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次世代に紡ぐ合唱曲「時を超える絆」必然だった出会い
――「時を超える絆」はなぜ合唱にしようと思ったのでしょうか?
KENTA 最初に少し触れましたが、去年秋に、長崎の浦上天主堂という教会でコンサートをやりました。3人で話し合い、メンバーやスタッフを含めたチーム全体として色々な絆に支えられてきた10年であることを実感して。それで絆をテーマに曲を作ろうと。3人で1曲作るということを今までやったことがなかったのでチャレンジでした。地元・佐世保にある聖和女子学院のコーラス部とご一緒できることになったので、合唱曲にして色々歌い継いでいってもらえるものになったらいいなということで、こういう形になりました。
そのなかで、長崎を代表するさだまさしさんに詞を書いてほしいという話があって、うまいことタイミングも合って、さださんが作詞をしてくださったんです。詞も素晴らしいと思いましたし、曲にも自信がありました。1回のコンサートで終わらせるのではなく何か形にできないか、と考えていたときにちょうど次のCDの企画も進み始めたので、これを軸に「絆」をコンセプトにしたCDを作ろうとなって。それであればこれを表題曲にしょうと。絆、合唱曲というコンサートがあって出来上がった曲、そしてアルバムです。
――学生が合唱として加わる意義は?
KENTA 僕ら3人が学生時代の友人でここまで繋がってきているという歴史もありますし、若い世代の子達が将来を思い描きながらも何かにぶつかって前が見えなくなったとき、前に進めるのは隣の友達や周りの恩師、家族だったりすると思うんです。その人達との心のコミュニケーションがきっとあると思うんですね。同じ苦楽を感じるような仲間との絆というものを今一度自分の歌、声として実感することによって、より明るい世界を広げることができたらいいなと。希望があって僕らもこれまで続けてこられたから、下の代にもそういったものを届けられることができたらいいなという思いが強かったです。
――曲を聴いて改めて若い人のパワーは凄いなと感じました。その世代ではないと出せない気持ちや想いがあると思います。
SUGURU これが授業の一環だったらCDに入ることはありませんでした。でも、その後もその子達が「TSUKEMENさんがいないけど、私達だけで歌っていいですか?」という感じで歌われていて。送ってくれたその時の動画に、涙して歌っている子もして。その熱意に心が動かされて、僕らのレコーディングは本当なら東京でやる予定でしたけど、ちょうどその前に西日本に行っていたので佐世保まで行こう、一緒に録ろうとなって。なので特にこの曲は思い入れが少し違いますね。
TAIRIKU 僕もその動画を観てグッとくるものがあって。それこそ完成度の高い合唱団に頼むという選択肢もあったと思うんです。長崎で遠いからレコーディングも難しいところがありました。でも、これだけ想いを込めていた動画を観たときに、音型と歌詞と、その子達の雰囲気に良い意味で磁場ができていたというか。凄く広がりがあるような、感動をする感覚があったので「むしろ是非一緒にやらせて頂きたい」という気持ちが凄く強くなって。何かを狙ったわけではなく、今回のCDのコンセプトも自然な形でそうなったという。聖和女子学院の子達とのコラボも自然な形でそうなって。それが自然と何かに導かれているような絆がそこに本当にあったんじゃないかなと思うくらい。必然なのか偶然なのか両方なのか、そこに導かれた感じで最初のタイトルになったのも必然だったのかなという感じはしますね。
KENTA 学生など若い世代の子達にとっては、僕らのスタイルでもある、ヴァイオリンとピアノでコンサートホールというのは、ポップスやロックのライブと比べ気軽に来やすいような雰囲気ではないと思うんですよ。「行っていいのかな?」「服装はどうしようかな」とか、色んな心配があると思う。でも今回、合唱で参加した学生の子達とはまた別な感覚があって、何かを一緒に作ることによって距離がグッと近づいたりするじゃないですか? これを持ってツアーをしたいと思ったんです。各地の若い学生さん達と心を一つにしていったら、その人達が歌う絆、この世に生まれてきた軌跡というものと言葉は大人が歌うよりも偽りがないというか、心から出る何か…その表現にみんな共感してくれるんじゃないかなというのがあって。今まで以上にみんなが一つになれるTSUKEMENのコンサートになるんじゃないかなと確信しながら、CDにも力を入れて作らせて頂きました。
TAIRIKU 振り返れば僕らはがむしゃらにやってきたので、正直ここまでこられると思っていなかったし、その場その場を一生懸命やってきて、その加え3人それぞれのお互いに気配りや話し合いがあってこそだったと思うんです。人生で一緒に歩いて行ける仲間や友人という絆は凄く大事だなと思って。今の時代はどんどん個人主義になっていって、人との関連性が薄くなってきているので、だからこそ今の若い方に絆の大切さみたいなものがちょっとでも伝えて、おこがましいですけど自分達の視点でバトンタッチしていってもらえたら、こんなに嬉しいことはないですよね。
――3人が目指す命題は?
