シンガーソングライターの川嶋あいが8月20日、東京・昭和女子大学人見記念講堂でワンマンライブ『Ai Kawashima 15th anniversary~BIRTH~』をおこなった。毎年恒例となっているライブで今回で通算16回目、デビュー15周年という節目の公演となった。代表曲「My Love」「旅立ちの日に…」やカバーでMr.Childrenの「抱きしめたい」、さらにダブルアンコールで亡き母へ捧げた「…ありがとう...」など全20曲を熱唱。「20周年を迎えられるように、これからも一歩一歩、歩んでいきます」と決意も新たにしたライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

この日に歌えることを幸せに思っています

川嶋あい

 ステージには三日月のオブジェが存在感を放つ。通常のバンドセットに加え、生ピアノやパーカッションなど多くの楽器がステージ上に配置されていた。開演時刻になりゆっくりとホールの明かりが落ちていった。アンビエントなサウンドにSaxの音色がメロディを紡ぐなか、川嶋あいがステージに登場。ライブのオープニングを飾ったのは「もう一度」。青く染まるステージ、しっとりと優しく会場を包み込むような歌声で聴く者の感情を揺さぶりかける。

 「この日に歌えることを幸せに思っています」今の心情を素直に告げ「サマーブリーズにのって」を披露。川嶋あいはハンドマイクでステージを右に左に移動しながら、観客とコミュニケーションをとるかのように歌唱。観客もそれに応えるかのように手拍子で楽曲を盛り立てた。

 MCでは「夏にこうして同じ時間を過ごして、ずっと続けていくのが目標です」と、これからもこのライブを続けていく意思を語ると、椅子に座りリラックスしたムードの中届けられたのは「マーメイド」。清涼感のある歌声と軽快なリズムのサウンドで心地よい空間を演出。そして、颯爽と駆け出したくなるような気持ちにさせてくれた「シャングリラ」。桃源郷へといざなう躍動するラテンアレンジで夏の一夜を彩った。

 ここで高校時代に弾き語りでストリートライブをおこなっていた時の話題に。「大変なときもあったけど、不思議と嬉しかったことも思い出します。雑踏の中でサラリーマンの人が立ち止まって聴いてくれたり、高校生が手売りのCDを買ってくれたり、『頑張ってね』の一言だけでいつまでも路上で歌っていられるような気持ちになったりして…。喜びや嬉しさは自分が踏み出したときに初めて知れるものかもしれない」と話し披露したのは「絶望と希望」。絶望の先、もしくは隣に希望があるというメッセージがひしひしと伝わってきた瞬間だった。

 当時を彷彿とさせる弾き語りスタイルで続けて「ごめん」を披露。会場にいる人達に寄り添うような歌声、言葉がひとつひとつ鮮明に聴こえてきた。ステージ後方には月と星が彩り幻想的な空間が広がり、静かにその歌声に耳を傾ける観客の姿も印象的だった。

 続いてはカバー曲を披露することを告げる川嶋あい。以前に自身のラジオ番組でカバーしてほしい曲のリクエストを募ったことがあったが、そのときは披露する機会がなかったという。そのリクエストから吟味して選ばれた曲はMr.Childrenの「抱きしめたい」。川嶋あいもリスペクトするMr.Childrenの名曲を情感豊かに空気を震わせていく。目を閉じれば楽曲の光景が思い浮かぶかのような凛とした歌声で魅了した。

20周年を迎えられるように歩んでいきます

川嶋あい

 一旦ステージを後にした川嶋あい。会場にはこの15年の歩みを振り返るかのように優しい音色でこれまでリリースしてきた楽曲のメロディが流れる。アニバーサリーならではの演出を味わいながら川嶋あいの登場を待ちわびる。そして、力強いピアノの旋律に導かれるように、衣装をチェンジした川嶋あいがステージに。披露されたのはI WiSHの「明日への扉」。この曲で多くの人が彼女のことを知ったであろう名曲。甘酸っぱい恋心を描いた歌詞は15年経っても色褪せることはない。そして、「後半戦、みんなスタンドアップでいきましょう!」と川嶋あいが投げかけ始まった「見えない翼」では、今まで座って堪能してした観客もスタンディング。川嶋あいも体をリズムに合わせ揺らしながらステージを右に左に移動しながら歌を届ける。サビで会場全体でシンガロングが響き渡った。

 「ジャングル」に続いて届けられたのは「My Love」。ステージ天井から回転するミラーボールが登場し、鮮やかに光を乱反射させ、高揚感を与えてくれた。軽快なビートに合わせ観客もタオルを回しライブならではの臨場感を堪能。続いて「盆踊りでもして夏の思い出を作りましょう!」と投げかけ届けられたのは「東京音頭」。ステージに“820盆踊り踊り隊”という浴衣を着た踊り子を呼び込み、川嶋あいも一緒に踊りながら夏の思い出を一緒に作り上げていく。会場が一気に夏祭りモードに染まったところで「ハレルヤ」を音頭のリズムアレンジで川嶋あいも「あっヨイショ!、あっソレ!」と声を響かせ盛り上げ楽しませた。

 ピアノの音色をバックに「みなさんと同じ時間を過ごせたこと、空間を分かち合えたこと心から幸せです。皆さんの365日の中でたった一日この空間を選んでくれてありがとうございます。デビューして15年、まだ15歳なのでまずは二十歳、20周年を迎えられるように、これからも一歩一歩、歩んでいきます。最後の曲は大好きな人や大切な人を思い浮かべながら聴いてもらえると嬉しいです」と告げ届けられたのは「Dear」。ドラマチックな楽曲に今の気持ちを乗せるかのように、透明感のある伸びやかな歌声を響かせ本編を終了した。

 アンコールを求める手拍子が鳴り響くなか、再び川嶋あいがステージに登場。「もっと!」、「I Love Your Smile」をパフォーマンス。「また来年のこの日も再びライブで会えることを、心の底から楽しみにしています。それまで明日からの一年間、皆さんにとって笑顔あふれる楽しい1年にしてください」と地元を福岡を離れるときに書いた卒業ソングで代表曲のひとつ「旅立ちの日に・・・」。情景が浮かぶような歌と間奏では鍵盤ハーモニカを奏でるなど楽曲に華を添えた。

 鳴り止まない手拍子にダブルアンコールに応える川嶋あい。この日は大切な人の命日だと話す。「大切な人との別れはいつやってくるのかわかりません。生まれてきた日付を知っていても、別れる時の日付は誰にもわかりません。だからこそ大切な人との時間をいっぱい貯金しておかないとと思います。私の大切な人はあっという間に、私のそばからいなくなってしまいました…。もしその人が目の前に現れたら、たくさん話したいことはあるけど、最後に一言この言葉を送りたいと思って16歳のときに書いた曲があります」と告げ、亡き母へ向けて書いた楽曲「・・・ありがとう...」を届ける。月明かりのようなスポットライトを浴びながら、感謝の気持ちを込めて丁寧に言葉を噛みしめながら届け、約2時間30分、全20曲を届けた『『Ai Kawashima 15th anniversary~BIRTH~』』の幕は閉じた。

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