怖さの追求、その答えは「どこにでもある」と思われる、女子の関係にあるもの
――今作の台本を最初に読まれた時の印象は、どのようなものでしたか? ストーリーでは、単なる怖さだけでなくいろんなことを考えさせるテーマ性も見える感じもしました。
まさしく今おっしゃっていただいたように「実は一番怖いのは人間だよ」という話でもあるので、そういった意味では、単純にお化け的な怖さだけでなく、人間模様も楽しんでもらえるのがゴールなんじゃないかと、読み進めていくうちに思いました。最初は「どんな風に怖くなるんだろう?」と、表面的な部分を感じていたんですが。
――その「何が怖いのか」「どういう風にすれば怖いのか」という部分に関しては、演技の中ではどんな風に表現しようと思われたのでしょうか?
自分の役は「最後に裏切る」というのがこのストーリーの中での役割でもあったし、ストーリーの大きなポイントだったので、そこは大事にしないといけないと、すごく思っていました。
――映画を見ると、総合的に見て北原さんの演じられる早希という登場人物が、一番怖い人間じゃないか、という印象もありました。“真剣にあなたのことを心配している仲間だよ”という面を見せる一方で…。
そうなんですよね、一番悪い奴というか、ひどい奴(笑)。だからそこは絶対に大事にしないと、と思いました。早希ちゃんは八方美人な性格ですが、実は私と遠くないところがあるな、と思っていました。私は基本的に、誰の味方にも付きたいタイプですし(笑)。その意味では、気持ちは分かるところも多かったし、やりづらいということもありませんでした。
――一方、このストーリーでは、早希を取り巻く女の子のグループ内での人間関係がクローズアップされますが、こういった女の子グループに対して、どのような印象がありますか? 現代社会のダークな印象も感じ、男性の私から見ると、少しショックに思えるところでもあったのですが。
実は今日ここまで、何本か取材を受ける中でうかがった感想の中で、女性と男性ではこのストーリーに対する感じ方が違う、という印象を実感しました。女の方はあの映画を見た時に、分かるところがあって誰もが当てはまる部分がきっとあるから、怖いというより、別に「よくあるよな」という目線で見られているようですが、それが男性だと、今おっしゃったようにちょっと違う受け方をされているようで。だから本当に男性と女性で見る印象が変わってくるんじゃないかと思います。私としては、本当にどこにでもありうる話だと思いました。
――男性と女性の違いですか。もっとも心に残った点としては、このストーリーのキーパーソンとなる失踪した少女・由香という少女に関してなのですが、彼女が疾走して3年くらいの間、グループの人間は彼女に対しておこなったことを無視していたということになるわけですが、そんな中で早希は結構複雑な心理を持った人間という印象がありますが、役者目線でこの役は、どのようなイメージを描かれましたか?
一応主人公なんですけど、セリフが一番少ないんですよ(笑)。もしかしたら一番しゃべってないかも、と思うくらい。台本上に早希という名前はいっぱい出てくるんですけど、セリフは「…」みたいなことがすごく多くて、一方で結構受けのお芝居が多かったんです。周りは結構個性のあるキャラクターで、自分は逆にそれほど個性の強くないキャラクターだったので、この中で早希が主人公である意味、そして私が主演を張る意味を見つけるのは、難しそうだなと思いました。
――どういう風に演じる、というプランはあったのでしょうか?
ちゃんとすべてのセリフを受けよう、という形です。それはお芝居の基本ではあると思いますが、だからこそ、改めてお芝居を学ばせていただいたという気もします。みんなのお芝居に対してきちんと受けよう、という思いはありました。
――この作品では、その主演という立場と受けるという立場の両方で、北原さんご自身にも成長があるということですね。
そうですね。いろいろと考えながらできたと思います。
――具体的に高橋監督からは何か“こんな感じで行こう”みたいなアドバイスのお話はあったのでしょうか?
「この映画を参考にしてほしい」と映画の映像資料を事前にいただきました。監督はストーリーのイメージだけでなく、それぞれのキャラクターに対する細かい設定まですごくしっかり持たれていました。
実は台本に書かれていない部分で、このキャラクターは以前どうだったとか、さかのぼって中学時代はどうだったとか、みんなと顔を合わせていない期間にどういう風に過ごしてきたか、というイメージがすべて監督の中に明確に作り上げられていて、それを本読みの時に結構話してくださったんです。だからそれをもとにそれぞれが考えた人物像を乗せていくという形でした。その中で、私は最初から受けの芝居だから、という風に明言をいただいていました。