フィメールラッパー・SHACHIの素顔に迫る、運命に導かれたミックスボイス
INTERVIEW

フィメールラッパー・SHACHIの素顔に迫る、運命に導かれたミックスボイス


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年08月04日

読了時間:約15分

 フィメールラッパー・SHACHI(シャチ)が今、注目を集めている。2018年夏に自身初のミュージックビデオ「Turn up the music」を公開すると瞬く間に再生され、100万回を突破。海外からの反響も大きい。しかし、その存在はベールに包まれたままだ。SHACHIはどういう人物なのか。テレビ朝日スペシャルドラマ『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』の主題歌に大抜てきされ、9月には自身初の配信EP『alone』のリリースも決まった。そんな注目の人物の素顔に迫る。【取材・撮影=木村陽仁】

運命に導かれるように

――SHACHIさんの歌声は個性があり、囁き包み込むような優しさが特徴的ですが、自分がそれに気づいたタイミングはありましたか?

 子供の時に初めて自分の声を録音して聞いたら想像していた声と違っていてコンプレックスになってしましました。でも3年前に、のどに水が溜まる声帯のう胞という病気になって、ボイスクリニックに行ったところ、先生に「普通の人と声の波長、揺らぎ違う。絶対に声の仕事をした方がいい」と言われて。その時に初めて「人よりもいいものを持っているんだ」という気持ちになれて。コンプレックスも消えましたし、「声を大切にしよう」と思えるようになりました。

――普通の人と声の波長が違うのは何か要因でもあるのですか?

 私の声帯はもともと普通の方とは違うようなんです。声は、左右の声帯を振動させて出すけど、普通の方は地声の場合は締まっているんです。でも私の場合はしまらなくて空いている状態で、それがミドルボイスやミックスボイスの状態らしいんですよ。逆を言えば、強めのアタックの声が出せなくて。

――ミックスボイスが自然体で出せるのはすごいですね。先生が大切にした方がいいと言われたように、まさに宝ですね。

 ただ、意識して出しているわけではないので、使い分けが出来たらいいなと思います。

――SHACHIさんがSNSに書き込まれたものを見ましたが、囁いた場合とフラットに歌った場合の波形を見せていましたね。

 曲はプロデューサーのSAMEさんと一緒に作るんですが、レコーディングはスタジオでやるので、歌っているときの波形が見られるんですよ。その波形を見ながら歌っていて。そもそも、歌がうまい人の波形は全然違っていて、優しく入って優しく抜けていてその形がオタマジャクシみたい。なので、いろんなパターンをSAMEさんと一緒に研究して、抑揚をつけたり、どれだけ聴き応えが違うかを調べています。

――それはやはり「いろんな人に聴いてもらいたいから」ということですよね。SNSでもそのようなことを書かれていましたが、それは活動を始めた当時から思っていたことですか?

 そうですね。ちょっと恥ずかしいんですけど、「自分たちの音楽は本当にいい」と思ってやっていて。SAMEさんの作るビートもいいと思っているし、リリックも一緒に書いているんですけど、自分たちが伝えたいことを入れて自信を持ってやっている。なので、どうすればたくさんの方に聴いてもらえるかを考えながら作っています。

――そもそも音楽家になりたいと思っていたんですか?

 音楽は好きでしたけど、自分がやれるとは思ってもいませんでした。もともと家族が海外好きで、映画も洋画を観ていましたし、プロレスもWWE(アメリカのプロレス団体)でした。CSの海外チャネルを契約していて、アニメも専門チャンネルのカートゥーン・ネットワークだったし、物心着いたときから海外の文化に触れている環境に育って。姉がいるんですけど、姉が先に洋楽を好きになって、そのうち私も好きになって。年齢が近いから姉妹で競い合うというか、お互いに「この曲知っている?」ということを話して、それによってさらに聴く音楽の幅がどんどん広がっていった感じで。

――SHACHIの活動はいつ頃からですか?

 声帯のう胞になったその後からです。SAMEさんは地元の友達で子供の頃から知り合いです。そのSAMEさんは当時、LAに音楽を学びに留学していて、私も音楽活動はやっていたので、お互いの近況報告ということで連絡は取り合っていました。SAMEさんは気まぐれで海外なのによく電話をかけてきたんですよ。不思議だったから「なんで電話してくるの?」と聞いたら「α波を感じるから」と。私の声に「それを感じる」とずっと言っていて。それで日本に戻ってくるタイミングで「一緒にラップをしよう」と誘ってくれて、SAMEさんは子供の頃からラップを聴いていて実際にラッパー。対して私は聴いていたけどやったことがないから「できないよ」と返したけど「教えるからやろうよ」と。それで始まりました。

――ミックスボイスといい、運命的に動いていますよね。

 私もそう思います。しかも、SAMEさんは当初、日本に帰ってくる予定はなかったようなんですよ。小さい頃からヒップホップやR&B、ロックなどジャンルを問わず洋楽が好きで、ギャングスターにも憧れがあったけど、自分がそれになれるとは想像もしていなくて、私自身も今の状態が不思議で、未知の世界にいるような感じです(笑)。

SHACHI

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