ミュージシャンのLEO 今井が25日、東京マイナビBLITZ赤坂で『大都会ツアーファイナル』をおこなった。『大都会ツアー』は、自身のバンドLEO IMAI [LEO今井 岡村夏彦 シゲクニ 白根賢一]とおこなうLEO今井自主企画ツーマンライブ。本ツアーは8月30日大阪 UMEDA SHANGRI-LA、8月31日名古屋 JAMMIN'、9月24日東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO、10月1日福岡BEAT STATION、10月12日札幌 cube gardenで開催され、この日の東京マイナビBLITZ赤坂でツアーファイナルを迎えた。ZAZEN BOYSのステージから始まり、LEO IMAIステージではゲストの前野健太、呂布カルマとのコラボで魅せるなど、最終公演にふさわしい豪華メンバーでのフィナーレとなった。【取材=平吉賢治】

ZAZEN BOYS電光石火の“キメ”の嵐、圧倒的グルーヴ

ZAZEN BOYS(撮影=(C)Jun Tsuneda)

 ステージ上に姿を現したZAZEN BOYSはゆっくりとスタンバイ。松下敦(Dr)の力強いロータムの刻み、ストラトキャスターからディレイギターサウンドを散らす吉兼聡(Gt)のコンビネーションの「Honnoji」から、ライブは鬼気迫る空気感のなかスタートした。

 向井秀徳(Vo/Gt/Key)のオーディエンスに語りかけるような、訴えかけるようなボーカルスタイルが変拍子を操る華麗なアンサンブルと共に会場に広がる。タイトなビートに向井のテレキャスターの硬質なサウンド、髪を振り回しながらのMIYA(Ba)の踊るようなベースライン、そして電光石火の“キメ”の嵐が舞い、ZAZEN BOYS独自のバンドサウンドは開始1曲でオーディエンスを虜にするようだった。

 チューニングを下げての「Himitsu Girl's Top Secret」ではあらゆる拍でのリズム展開に、オフマイクの生声で刻まれるビートとコールが会場のクラップを誘発。地を這うようなベースラインに一度聴いたら頭から離れないような印象的リフと、“ZAZEN BOYS色”は瞬く間にBLITZ赤坂を支配するようだった。

 ここまでの楽曲では変拍子含みが多かったが、「杉並の少年」は一般的な拍の4拍子。しかし絶妙なアクセントがそうさせるのか、この曲もどこか変拍子に聴こえてしまうあたりにZAZEN BOYSの妙技を感じずにはいられない。ヘヴィなダウンチューニングのサウンドにパワフルなドラムプレイ、唯一無二のグルーヴ、向井のボーカルスタイル。圧倒的な独自感のバンドパワーに持っていかれっぱなしのなか、「This is NORANEKO」ではジョン・ボーナムばりの、あるいはそれ以上だろうか、松下のパワフルなドラムプレイが特に際立って感じられた。(※ジョン・ボーナム:Led Zeppelinのドラマー)

 そしてLEO今井がアルバム『6 Japanese Covers』でカバーしている「ポテトサラダ」のZAZEN BOYSオリジナルバージョンが披露され、「WHISKY & UNUBORE」へと続き、同曲終盤での向井&吉兼のダブルリードギターが絡み合い、ありとあらゆるアプローチを容赦なく展開させた。

 MCで向井は「MATSURI STUDIOからやって参りましたZAZEN BOYS」と、改めてオーディエンスへ告げ、「破裂音の朝」へ。妖艶な空気を醸すシンフォニックなギターアンサンブルに後半のノイジーなギターアンサンブルの展開、向井のシャウト、そして珠玉の“キメ”と、怒涛のテンションで会場を沸かせ、16ビートに乗るベース&ドラムのグルーヴがオーディエンスと同期した「Asobi」でZAZEN BOYSのステージはフィニッシュ。最後に向井はバンドメンバー紹介をし、大拍手に包まれながらライブをLEO IMAIへと繋げた。
 

LEO IMAI、重厚かつ機敏、そして激情のアンサンブル

LEO IMAI(撮影=(C)Jun Tsuneda)

 「Omen Man」の重厚なサウンドと燃え盛るような今井のシャウトが耳にストレートに飛び込んでくる。ストロボフラッシュと共に刻まれるタイトなリズムが体の随所に突き刺さる。岡村夏彦(Gt)の音圧感抜群のギターサウンドがけたたましく響く。LEO IMAIは初曲から爆発力十分なエネルギーを発し、オーディエンスを圧倒。「人生、一度は噛み付いてみたいものです」と今井は「Bite」へ続き、ハンドマイクで力強い身振りのパフォーマンス、そして地に向かっての渾身の叫びと、ファイナル公演に対する熱い意気込みが牙をむき、ZAZEN BOYSの熱量を引き継ぎながらも開始2曲で会場は“LEO IMAI色”に染められた。

