tricot「力が抜けた自然体」新たなステージで真摯に向き合えた音楽の多様性
INTERVIEW

tricot「力が抜けた自然体」新たなステージで真摯に向き合えた音楽の多様性


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年01月25日

読了時間:約14分

ライブで完成させるアルバム

『真っ黒』ジャケ写

――本作でこだわった点は?

吉田雄介 全曲を通して「いまのドラムの音」にならないようにしました。オールドロックやファンク、60’sから80’sくらいまでの、なにかしら往年のレジェンドたちのモデルがいて、コンセプトとしては「いまの音にならないけど、いまの音楽をやる」です。ドラムのサウンド自体はちょっと古めなことが多いです。

――なぜ現代的なドラムサウンドを避けたのでしょうか。

吉田雄介 音の嗜好性が、みんなが同じ音に収束し始めているので。それは面白くないし、その音で変拍子とかやっちゃうと、“そういうジャンル”になっちゃうというか。あえて違うジャンルをきちんととぶつけたという感じです。変拍子をやっていても違うジャンル感が強めの音でやってみるというチャレンジでした。

――ベース面でのこだわりは?

ヒロミ・ヒロヒロ フレーズはセッション的な作りかたなんですけど「手癖から離れよう」という意識でやりました。パッと出たフレーズを、「普段ならこういくけど今回は…」という感じで。手癖が自分やtricotらしさという面もあるんですけど、自分的にもそればかりだとつまらなくなったりするし、もっと曲が広がればという思いもあるので、そういう部分に気をつけるようになりました。

――今作では、あえて手癖から離れた部分があると。

ヒロミ・ヒロヒロ 昔はLow系メインでガシガシいくのが多かったんですけど、高い音をいかに美味しく入れられるとか、自分のなかでグッとくるポイントがいくつかあるんです。それを入れるだけでも聴こえかたが全然違うので、そこも意識しました。

――ギター面では?

キダ モティフォ ギター単体では変わらず作っているんですけど、全体だと最近はライブと音源を切り離して考えるようになってきています。いままではライブでやる音をそのまま録る、というイメージで作っていたんですけど、ライブでは違うアレンジになってもいいかなと思いました。最後まで完成しきらない形で出して、ライブで完成させるというようになってきています。

――歌唱面でのこだわりは?

中嶋イッキュウ 曲によって人が違う感じにしたいと思いました。私が歌っているというより、曲の中の人が歌っているという気持ちです。いつもそういう人物像があってレコーディングに臨んでいるんです。そこは今作に限らずのこだわりポイントです。今作では楽曲も歌詞もメロディも、新しいことに挑戦しようというよりは、肩の力を抜いて作った曲が多いんです。メロディもパート毎に作ったりしたので全然時間がかからなかったと思います。

――メロディや歌詞に関しては、新たなスタイルなのですね。

中嶋イッキュウ そうです。音が全部出来てからもらうと、1から全部考えるところから始まるので、「どんな話にしよう」というのがあったと思うんですけど、今回はメロディと歌詞がこぼれるように出てきたんです。だから「何でこんなこと書いたのかな」とか覚えてないんです。「勝手に出てきた」というか。

――ごく自然に溢れ出てきたと。

中嶋イッキュウ 今回の歌詞とメロディは全然考えていないです。ヒロミさんや吉田さんみたいに「こうしてみよう」という新たな挑戦的なことよりも、「とにかく当ててみた」みたいな感じで出来たし、軽い気持ちで聴かせられたというのがあります。未完成の段階で一旦聴いてもらって、「ちょっとこれ微妙やな」というのが出なかったので、そのまま出来ちゃったという。ゲロを吐くように言葉とメロディがこぼれ出ました(笑)。

――演奏面ではチャレンジした部分、メロディと歌詞は自然発生と、うまくマッチしたのですね。ところで「あふれる」のMV撮影は大変だったのではないでしょうか。

ヒロミ・ヒロヒロ 海の波が強くて、倒れないように足で堪えるのに必死でした(笑)。

中嶋イッキュウ 最後に鱗を顔につけるシーンがあるんですけど、めちゃ臭かったです!

キダ モティフォ 本物の魚の鱗で。

ヒロミ・ヒロヒロ 洗ってもしばらく臭かったもんね。

吉田雄介 沖縄の青い魚の鱗なんです。現場に本物の魚があって、「これ、いつ使うのかな?」と思っていたら顔に貼るやつで。「本物使うんや!」って(笑)。

中嶋イッキュウ あと、砂浜で寝転ぶシーンがあったんですけど、次の日に耳からめちゃめちゃ砂が出てきました。

――かなり大変な撮影だったのですね…それでは最後に、ワンマンツアー「真っ黒リリースツアー『真っ白』」の意気込みをお願いします。

中嶋イッキュウ 久しぶりの全国ツアーです。2019年は『真っ黒』の制作があって、tricot史上最もライブが少なかったんですけど、ライブのブランクによって、以前より1本1本で感覚を取り戻すところからスタートしている感じがあったんです。でも、ライブが空くということ自体に慣れてきて、逆に1本を集中して丁寧にできるようになっています。それがツアーではより良く出ると思います。これまでのツアーの、がむしゃらにやっている感じよりも、1本1本良いライブができる状態になっていると思うので、全国に行くのが楽しみです。楽曲もライブでやるとだいぶ違うと思います。

(おわり)

作品情報

『真っ黒』
CD+Blu-ray
初回仕様:三方背スリーブケース
CTCR-14982/B 5500円(tax-out)

CD+DVD
CTCR-14983/B 4000円(tax-out)

CD Only
CTCR-14984 3000円(tax-out)

<収録曲>
01. 混ぜるな危険
02. 右脳左脳
03. あふれる
04. みてて
05. 秘蜜
06. 低速道路
07. 順風満帆
08. なか
09. ワンシーズン
10. 危なくなく無い街へ
11. 真っ白
12. 真っ黒
(Bonus Track)
13. ブームに乗って
14. potage

<Blu-ray>
01. 真っ白〜真っ黒(Music Video)
02. 9才ワンマン 2019.09.24 at TSUTAYA O-EAST
<DVD>
01. 真っ黒(Music Video)
02. 9才ワンマン 2019.09.24 at TSUTAYA O-EAST

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