真田ナオキ「一番伝えたいのは歌の中に」ハスキーボイスを武器に全国の横丁へ
INTERVIEW

真田ナオキ(撮影=平吉賢治)

「一番伝えたいのは歌の中に」ハスキーボイスを武器に全国の横丁へ


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年02月21日

読了時間:約15分

横丁での流しは一つの武器、そして使命

真田ナオキ

――この楽曲の地でもある恵比寿横丁で流しをしていたと聞きましたが。

 ラジオ番組の企画で流しをやらせて頂いて、偶然今回「恵比寿」という楽曲を頂いたんです。歌詞の中にも<恵比寿横丁>と出てくるので、この流しは継続しようということになりました。横丁大使に就かせて頂いたので、全国にある横丁で流しをやってキャンペーンをしていきたいと思っています。

――横丁にご縁があったのでしょうか。

 それもお酒に繋がるんです。全然飲めないのに。そこも勉強していこうかと(笑)。

――横丁は色んな街にあるから馴染み深いですよね。有楽町の横丁でもやられたそうですね。

 恵比寿横丁以外では初めての流しだったんです。それぞれの土地でお客さまの年齢層が異なるので、また違う新たな出会いと楽しみがあって本当に面白かったです。

――流しはどういった様子でしょうか。

 リクエスト用紙を用意させて頂いて、そこにある約50曲のメニューのなかから決めて頂きます。お客さまが歌う場合もあるんです。僕はまだギターを始めたばかりでまだ拙いので、パリなかやまさんに伴奏を一緒にやって頂くというかたちです。

――横丁での流しに対してのやりがいについてはいかがでしょう。

真田ナオキ

 演歌歌手として全国を歩かせて頂いて、お客さまはご年齢層が高い方が多いんですけど、横丁で若い方々とお話しをさせて頂いても師匠の吉幾三先生の「雪国」だったり、石川さゆりさんの「天城越え」や「津軽海峡・冬景色」のリクエストを頂いたりしたので、やっぱり演歌を聴きたいというのがあるんだなと思いました。

 僕らの同年代でも今は演歌を聴かないけど興味はあるという方がたくさんいらっしゃると感じました。演歌を伝えていく担い手として、これから先もっともっと、流しはそういう方々に伝えていく一つの武器になったらいいなと思います。普段はライブやコンサートに行かない方でも横丁で演歌に親しんで頂いて、そこから「コンサートに行ってみようかな」というきっかけになってくれたら嬉しいです。色んなやりがいを感じています。

――そこに使命感も感じたりする?

 僕らの年代の歌い手みんなが思っていることだと思うんですけど、先輩方が残されてきた演歌というものを大切に歌い継いで、また下の年代に伝えていくというのは自分達の使命だと思います。その一つのコンテンツとしてこれからも流しをやっていきたいです。

――ご師匠の吉幾三さんとの出会いについてお伺いします。

 5、6年前に出会って、第一印象は「芸能人だ!」という感じでした(笑)。

――今作は全て吉幾三さん作詞作曲ですが、何かディレクションはありましたか。

吉幾三と真田ナオキ

 うちの師匠は歌に対してはあまり言わない方です。全体感で言うと自由に歌わせて頂いています。それぞれの歌い回しがあるし、今は下手でもそれが味になっていくものだからうるさくは言わないというスタンスなんです。僕は器用なほうではないので、「こういう風に歌ったらいいんじゃない?」と言われても全然できない部分もあったりするんです。自由に歌わせて頂いて、どうしてもここだけはという部分は何箇所か師匠に言われたりというのはありました。

――お酒を飲まないのに、ほろ酔いのような歌に聴こえるんです。それは自分でイメージしたのでしょうか。

 「恵比寿」はステージでファンの方々がいる空間に酔っているイメージで歌いました。曲によって変わるんですけど、僕はどちらかというと没頭しちゃうタイプなんです。今作は3曲とも全く違うジャンルの曲だったので、「昔に…誘われて」は自分が本当に電車に乗っているイメージで、電車に揺られながら懐かしい雰囲気を涙ながらではなく、悲しい気持ちは心の奥底にあるけど笑っていかなきゃ、前を向かなきゃというイメージです。「我が身恨んで」は、自分がやんちゃ坊主で、17歳で街を追われて、惚れた女と出会って、でも後悔、後悔、これからは自分を戒めて、みんなに苦労をかけたぶん進んで行くぞという気持ちに没頭しながら歌わせて頂きました。

――“演じる”という面で、演歌というものに対して自分でドラマを作って主人公になるような歌い手、という部分もありそうですね。

 そうですね。「我が身恨んで」が特にそうなんですけど、リズムやテンポが譜面と違ったりするんですけど、入り込み過ぎちゃうんです。だからこの歌も自由に歌わせて頂きました。

――心情面などでは吉幾三さんからどのようなことを言われますか。

 一番は人間性を言われます。「演歌というのは心を歌う歌」ということに凄く重きを置いているジャンルなので、心を大切にして、歌手である前に人間ということを忘れずに、色んな方への感謝をと。現場に出たら犬でも猫でも頭を下げる気持ちでいつまでも初心を忘れずに頑張りなさいと常に言われます。師匠自身も、いまだにそういうところがたくさんあって本当に尊敬できる人柄の人間です。自分自身もそうでありたいです。歌手である前に人間、これからも心を歌うつもりで演歌を歌いたいです。

――素敵な信念ですね

 僕の曲を師匠が歌ってくださる時、歌い回しなどが全然違っても心に伝わってくるんです。師匠が言っているのはそういうことなんだなと。そこを弟子として受け継いでいきたいなと思います。

――やはり人間性というのは歌に直結するものでしょうか。

 特に演歌は義理人情を大切にする歌が凄く多いので、心は忘れずに、一番伝えたいのは歌の中にある本質のところで。映画みたいに歌を伝えられる歌手になりたいです。

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