フィメールラッパー・SHACHIの素顔に迫る、運命に導かれたミックスボイス
INTERVIEW

フィメールラッパー・SHACHIの素顔に迫る、運命に導かれたミックスボイス


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年08月04日

読了時間:約15分

ターニングポイントとなった「Turn up the music」

――それで、SHACHIとして最初に作った曲が「Beautiful day」なんですよね? 当時の手ごたえはどうでしたか?

 ディズニーみたいな世界観で「かわいい」と思って嬉しかったです。

――こう過去の曲も聴くと、歌い方にも変化が見られますよね? 変化のきっかけはあったんですか?

 それは研究しているからだと思います。「もっとこうしてみて、ああしてみて」というディレクションをしてくれるようになったりとか、自分も「こういうのをやってみてもいい?」とか提案して、そういう積み重ねで自然と変化していったと思います。そもそも、私もSAMEさんも音楽を作る点では初心者に近いところからスタートしたので、お互いにスキルが上がっていった感じでもあると思います。

――ということはこれまでの楽曲を聴くとその成長過程が見られる?

 そうだと思います。自分でも感じますし!

――そのなかでターニングポイントになった曲はありますか?

 やっぱり「Turn up the music」(2018年7月リリース)ですね。

――これは初めてMVを撮った曲でもありますよね。なぜターニングポイント?

 伝えたかったことを曲にして、それが世界の人に聴かれたという実感があった曲です。リリックのなかで「言葉も生まれも肌の色も関係ない、そんなことを気にしないで音楽を楽しもよう」ということを書いているんですけど、それが一番言いたかったことなんです。例えばヒップホップでいうと、日本人がラップしているのは海外では認めてもらいないところもあるかもしれないし、日本のなかでは「お前はストリートじゃない」とかよく分からない言い合いが多くて。ブラックミュージックは黒人のものだ、ロックは白人のものだとか。そういうのは関係なしに音楽を楽しもうよ! と言っているのがこの曲。その伝えたかったことを曲にして、それをYouTubeで公開したら、世界の人からたくさんのコメントがきて。それで「伝わったんだな」と実感がわいて。それがすごく嬉しくて、自信になった1曲でした。

――認められなかったことがあったんですか?

 ラップバトルが流行っているんじゃないですか? 私は見るのが好きなんですけど、だいたいが言い合う言葉がそういう批判するものが多くて、そういうのは嫌だなと。そこで競うのは違う気がして、私みたいな、一見ヒップホップと無縁なタイプでもしっかりできることを見せて、しっかり音楽をやって証明すればきっとわかってくれるんじゃないかと思って。それが少しずつ伝わりつつあるのかなと思います。

――お互いに罵り合うのではなく、もっとポジティブに?

 お互いを認め合うじゃないですけど、「違う」ということはその人の個性だから何にも悪いことじゃなくて、自分と違う個性があると思えればいいと思う。だから、そういう批判的なものじゃなくて、ハッピーにいきたいなと思います。

――SNS全体として、批判的なものが目立ちますよね。

 そうですよね。結構否定的なことだったり、そういう言葉に悩んだりとか。「Turn up the music」
は、新しい活動をするときの気持ちも込めているんです。私の経験で、世間から冷たい目で見られたり、仲間から勘違いされた時があって、誰からも必要とされていないんじゃないかという状況に陥ったときがあって、そんな時でも一緒にやろうと言ってくれた人たち、見捨てないでいてくれた人たちの言葉がすごく嬉しくて、それで自分は諦めないで来られたということもあって、その人たちの感謝の想いも込めています。

――初めてのMVでもありますが、MVはどういう存在?

 MVと音楽は同じぐらい大事だと思っていて、短い映画だと思っています。3、4分ぐらいの短い時間のなかで物語がしっかりある。言葉がなくても自分の気持ちを共有できる手段とも思っていて、そのなかで映像はすごく重要。自分が出したい世界観をより引き出してくれるものだから、自分がすごく信頼している監督に撮影を頼みました。1回目のMVでどうしてもやりたかったことがあって、それは水のなかに入ること。それが叶ったので嬉しかったです!

――水の中で歌うのがずっと憧れだったとも語っていましたね。

 そうです! ずっと夢で自分の好きなアーティストで、ヒップホップから離れてしまうけど、レディオヘッドとか、ザ・ストロークス、ブリトニー・スピアーズとかたくさんいますけど、水の中で苦しくてもずっと歌い続けるさまがすごくかっこよくて。人間って水の中では呼吸はできないけど、その水から生命は生まれているわけで、すごく神秘的に感じていたんです。それと自分の名前はSHACHI。海のなかで一番強いと言われているのがシャチ。世界を覆っているのも海。最初はまだまだ小さな自分たちの気持ちだけど、じわじわと広まっていけばいいなという思いもあって水の中で撮りました。でも…泳げないんです。だから撮影は大変でした。息を止めるのもできなし…。何回も撮り直して…。

SHACHI

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