スターダスト☆レビュー「“今”を伝えたい」根本要が語るスタレビの核心
INTERVIEW

スターダスト☆レビュー「“今”を伝えたい」根本要が語るスタレビの核心


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年08月01日

読了時間:約14分

ベーシックの掘り起こしが凄く魅力的だった

根本要

――新曲の「うしみつジャンボリー」は佐橋佳幸さんと一緒に制作されたんですね。

 アルバム『還暦少年』のときから、こんなにもスムーズに音楽が作れる関係になるとは思っていなくて。佐橋に依頼するにあたり、彼のプロデュース作品をいくつも聴いていくなかで、いままでになかったスタ☆レビサウンドを作り出すより、きっと僕らのベーシックを真っ当に掘り下げてくれるだろうなと思ったんです。それでいざやってみたらベーシックの掘り起こしが、もの凄く魅力的だったことに気付いて、スタ☆レビって素敵なバンドだったんだって、佐橋から教えてもらいましたね(笑)。

――意外な発見があったんですね。

 アルバムのレコーディングもとても楽しかったし、その流れで「うしみつジャンボリー」も佐橋と作っちゃおうと。作る前にTVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』制作サイドの話では、「あまり『ゲゲゲの鬼太郎』に寄らなくていいです」と言われていて。

――タイアップなのに、そんなオファーのされ方もあるんですね。

 僕もちょっとびっくりしたんですけどね。だけど、僕はこの話を頂いたときに「佐橋、俺は鬼太郎の曲を作りたい」と話して(笑)。『ゲゲゲの鬼太郎』からファミリーというのを感じたので「鬼太郎が仲間達とワイワイやっているのを表現したいんだ」と、だから思い切り鬼太郎に寄せたいんだと話して。スタ☆レビはメロディアスな曲が多いんですけど、ファンクやR&Bのコード一発、リフで攻めるというのも考えました。でも、なかなか『ゲゲゲの鬼太郎』のイメージに乗らなくて。それでちょっと楽しげな『ゲゲゲの鬼太郎』を作ったら「うしみつジャンボリー」が出来たんです。

――エンディングということも意識されたのでしょうか?

 あまり重たい曲はやめて、リズムのある曲にしようというのは最初から考えていました。楽しい曲で、“ゲゲゲの鬼太郎”が連呼されるわかりやすい曲にしようと。そのレコーディングも楽しかったですね。

――音源から楽しさが伝わってきます。

 「ちょっとスカやレゲエも入れましょう」という話になって、ポール・サイモンの「Mother and Child Reunion」とザ・ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」あたりをミックスさせて、ちょっと弾む感じがいいのかなと。実は全部で3、4曲作ったんですけど「いくつかある曲のおいしい所を入れて作ってみようよ」となって、1曲にまとめたんですよ。

――パズル感覚ですね。そこを佐橋さんと相談しながらだったのですね。

 そう。あいつの一番大胆なところはそこですね。「両方くっつけようよ」って。普通、僕は作家として、佐橋はアレンジャーとしてやるんでしょうけど、僕も佐橋も、そこで組み立てるという、佐橋も作家としてのアプローチもあり、僕もアレンジャーとしてのアプローチもあるという関係性でした。

――そこはあまり境目がないんですね。

 また彼は褒め上手なんですよね。自分で作って半信半疑の曲も「いや、これいいじゃないですか!」と、部長がハンコを押してくれる感じです(笑)。それがあるからやっていくうちにどんどん楽しくなってくるんですね。僕は作ったものを一度否定するタイプなんですけど、今回はもう佐橋の助けもあって「これだね」と出来上がりました。

――タイトルも秀逸ですね。この言葉の組み合わせはなかなかないかと。

 最初、「妖怪ストラット」というタイトルを佐橋が提案してくれたんです。格好良いんだけど、そのストラットほど黒くもないよなぁと思って、僕がいくつか考えて出てきたのがこのタイトルだったんです。

――曲は確かにジャンボリー感があります。

 ジャンボリーという言葉は、もともとボーイスカウトで使われるらしいんです。ジャンボリーってみんなで集まって何かやりそうな感じもありますから。あと、イギリスのセッションマン、クリス・スペディングの「ギタージャンボリー」という曲があるんですけど、それはエリック・クラプトンとかジェフ・ベックとか、70年代のギタリストのモノマネをしていく曲なんです。僕はこれが大好きで「ジャンボリーってこういうイメージなんだ」というのが僕のなかで響いていたんだと思います。あと“妖怪”というキーワードがあったから、何かおどろおどろしいのはないかなと。「じゃあ丑三つだな」と、これはたまたま出てきた言葉ですね。

――ところで『ゲゲゲの鬼太郎』をご覧になったことはありますか?

 漫画も読んでたし、子供の頃のアニメは観ていましたよ。今回曲を書くにあたって資料を頂いて、何よりパンフレットに妖怪も含めて鬼太郎に対しての想いがいっぱい語ってあったんです。その世界観が僕に詞を書かせたんだと思います。

――「うしみつジャンボリー」の歌詞はキャッチーな中にもメッセージ性がありますよね。

 僕ら人間が、善も悪もあったうえで、いつも心のなかで戦っているんだっていうのをね。中学校のときに禅寺にこもっていたことがあるんです。夏休みに、突然「悟りをひらく」と言って。

――中学生で悟りですか?

 うん。中学生だから自分の理想に恋していただけですね。でも寺に行ったらそこには本気の人ばかりで「悟りなど100年早い!」って和尚に怒られました(笑)。それで1カ月ほどいたんだけど、1日8時間くらい座るんですよ。中学生の頃の僕はガキ大将で喧嘩っ早くて、短気で、それを治したかったんです。

――今からは想像が付きませんけど、短気だったんですか。

 短気でしたね。自分でもそういうのは嫌だなと常々思っていたんです。でも、僕があたふたしていたら、くっついてくる奴も大変だし、とにかく僕は落ち着かなきゃということで悟りをひらこうと短絡的に行ったんですよ。そこで、喧嘩っぱやい僕に、落ち着きのない僕に和尚が言った言葉は「喧嘩するな」「落ち着け」(笑)。確かに感情をコントロールできてないのは自分なわけで、それもできない奴に何が悟りだという話なんでしょうね。未だにその言葉は僕の座右の銘になっています。

――良い経験だったんですね。

 でも、ただただ苦しくて辛くて毎日泣いていましたよ(笑)。でも、あそこに行ったことは僕の人生を変えてくれたような気がするんです。

――お寺の経験が「うしみつジャンボリー」の歌詞にも繋がっているのではないかなと思いました。

 僕個人は根本要だけど、実は根本要というのが存在するためには明らかに様々な要素が必要で、それの組み合わせの結果として僕がいるわけで、そんな人間の集まりを世の中と呼ぶんですよね。そういう考え方に変えてくれた寺があったから、きっと「うしみつジャンボリー」に書かれている、自分のなかにある善と悪みたいなものに気付いたと思うんです。

――和尚さんの言葉が変えてくれましたよね。

 うん。全てのことを自分のなかで答えを出せるわけじゃないけど、少なくとも僕の見える世界のなかでは、善悪はちゃんと見つけたいです。自分にとっての善悪もあるし、世の中にとっての善悪もあるし、そして社会というなかの機能の一部として自分もそこにいたいなと。「うしみつジャンボリー」もそんなことを語りたいところがあって、そこに鬼太郎達がいてくれるから僕は安心してられるんだなと。僕のなかの善を僕は信じていたい、僕のなかの鬼太郎を信じていたいということですよね。

(おわり)

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事