INTERVIEW

中野裕太

見つけた「心が帰る場所」、静けさの中で向き合う「警視庁ゼロ係」


記者:木村武雄

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掲載:19年07月24日

読了時間:約10分

 俳優の中野裕太が、7月19日に始まった、テレビ東京系ドラマ『警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜SEASON4』(金曜夜8時〜)に新レギュラーとして加わった。演じるのは、“吸血鬼”という異名を持つサイコパスの神沼洋役。4人を殺し死刑囚として投獄されている凶悪殺人鬼で、怪しい謎多き男。物語の鍵を握る人物の一人だ。2008年に俳優デビューした中野は圧倒的な存在感で示す実力派俳優で、『新宿スワンII』や『男たちの挽歌2018』など話題作への出演が続く。その一方、日英伊など5カ国語を話すマルチリンガルであり、詩や絵画、音楽を趣味とする文学的な一面も持つ。この10年は「紆余曲折ありすぎて…」と苦笑いする彼だが、今は「ようやく深海から出てきた。純粋に作品と向き合えている状態」だという。そうした中で迎える本作。この難役とどう向き合い、演じるのか。【取材・撮影=木村武雄】

深海から出てきた…

――2008年に俳優デビューして最初の頃はバラエティ番組などで活躍されていましたが、その後は俳優にシフトされました。この10年、振り返っていかがですか?

 わちゃわちゃ、ぐちゃぐちゃという感じですね(笑)。気持ち的にも、いろんな意味で一端、深海まで潜り、そこであんこうと遊んでいるような時期もあって。でも、今はそこから浮上してきて、陸地に再び出てきた瞬間に、でも地に足をつけることをやめた、という感じですね。普通は「地に足をつけろ」なんでしょうが。若い頃は背伸びしていることも多かったし、背伸びどころかジャンプしていて、もう一回陸上にあがってきたこのタイミングで、むしろそのまま飛んでしまったらどうだろうと。とにかく、今はようやく深海から出てきましたね。

――いまは俯瞰して見られている状況?

 そうですね。とても静かですね。

――その先に何か見えていますか?

 いいえ。あまりそれには興味がないですね。感じることはあります。感覚として、「こう動いているのではないか」と。ただ、「ああ、こういうことなのかな」というのは感じられているけど、その先に何か見えているというのはないですね。見てもないし、見ようともしていないし。

――若い頃は背伸びをしていた、ということはその頃は、その先の何かは見えていたんですよね?

 漠然とはね、ありましたけど。

――それが紆余曲折を経て、深海に潜り、自然体にいられるようになった、ということですか?

 自然体というよりも、それまで自分の中で「ワー、ワー」と言っていたいろんな声が、一斉に黙ったという感じですね。例えば「こうやったら怒られるんじゃないか」、「こうしないといけないんじゃないか」、「緊張するな」とか、「嫌でもやれ!」とかね。そういういろんなやかましい自分がみんな黙ったという感じです。もしかしたらいつの間にか、いなくなっていたのかもしれない。

――ということは、今は目の前にある作品に純粋に向き合えている?

 そうそう、素直に。シンプルにもなったし。若い時って物事に触れる時、触れようとするその手が、すごく手汗をかいていたりする。もしくは手が震えていたり、または、かっこつけて、それに手袋をしていたりとか。直に、本当に素直に、物事の触感を確かめられない状態に自分で自分を追い込んでいたのかも。今は、ふっと直に触ってその手触りを普通に感じられるようになっていますね。これ伝わります?(笑)

――伝わっています。そうなれたというのは、弱い自分も強い自分も受け入れられているということですよね。手袋という虚勢を張る必要がない。

 確かにね、そういうことかもしれないですね。

――そう考えると今はとても良い時期にいるということですね。

 言われると確かにそうですね。自分なりのバランスはどこにあるのか、というのは分かってきた感じはあると思います。それはいろんな意味があって、肉体的にもね。

――私もそいう境地に立ちたいんですけど、行けなくて。

 でも、それは行かない方がいい時もあるじゃないですか。

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