社も主催者側に加わることもあるが、概ねは事務所だ。そして、音楽業界の場合はバンド自身が個人事務所を立ち上げているケースもある。
5千人以上収容する大規模会場ともなれば売上は相当なものだろうと思いがちだが、1回の公演だけでは利益は生まれず、複数回開いて“トントン”と関係者から聞いたことがある。
なぜ費用がかさむのか。それは会場費だけでなく、舞台セットや、楽器、サポートミュージシャン、音響や設営スタッフの人件費などがあるからだ。収益を出せるのはグッズや放映権、のちの映像作品化と聞く。
中止となれば、これらをキャンセルしなければならないが「やらないので費用はお支払いしません」というわけにはいかない。満額あるいは何割かを支払うことになる。保険が下りなければそれらを興行主、この場合は事務所が負わなければならない。
音楽業界全体的に最盛期と比べてCDの売上枚数は減少傾向。“サブスク”など配信で多く再生されても1回あたりに支払われる額はスズメの涙ほど。収益の頼みの綱であるグッズ販売も、コンサート中止でその機会を失う。かなり手痛い。
コンサート自粛だけの問題ではない。4月以降すでに会場を押さえ開催の準備も進めているものの、このタイミングで「開催決定」と発表することができずに、販促活動もままならないという音楽関係者の話しもある。
浮き彫りになるのは、音楽市場の厳しい現実だ。感染拡大防止策としての理解はあるが、ただ延期・中止要請だけではなく、支援策も求められる。それは音楽業界に限ったことではない。【木村武雄】

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