内田理央の存在
そんな彼にとってドラマ初出演となった『向かいのバズる家族』。SNSに翻弄される家族の姿を描いた。那智は、ドラマの中核を担う篝(かがり)家にあって、主人公のあかり(内田理央)の弟で、家庭教師のバイトをしながら就職活動する薪人(まきと)を演じた。出演が決まった時は期待と不安が交差していた。
「ドラマ初出演でしたので、正直、ビビっている自分がいました。不安とワクワク感がありました」
就職活動で企業面接を受けるシーンでは友人にヒントを得た。「東京で就活している友人がいて、話をたくさん聞きましたね」
薪人の父・篤史役はTKOの木下隆行、母・奈子役は高岡早紀と錚々たる共演者だ。
「緊張しっぱなしで、話しかけるのはおこがましいと思っていました。でも木下さんからは『コミュニケーションを取るのが大事だよ』と。『自分から率先してしゃべりかけないと、自分はどういう人間か分かってもらえないから積極的に』とアドバイスを頂きました。役を演じるのも大切ですが、現場でのコミュニケーションも大事なんだなと実感しました」
現場の雰囲気だけではない。演技にも多くの学びがあった。例えば「会話の間(ま)」だ。
「セリフや間の使い方なども監督に多くを教えて頂きました。特に間の取り方。間の使い方によっては良いアクセントになりますから」
姉役を務める内田理央は事務所の先輩でもある。彼女からも大きな刺激を受けた。
「とにかく優しくて、包み込むような不思議な魅力がありました。演じ方についても『ジェスチャーを付けたほうがもっと伝わるよ』とかを教えてくれたり、主演としての現場での振る舞いや存在感はその背中を見ているだけでも刺激になり、勉強になりました。尊敬しています」
刺激は新たな目標も芽生えさせた。
「いつかは主演をやってみたい…」
音楽との接点
そんな那智は音楽との接点も深い。
高校2年生の時にピアノの弾き語りに挑戦した。親友の母親がピアノの先生だったようで、コブクロと中島みゆきの2曲を弾き語った。
そもそも那智の母親もその昔、バンドをやっていたようで、幼少の頃から音楽は身近にあった。T-BOLANや尾崎豊、徳永英明などなど。そして地元開催の『京都大作戦』には開催の度に訪れていた。
そんな彼の思い入れのある曲は、ヨルシカ、そして、ビートたけしの「浅草キッド」。
「『浅草キッド』は、映画『HANABI』で流れていて、心に染みて…今も大切に聴いています」
身近にあった音楽。いつかは歌ってみたいという気持ちもあるという。
そんな那智にとって音楽とは…。
「身近にある大切なものです。人を動かすこともできて、切っても切り離せない存在。思わず歌ってしまったり、体を動かしてしまったり、音楽の力はすごいと思います。そういう存在になりたい」
「誰にも分け隔てなく接することができ、良い影響を与えられるような役者になりたい」と語る那智は将来、海外でも活動していきたいと目を輝かせる。「テンションを上げるときにも聴きます」という音楽を携え、今、大海原を航海している。