歌は体の一部
――やはり地道な活動が重要そうですね。地上波でも演歌、歌謡の番組が増えてくれたら嬉しいのですが。さて、猪俣先生のお話に戻りますが、猪俣先生はどのような方でしたか。
先生は、賑やかな事が大好きで、いつもお酒を飲んでいるような方でしたね。
――飲んでない時の方が少ない感じですか。
お仕事中の昼間は飲んでいなかったと思いますけど、お酒はずっと手に持っていましたね(笑)。本当にいつ曲を書いているのかわからない感じでした。先生が作曲するにあたって仰っていたのは、「頭の中で鳴っている音をハミングして、それを譜面に起こして、そのあとにピアノに向かって作っていく」ということでした。
――いつ作っているのかわからないというのも含めてミステリアスな感じがしました。
確かにミステリアスかも知れません。お酒を飲んで陽気な先生もいらっしゃいましたが、近寄りがたいオーラを放っている時もありました。静と動を持ち合わせた先生でしたね。
――今作には冬美さんの妹弟子にあたるマルシアさんとデュエットもされていますが、マルシアさんと猪俣先生のお話をすることもあるのでしょうか。
この間一緒になった時に話しました。その時に「先生が好きな曲は『君こそわが命』だよね」という話をマルシアにしました。というのも、六本木で先生が飲んでいらっしゃる時に2~3回呼ばれて行った時には、必ずこの曲を歌っていました。ですから、きっとこの曲が先生の好きな曲だと思っていたら、マルシアは「そうだよ、先生はこの歌が一番好きなんだよ」と言うんです。
――マルシアさんは知っていらしたんですか。
そうなんです。酔ってピアノにむかってこの曲を歌っている時に「俺はこの歌が一番好きなんだ」と言っていたのを、マルシアは聞いていたみたいなんです。
――冬美さんの予想も当たっていましたね。
当たっていましたね。それで、先生が喜んでくれると思って「大阪ラプソディ-」のデュエット相手にマルシアを誘いました。そうしたら快く引き受けてくれまして。
――同じ門下ですが、一緒に歌うのはこれが初めてというのは意外でした。
なかなか一緒になることがなかったんです。1回目はお互い探りながらのレコーディングだったんですが、2回目からはバッチリ息もあってね。
――同じ先生のもとで育ったことが証明できたレコーディングだったんですね。猪俣先生に今メッセージを送るとしたら、何と伝えたいですか。
まずは「ありがとう」ということを伝えたいです。そして、このアルバムを先生が聴いて下さって「私の歌はこれで良いのかしら」と、この歌唱で間違っていないかどうか返事を聞きたいですね。天国で喜んで下さっているとは思うんですけど。
――どんな返事がくると思いますか。
一つは「あばれ太鼓」でデビューして、「この路線でここまで来たか」と驚くのか褒めて下さるのかわからないですけど、その一方「まだまだだな」と仰ってくれる気がしています。
――どちらかというと、厳しい先生だったのでしょうか。
当時はあまり先生から歌唱指導はしていただいていなくて、ワンポイント指導みたいな感じでしたので、厳しいというイメージはないんです。レコーディングのときは「いいぞ!」と持ち上げてくれたり、「そうじゃない」とご指導頂いたり、本当に飴と鞭でした。そのワンポイントが今でも心に残っていて、それが“猪俣節”なのだと思いますし、マルシアもきっと同じだと思います。
――最後に冬美さんにとって、歌や音楽とはどのような存在でしょうか。
体の一部ですね。だって私から歌をとってしまったら何も残らないですもの。本当に他に何も取り柄がない女ですから(笑)。
――もし歌えないという状況になってしまったら、どうなされると思いますか。
2002年にお休みした時は、自分の歌に自信がなくて、歌ことが怖かった時期もありましたからね…。でも、今はすごく歌が歌いたくてしょうがないという感じなので、そうなったらどうなるのか自分でも想像出来ないですね。
――他の事を探すかも知れないですね。
でも、歌より好きなものは見つからないと思います。後世に残るようなものをとか、そんな大層な事は考えていないんですけど、これからもヒット曲を出せるように歌って行きたい、「夜桜お七」や「また君に恋してる」も、時代が変わっても色んな人に歌ってもらえたら嬉しいですし、これからもそう言った曲が出せるように頑張っていきたいです。CDが売れない時代ですけど、「歌えなくなる」ことを考えるより、そういう前向きな事を考えてこれからも歌っていきたいですね。
(おわり)






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