TAIRIKU それぞれ感じ方が違うかもしれないんですけど、ある意味歌い手さんと一緒で、奏でる音が自分の分身となって伝えていく役割でもあるので、体温などが伝わっている瞬間は凄く嬉しいですし、また何か3人で話し合ってどんどん別のものに変わっていったりとか、そういう瞬間が増えると楽しいです。TSUKEMENとしてもお互い色々感じながらレベルアップしていけたらいいなと思いますけどね。
――各地の学生さんもツアーに参加するということですよね。地域によって学生のカラーも違うので、何か変化があるかもしれないですね。
SUGURU シャイな地域の子達もいれば慣れている子達も。地方によっては合唱の強い所も。そういう温度差はあるかもしれないですけど、合唱ってどこの学校でもやっていて、歌詞やその内容は置いておいて、人と協力して一つの目標に向かっていくことが素晴らしいことだと思うんです。僕らのコンサートだったらTSUKEMENと一緒に舞台上でやったということが残るんですよね。何もなく平穏に繋がっているのって繋がっていないのと同じなので、一緒に何かを頑張るということは大事だと思います。
――そういう点でも音楽は良いですよね。隣を意識して音や歌うわけですから。ところで真田組曲も収録されています。
SUGURU これも去年、「時を超える絆」と同じように、長野県上田市で1度コンサートをして。上田市は、僕らのことを知らないようなインディーズの頃から呼んでくれてコンサートをやった凄く恩がある場所です。そこでコンサートができるということで、3人から「上田市と言えば真田幸村でしょう!」ということで組曲を3人で書いて送りました。これも3人で作ったというメンバーの絆も絡めて作った楽曲ですね。
――それとカバー曲も収録されています。これはどのようにして選曲しましたか?
TAIRIKU 3人の趣味嗜好だけでカバー曲を選んでいた時期もあったんですけど、そうすると自分達の世代や好みに偏ったりするんです。最近は幅広い人に楽しんでもらいたいという思いが強くて、スタッフも含めて意見を出して、3人も自分達が気持ちを込めて弾ける曲をその中から選んで、良いバランスをみんなで時間をかけて選びました。
KENTA 良い曲だからやればいい、という話ではないんですね。この編成、この3人だからこそ新たな良いアプローチができるということが大事なので、「この曲だったら見えるな」とか、「こういう風に表現したら僕らが思い描いているようなものが伝わるだろうな」というのを見据えた上で選曲しています。
――改めて楽曲の良さを感じることもできますね。
SUGURU やっぱりそういう意味ではオリジナルで歌っている人が一番ですからね。僕らのオリジナル曲も、僕ら以上にどういう気持ちで演奏するかということを知っている人はいないので。今回のカバーも、もともとやっている人達には勝てないけど、別解釈でやるということに意義があるというか。
KENTA 名曲だけど、もう生で聴く機会がない曲ばかりじゃないですか? ベートーベンもジャクソン5もそうだし。TSUKEMENを通してそれが手軽に色々感じられるというのは良い部分だと思います。
TAIRIKU TSUKEMENの音楽を聴いて、音楽の熱意の着火剤になって盛り上がってくれたら嬉しいですね。
――そして、3人がそれぞれにあてた曲もあります。
SUGURU 人のために曲を書くというのはなかなか良いものですし、自分が曲をプレゼントされて嫌な気は全然しないので。むしろ嬉しい。ものとしては凄く良いです!
(おわり)
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