BRIAN SHINSEKAI「境界線を越えること」世界的視野が捉える音楽の可能性
INTERVIEW

BRIAN SHINSEKAI「境界線を越えること」世界的視野が捉える音楽の可能性


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年10月01日

読了時間:約10分

Spotifyでコンゴやブルガリアのチャートをチェック

BRIAN SHINSEKAI(撮影=榑林史章)

――今、BRIAN SHINSEKAIの音楽の軸になっているものは何ですか?

 僕は世界各地のいろいろな音楽を聴くのが好きだし、同時に70?80年代のニューウェーブやグラムロックから影響を受けた過去もあるし、日本の歌謡曲も血肉になっています。そういう日本人ならではの歌謡的なメロディを持ちながら、世界各国の音楽を取り入れ、オリエンタルなエレクトロミュージックとしてアウトプットしていくことです。

 その上で、無理にハイトーンで歌うことはせず、地声が低いところもナチュラルに出していこう、と。そういう歌は、日本では他にやっている人があまりいないけど、海外では低いトーンでシリアスな内容をカラッと歌うシンガーも増えているので、世界的な流れともマッチするなと思います。それでBRIAN SHINSEKAIは、そういう僕がもともと持っているポテンシャルを素直にそのまま出していけば、それが世の中ともリンクするだろうと思いました。

――日本の歌謡曲は、誰から影響を?

 美輪明宏さんとか、三波春夫さんです。美輪さんはシャンソン歌手で、シャンソンを日本流に解釈して歌ったり、日本人で初めてのシンガーソングライターとして、歌声や見た目も含めて、自分にしか出せないものを表現されていて。自分のフィルターを通して、海外のものを解釈して発表していった発想がすごく大好きで、そういうスタンスとか精神性に影響を受けました。

――これまでにリリースした「WAIT」はヒップホップ、「ATTACHMENT」はアフロ・アフリカン、そして前回の「TAIWAN」はアジアンテイストですね。そして今回は、ラテンのリズムを取り入れています。マイルが貯まりそうですね(笑)。

 実際に行っていたら、確かにそうですね(笑)。11月6日にはこれら多国籍ポップミュージックのシリーズを収録したEPをリリースする予定で、他にもさまざまな世界のテイストを持った曲もありますし、国に限らず、かなりいろいろなものが混在したものになる予定です。

――こういった音楽を作る上での引き出しとして、どういうところから情報を得ていますか?

 最近はSpotifyです。Spotifyで探索して、気になるものがあったら音源を入手して聴くという感じが多いです。Spotifyは、世界中のチャートが見られるのが良くて、たとえば中央アフリカにあるコンゴ民主共和国のチャートとか。

――コンゴの音楽チャートって、想像が付かないです。コンゴの今週の1位は、どんな音楽なんですか?

BRIAN SHINSEKAI

 やっぱりヒップホップとか、世界のトレンドを取り入れているんですけど、メロディを聴くとアフリカっぽさを感じたり、アフリカっぽい太鼓の音がちょっと入っていたりとかしていますね。他に、ブルガリア共和国のチャートが面白かったです。ブルガリアもヒップホップが上位なんですけど、ボソボソしゃべる感じのラップが特徴的でした。ただブルガリアが面白いのは、お笑いスターとか番組の人気司会者とか音楽が本職ではない方が歌を出す文化があって、そういう方の曲が上位を占めていてエンタメ色が強いという印象的でしたね。Spotifyがなかったら、絶対に注目しなかったであろう音楽ばかりで、聴くとたくさんの発見があって面白いです。

――ところで、公開中の映画『HELLO WORLD』の劇伴にも参加されています。こういう経験は初めてだったそうですが。

 “2027Sound”という映画音楽のためのプロジェクトに参加させて頂き、4曲ほど制作しました。

――そういうものに携わったきっかけは?

 OKAMOTO'Sが劇伴をコーディネートするような形で、生のロックバンドでは担えないようなシーンもあるから、その部分を手伝ってほしい、と言われて。「ATTACHMENT」のアレンジをOKAMOTO’Sドラムのレイジくんに相談していて、その流れで誘っていただいた形です。

――こういうシーンに使うから、こういう曲が欲しいといった感じで?

 はい。まだ色も付いてない状態の、音楽もなくセリフだけの映像を見せてもらって、それに音を付けて送ってというやりとりを何度も繰り返しました。かなりテンポの速いドラムンベース曲もあれば、今のBRIAN SHINSEKAIの多国籍な感じのトラックもあったり、自分としても勉強になりましたね。

――いろいろなアーティストが参加して一つの劇伴を作るのは面白いですね。

 1曲1曲が全然違うし、シーンごとに音楽がパッと切り替わる感じで、すごく面白いです。それに参加しているアーティストが全員20代後半で、ほぼみんな同世代だったのが良かったと思います。だからOKAMOTO'S、Official髭男dism、Nulbarichなど、ジャンルも形態もバラバラだけど、お互い通じ合う部分がすごくあって楽しかったです。

――さて、BRIAN SHINSEKAIとして今後は?

 ライブをやっていきたいですね。僕のライブは、シンガロングできるようなサビが多いので、双方向で楽しんでもらえるものになっていると思います。ただ決して暑苦しいものではなく、お客さんのタイミングでノッたり歌詞を聴いてくれてもいいものになっています。歌詞もいろいろ考えたり想像を巡らせてもらえるように、余地をたくさん残しています。

 例えば僕が好きなバンドの一つにトーキング・ヘッズがいて、後期は民族的なリズムを取り入れてグルーブさせて、その上でメロディをループさせていて、そういうのが好きで。その中心人物だったデヴィッド・バーンのパフォーマンスも、それが一体何なのか分からないけどすごく印象に残るもので。決して答えは見せないけど、見た人それぞれで答えが浮かんだり、でもあくまでダンスミュージックとしてしっかり成立していた。今後は、そういったコンセプチュアルなワンマンライブをやりたいです。

(おわり)

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