草なぎ剛が11月27日と28日に、東京・昭和女子大学人見記念講堂で『草なぎ剛のはっぴょう会』をおこなった。27日は奥田民生(ユニコーン)と和田唱(TRICERATOPS)、28日は田島貴男(オリジナル・ラブ)と斉藤和義をゲストにオリジナル曲やそれぞれのアーティストとのコラボレーションをおこなった。28日のライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

リズムは一生かけて掴むもの

草なぎ剛(撮影=新保勇樹)

 青く染まるステージにはアコースティックギターとマイクのみ。その先は幕で覆われており、全貌はわからないなか、開演時刻になり草なぎがスカジャンにジーンズ姿でステージに登場。ギターを手にした草なぎはC、G、Cのコード進行で一礼と丁寧な幕開け。1曲目に届けられたのは、このライブのテーマ曲「はっぴょうかいのテーマ」。4つのコード(和音)進行で作ったということで、コードはシンプルながらもメロディやメッセージを明確に伝えるなか幕が落ち、総額2億円自前のジーンズやアメリカンバイクなどビンテージアイテムで埋め尽くされたステージセットとドラムとキーボードのサポートメンバーが登場。その壮観なセットに会場からも「スゴい」という声が飛んでいた。

 全てはこの曲から始まった「いま・新しい地図」で力強い歌声を響かせ、メンバー紹介を挟み、ギター愛をひしひしと感じられる一曲「僕のギター」を演奏。この時使っていたギターは1953年製のビンテージのギブソン。昔のものが好きな草なぎの趣向が強く出たギターだ。

 ギターを始めて7年、初めて覚えた曲だと話す井上陽水の「夢の中へ」をカバー。オリジナルよりもゆったりとしたリズムで、アコースティックギターにピッタリなアレンジで、そのリズムにのって会場からも手拍子。アコーディオンの音色もノスタルジックな気分にさせてくれた。

 東京に育てられたと話す草なぎは、渋谷の街を通った時にインスピレーションが沸いたという「渋谷バラッド」。目を閉じれば情景が浮かんできそうな1曲で、丁寧に歌う姿が印象的だった。続いて、ノリの良いアメリカンな雰囲気を漂わせた「twist shake」では、イントロで間違えてしまい、「チョット待って」と公開練習をおこなうという展開に会場から笑いが起こる。

 そして、「I Love Pure」では、27日では不発に終わってしまったというコール&レスポンスを、前日の経験を踏まえ歌唱前にレクチャー。その甲斐もあって無事にライブ感のあるコール&レスポンスを成功させ、草なぎも嬉しそうな表情を浮かべていた。

 この日1人目のスペシャルゲスト田島貴男をステージに。草なぎは今も週に2回は「接吻」の動画を観るほど同曲がお気に入りで、今回のライブでコラボしたいと考えていたが、「それはやめてほしい。『接吻』は田島さん1人で」とまさかの偉い人から、このライブで唯一のNGがでたことを明かした。さらに草なぎが田島の言葉で感動したのが「リズムは一生かけて掴むもの」というもので、それを今回のライブで実感したという。

田島貴男(撮影=新保勇樹)

 演奏前には田島所有のギターに、少年のような眼差しで色々と質問する草なぎの姿が印象的。それを観客にもその魅力を知ってもらいたいと熱く語る。ギター愛がひしひしと感じられた瞬間が終始あった。

 本当はここで捌ける予定だった草なぎだが、前日から後ろで観覧するスタイルとなったため、この日もステージ後方で観覧。田島はドブロ・ギターにスライドバー、スラム奏法と呼ばれるギター本体をパーカッションのように叩いてリズムを作り出していく。更に足元にはバスドラム、タンバリンと体全身を使っての演奏は、1人で出しているとは思えない複雑なアンサンブルを響かせた。

草なぎ剛、田島貴男(撮影=新保勇樹)