 LEO IMAIのサウンド、ライブは、瞬時に耳と体に突き刺さるような、魂に深く爪痕を残されるような、アプローチの一挙一動が心に叩き込まれるような、比類なき存在感を示していた。2マンライブツアーという強大な相乗作用はこの日のLEO IMAIのステージでさらに大きく膨らんだ。

 この日はツーマンというスタイルに加え、ゲスト出演2名という豪華ステージ。今井はまず一人目「“ミスター・ファックミー”、前野健太!」と、前野を迎え入れた。今井と前野はステージ上でしばし和やかに歓談し、今井は「本当に嬉しいです。ありがとうございます」と前野に伝え、「ファックミー」のカバーを披露。ダークな空気感のなか、今井と前野は情念たっぷりに歌い上げ、ディープな倍音が生成される今井&前野のハーモニーが会場中に響き渡った。前野の溢れんばかりのパフォーマンスは勢いあまって自身のサングラスを床に降り落とすほどのテンションだった。

 拍手に包まれながら前野健太はステージを去り、赤と青のライトが艶やかにブレンドされたライティングのもと、映画『プリズン13』主題歌の「Fandom」へ。白根賢一(Dr)、シゲクニ(Ba)が刻むどっしりとした8ビートのなかで今井は鍵盤をプレイしながらの鬼気迫る歌唱をみせた。

 続く「ヤングたかじん」ではゲストに呂布カルマを招いてのコラボレーション。白根とシゲクニが刻むミドルテンポのHIP HOPビートに岡村のループフレーズが絶妙に絡むなか、ラップは呂布のバースから始まり今井へと継がれ、攻めた歌詞が会場中に飛び散るようだった。呂布は曲中に「LEO, やっぱ好きやねん」とリリックを織り交ぜ、今井とのコラボ熱を表した。

 そして今井は「これからはカバーメドレーが続きます」と、オーディエンスへ伝え、人間椅子の「どだればち」を披露。本ツアーの9月24日東京 SHIBUYA CLUB QUATTROで観戦したLEO IMAI×人間椅子バージョンが鮮明に蘇るが、この日はさらにアップデートされた「どだればち」のテイクを観せてくれた。そしてZAZEN BOYSのカバー「ポテトサラダ」では向井とのコラボとなった。静かな気迫の物腰でステージに現れた向井の「行ってみましょう」という契機で始まったLEO IMAIバージョン「ポテトサラダ」は、先ほどのZAZEN BOYSのオリジナルバージョンとは別種の味わいで披露され、オーディエンスは好反応の大拍手で応えた。

 ライブも後半、eastern youthのカバー「夏の日の午後」へと続き、今井はマイクを両手で握りしめながら魂が無数に飛び散るような激情感溢れる歌唱をみせた。そして今井は「静かな曲を」と一言添え、静寂を音にしたような演奏の「雨」を披露。チルアウトな空気感からの本編最終曲は疾走感溢れる「New Roses」。あらゆる変化に富んだ怒涛のアンサンブルが会場の空気を膨張させ、燃えんばかりの今井のシャウトでビシッと締めくくられた。

 「New Roses」終了後の拍手はアンコールへと繋がり、LEO IMAIはNHK Eテレ番組『デザインあ』での歌唱・出演曲の「Shoot & Edit」で応える。そして公演最終曲を前に本日のスペシャルゲスト全員をステージに招き入れた。『大都会ツアー』ファイナル楽曲はLEO IMAI、ZAZEN BOYS、前野健太、呂布カルマという豪華面々で「Tokyo Lights」を披露。ダブルドラムにギター2本、ベース、そして今井はエレクトリックパーカッションと、圧倒的ボリュームの編成で披露されるツアー最終曲にオーディエンスは手を掲げての熱烈レスポンス。『大都会ツアーファイナル』の名にふさわしいフィナーレとなった。

 今井はアンコール間のMCでは、ワンマンライブ『TOKYO LIGHTS 2020』を東京・代官山UNIT で2020年2月26日に開催することをオーディエンスへ伝えた。本ツアーでは様々なバンドとの2マンを展開し、ツアーファイナルとなったこの日はゲストを迎え入れてのパフォーマンス。来年のLEO IMAIのワンマンではどんな演出で楽しませてくれるのか、期待が膨らむ――。

セットリスト

『大都会ツアーファイナル』
2019年10月25日@東京マイナビBLITZ赤坂

<ZAZEN BOYS>
01. Honnoji
02. Himitsu Girl's Top Secret
03. Cold Beat
04. 杉並の少年
05. This is NORANEKO
06. ポテトサラダ
07. WHISKY & UNUBORE
08. 破裂音の朝
09. Asobi

<LEO IMAI>
01. Omen Man
02. Bite
03. Fresh Horses
04. ファックミー(w/前野健太)
05. Fandom
06. ヤングたかじん(w/呂布カルマ)
07. どだればち
08. ポテトサラダ(w/向井秀徳)
09. 夏の日の午後
10. 雨
11. New Roses

ENCORE

EN1. Shoot & Edit
EN2. Tokyo Lights(feat. 全員)

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