かけがえのないもの、大切な人に気づいた
――「星が降るユメ」は 『Fate/Grand Order –絶対魔獣戦線バビロニア-』へのリスペクトも歌詞に入っていますか。
今回タイアップを頂いて私はまず、ゲームのFGO(『Fate/Grand Order』)をやろうと思いました。今回のアニメのFGOは、ギルガメッシュというキャラがメインとなって、かなり重要な人物として登場します。ギルガメッシュは『Fate/Zero』の時から好きなキャラクターでもあったので、より物語を把握したいと思い、『ギルガメッシュ叙事詩』(古代メソポタミアの文学作品)を読んだりもしました。その叙事詩のなかで無二の親友であるエンキドゥとギルガメッシュの出会いと別れというのが凄く切なくて…。自分のなかでも出会いも別れもあって、かけがえのないもの、大切な人、ものに気づくようになりました。作品リスペクトもあって、そこに自分の気持ちもあるというバランス感にはなっていると思います。
――歌詞を書く上で気をつけたところはありましたか。
作品に入り込み過ぎないようにするということです。入り込み過ぎてしまうと『Fate』を知らない人は歌詞を理解できないことになってしまうと思いました。だから客観的に見なきゃいけないと考えました。そこが難しかったところでもあります。
――ところで「星が降るユメ」というタイトルですが、藍井さんは夢は見ますか?
メチャクチャ見ます。割と悪夢多めな感じなんですけど(笑)。この間見た夢はチワワを飼っている女性に「そのチワワ可愛いですね〜」と話しかけたら「抱っこしますか?」と言われて抱っこするんですけど、チワワの目がどんどん膨張して弾けるという夢でした…。夢だとわかっているので怖くないんですけど(笑)。
――けっこう鮮明に覚えているんですね(笑)。私はあまり夢を見ない、覚えていないタイプなので羨ましいです。
私は世の中の人は夢をいっぱい見ていて、みんな夢を覚えているものだと思い込んでいたんですけど、実際は見ていない、覚えてない人も結構いるんだなと知りました。なので私は「夢」というワードが歌詞に出てくることが多いんですけど、それは歌詞を書く時に色々想像していると、私の場合夢に繋がっているんじゃないかなと思います。
――面白いですね。さて、「星が降るユメ」の歌で気をつけたポイントは?
デモのサビは全部チェストボイスで歌っていたんですけど、「あえてここファルセットで抜いて歌うのはどう?」とTAMATE BOXさんから提案を受けて、ファルセットで歌ってみました。私はずっとチェストメインで歌ってきたので、癖でチェストで歌っちゃって何回か録り直しました。あえて狙って歌うというのは、難しいことなんだなと改めて思いました。自らの癖を壊していって作っていく作業が新鮮でもあり難しくもありました。
――そういった気づきも今回あったんですね。
ディレクションがあったからこそたどり着いた歌だと思っています。
――さて、カップリングの「インサイド・デジタリィ」は曲調も歌詞もユニークですね。
アルバムでも曲を書いてくれている、私のバンドメンバーでもあるギタリストの篤志さんに作曲をお願いしました。かなりデジタル色が強かったので、デジタルなものって何だろうと考えた時にパッと自分の家を見たら、TVで動画が流れている、PCでゲームが起動されている、「これデジタルじゃん」と思いました。以前はアウトドア派だったんですけど、今の私はゲームをして引きこもるのが好きなんです(笑)。
――変わっちゃったんですか
21時間くらいゲームをしている時もありましたけど、同時に外に出るのも好きだったんです。でも、どんどん引きこもりになっていき、ついに食事もUber Eatsになり、これは「いよいよまずい」と思いました。それで外に出たんですけど、今度は『ドラゴンクエストウォーク』を起動してるという(笑)。
――もうゲームありきの生活ですね(笑)。そうなると歌詞制作はスムーズだったんじゃないですか。
スラスラとは書けたんですけど、いつもやっていることや景色は主観だから、あまり気づけなかったことを今度は外側から見る、そうすると見えかたが変わってくるので、気づいていない部分に気づかなければいけないという、ある意味クイズみたいな感じでした。1番のAメロの<響きあう生活音を聞いたまま今日もソファに座る>というのは、普段意識していなかったけど「さあ歌詞を書こう」と思った時に、TVからはYouTubeが流れているし、PCはゲーム起動画面になっている、さらに空気清浄機も鳴っているし、よく考えたら家はうるさいんだなと思って(笑)。
――当たり前過ぎて。
そうなんです。全然うるさいことに気づいていなくて。そういう気づきからちょっとずつ歌詞を作っていきました。ゲームしている人は2番のAメロは共感してくれるんじゃないかなと思います。
――この歌詞を読めばなんとなく藍井さんの生活が垣間見えるというか。
はい。この歌詞自体はわざと皮肉っぽく書いているんですけど、リアルな部分も書いています。実はこれも主観のようですけど、オンラインゲームをやっている時に友達が画面越しだからこそいま自分は話せているけど、実際に会ったりすると本当はコミュ障だから喋れない、「外に出るの本当に嫌なんだよね。ああ仕事したくない」とか言ったりしていて、そのワード一つひとつが凄く私のなかでは刺さりました。私も画面越しだと喋れるのに、実際に合ったら人見知りを隠すために逆にめっちゃ喋ることもあるので、その友達が言っていることも一理あるし面白いなと思って、それも歌詞に反映されています。