『キングスマン』シリーズの若手人気スター、タロン・エジャトンが、エルトン・ジョンの半生を映画化したミュージック・エンターテイメント超大作『ロケットマン』(公開中)で、そのエルトンを演じた。音楽界の最高峰グラミー賞を5度受賞、世界一売れたシングルの記録を保持する伝説的ミュージシャンの心の叫びを表現するため、タロンは劇中のエルトンの名曲の数々を、全編吹替えなしで熱唱した。エルトンに縁を感じ、リスペクトするタロンはエフェクト処理などはおこなわず、圧倒的な演技力&表現力で観る者を魅力する。タロンは、この映画を、エルトン自身をどう見ているのか。【取材=鴇田崇】
本作はノンクレジットだが、昨年の大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』の最終監督を務めたデクスター・フレッチャーが監督。そしてエルトン自身が、プロデューサーを務めている渾身作だ。
【ストーリー】イギリスは郊外ピナー。厳格な父親と子に無関心な母親の元、孤独を感じて育った少年レジナルド・ドワイト。ある時、天才的な音楽センスを見出され、国立音楽院に入学をする。ミュージシャンになることを夢見た少年は、やがて古くさい自分の名前を、それまでの自分を捨てることを決意する。新たな彼の名前は――「エルトン・ジョン」だった……。
――本作は偉大なミュージシャンの伝記ドラマであるものの、さまざまな側面がある作品で、野心的なスタンスも感じられました。
確かに、すごく勇敢な作品だと思う。多くの人に観てもらいたいからといって、妥協をしていないところが気に入っているよ。国によってはゲイなどへの偏見が依然あるため、そこを気にして男性同士のラブシーンを控えめにすることもできたが、あえてそういうことをしなかったからね。そういう勇気ある判断は、この映画の魅力のひとつだと思うし、ほかにもたくさん魅力はあると思うよ。
――エルトンの曲では、何が好きですか?
この映画の中には出てこないけれど、「サムワン・セイヴド・マイ・ライフ・トゥナイト(Someone Saved My Life Tonight)」という曲が一番好きで、映画の中では「僕の歌は君の歌」が一番さ。ほかの皆と同じように、あの曲が大好きだよ。撮影の時、そのまま歌も録音したので、すごく楽しかったよ。
――この映画のテーマとまではいかないですが、人生の皮肉を感じました。波乱万丈な人生だからこそ、エルトンは数々の名曲を生み出したと思いませんか?
どうだろう。満ち足りた人生を送っている人たちが、必ずしも素晴らしい芸術を作るわけではないよね。必要から発明が生まれるともよく言うけれど、ただエルトンは、神から授かった美しいメロディーを作る才能があった。それは本当に素晴らしいことだよね。
――エフェクト処理でエルトンの声に近くできたのに、あえてしなかったのはなぜですか?
本物の気持ちを伝えることが大事だったから、それを考えるとエルトンに似ているとか、そっくりかどうかは、そこまで重要ではないよ。それよりも自分で心から表現している感情を伝えることが大事だった。エフェクターで真似ることよりもね。
――また、あの複雑な家庭環境は、数々の名曲誕生に影響を与えたと思いますか?
そうだね。成功したいという強い野心や欲望は、親に愛されなかった影響も大きいと思う。エルトンのマインドの中で、他人よりも素晴らしい人生を手に入れるのだ、という思いに結びついていると思う。ただ、それが音楽に実際にどう反映しているのかと言うと、よくわからない。それまでに自分が培ってきた経験が作品に反映されていくことは自然なことだとは思うけれど、あれだけ美しい名曲が生まれるのは、たぶん永遠の謎でしょう。
――昨日までの自分を捨てて本当の自分になるというセリフやテーマは、エルトンに詳しくない人にも響く普遍性あるものでした。
僕の場合、普通に成長して、そのまま今の自分になっているから、特にあのシーンのような気持ちになったことはないかな。でも、もしも自分も彼のような感じだったら、変えようと思ったかもしれないけれどね。
『ロケットマン』
大ヒット公開中。
配給:東和ピクチャーズ
(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.