 「接吻」ではフルアコと呼ばれるギターで、ジャズテイストあふれるスタイルで披露。色気のある空間に会場中がうっとりと歌と演奏に酔いしれた。さらにリズミックな「朝陽のあたる道」を生き生きとしたエネルギッシュな歌声を届け、再びドブロギターに持ち替え「フリーライド」で観客も<Free ride!>のシンガロングで盛り上がった。ラストは草なぎがフェイバリットソングとしてリクエストした「月の裏で会いましょう」を田島とコラボ。草なぎはこの曲を聴いて「転調する意味がわかった」と嬉しそう。

日本一幸せな環境でギターを弾けています

斉藤和義(撮影=新保勇樹)

 続いては斉藤和義がステージに登場。草なぎが弾き語りのライブを始めてみたのが中野サンプラザで行われた斉藤のライブだったという。先程と同様に斉藤のギターに興味津々。さらに歌うためにスタンバイ中の斉藤にピックについて質問攻めにすると斉藤から「ちょっと静かにしてて」と諭される場面も。

 斉藤の1曲目は「やさしくなりたい」を弾き語りで。ディレイを効かせたスペーシーなイントロから、フォーキーなバッキングへと変化。斉藤らしさあふれる歌を披露し観客を魅了。2曲目に行く前に、後ろにいる草なぎをチラッと確認し、「見られてるねぇ」とポツリ。

 「月光」はハーモニカを披露し、楽曲に彩りを加え、続いての「歌うたいのバラッド」では、アコギのアルペジオが切なく響くなか、趣のある歌声を会場に響かせた。観客も草なぎも静かにその歌声に耳を傾け静かに聴き入っていた。

 草なぎは「自分の部屋にいるみたいになっちゃって」とリラックスした雰囲気。ガットギターでの「歌うたいのバラッド」しか聴いたことがなかったという草なぎは、鉄弦のギターによる同曲に感動。時にはピアノでも演奏するという斉藤に、チョイスの意図を尋ねると「気分」だと斉藤らしい答え。

草なぎ剛、斉藤和義(撮影=新保勇樹)

 そして、草なぎのお気に入り曲としてリクエストされた「ウサギとカメ」を斉藤とコラボ。歌だけではなく、草なぎのバッキングギターに合わせて、リードを斉藤が取る場面も。演奏終了後、草なぎは「オレのギターで(斉藤和義が)ソロをとってくれた!」と感動。「日本一幸せな環境でギターを弾けています」と喜びも一入のなか本編ラストは再び「はっぴょうかいのテーマ」でステージを後にした。

田島貴男、草なぎ剛、斉藤和義(撮影=新保勇樹)

 アンコールに応え、再び草なぎが登場。ゲストの2人を呼び込み、3人で斉藤の「歩いて帰ろう」を歌唱。この日だけのプレミアムな瞬間に酔いしれる。田島と斉藤がステージを後にし、最後にもう一曲、草なぎの愛犬クルミへ向けた「クルミちゃんの唄」を情感を込め歌い上げ『草なぎ剛のはっぴょう会』の幕は閉じた。

 終始楽しそうな姿が印象的で、音楽を楽しんでいることが十二分に伝わってくるステージだった。「本物になりたい」と終演後の取材で語った草なぎの目は、少年のようにキラキラと輝いていた。

セットリスト

▽草なぎ剛

01.はっぴょうかいのテーマ
02.いま・新しい地図
03.僕のギターで
04.カメレオン
05.夢の中へ(井上陽水カバー)
06.渋谷バラッド
07.twist shake
08.I Love Pure

▽田島貴男

09.フィエスタ
10.接吻
11.朝陽のあたる道
12.フリーライド
13.月の裏で会いましょう(with 草なぎ剛)

▽斉藤和義

14.やさしくなりたい
15.月光
16.歌うたいのバラッド
17.ウサギとカメ(with 草なぎ剛)

▽草なぎ剛

18.はっぴょうかいのテーマ

ENCORE

EN1.歩いて帰ろう(草なぎ剛、田島貴男、斉藤和義)
EN2.クルミちゃんの唄

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