ヒット曲と言われるたびに正直切なくなる「木蘭の涙」
――こんな面白い副音声もなかなかないと思います(笑)。ライブではヒット曲「木蘭の涙」も披露されていますが、現在多くのアーティストにカバーされています。この現象はどう捉えていらっしゃいますか。
実際にはこの曲、ヒット曲と呼べるほどヒットしてる訳じゃないんだけど(笑)、30年もやり続けると世の中が勝手にヒット曲だと思っちゃうんだよね(笑)。
――要さんのなかで、ヒット曲とはどのような概念がありますか。
ヒット曲って自分で実感するものではないでしょう。僕の友達のKANちゃんの「愛は勝つ」が売れたときは、本当にどこにいってもかかっていて、ヒット曲が出るということを目の当たりにしました。業界用語で「街鳴り」って言うらしいけど、それに比べると僕らの曲は正直まだまだ足下にも及ばないくらいだったから、自分のなかでは「木蘭の涙」にしても「今夜だけきっと」にしても「夢伝説」にしても、ヒット曲と言われるたびに正直、切なくなるというか…。だからこうやってある程度僕らを知ってくださっている人に言われた場合はちゃんと訂正します。「ヒット曲というほどヒットしてないですけど」と(笑)。
――日本のスタンダード曲という呼び方ではいかがでしょう?
確かにその当時は1位にならなかったけど、長い間チャートインして歌い継がれた曲もありますよね。でも僕らのは1位どころかベスト10にも入っていないんですから。
――それは意外でした。
音楽って繰り返し聴くうちに親近感も生まれ、何となく好きになることもありますよね。そうやって知って、カバーしてくれるのはありがたいですけどね。ミュージシャンとして、音楽を愛する者として、カバーするということはどれだけ大変なことかと。作曲するよりもカバーするほうが大変だったりするんですよ。僕らにとって何故この曲をカバーするのか、自分にとってどういうものなのか、自分がこの曲で何ができるのか、というのを詰め込んだ上でやるべきことなんです。
――カバーひとつとっても実は大変なんですね。
僕自身はカバーをやるのであれば中身をちゃんと精査して届けたい、自分が歌う意味をちゃんと持ちたいというのがあります。「木綿のハンカチーフ」とか、このライブでやったけど、自分の声とこの曲のマッチングというか、僕なりのその曲に対する想いとかメッセージを含めないと駄目なんです。そして原曲リスペクトですから下手にアレンジ変えるよりは、オリジナルに近い形で歌いたいというのがあります。