yonawo、新進気鋭のバンドが新譜で見せた挑戦とは
INTERVIEW

yonawo

新進気鋭のバンドが新譜で見せた挑戦とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年08月12日

読了時間:約10分

 荒谷翔大(Vo)、斉藤雄哉(Gt)、田中慧(Ba)、野元喬文(Dr)の4人からなる福岡発・新世代バンドのyonawo(ヨナヲ)が8月11日、メジャー2ndフルアルバム『遙かいま』をリリース。ニューアルバムは5月に先行配信された「哀してる」、WOWOW オリジナルドラマ『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』OP曲「ごきげんよう さようなら」、バンド結成当初に披露していた楽曲「浪漫」など全12曲を収録。

 「哀してる」は、音楽プロデューサー 冨田恵一(冨田ラボ)による初のバラード曲。7月に配信された「闇燦々」は、亀田誠治によるプロデュース曲となっており、バンドメンバー以外の人が多く携わり完成した1枚に仕上がった。 インタビューでは前作『明日は当然来ないでしょ』からの変化、新作『遙かいま』の制作背景に迫った。【取材=村上順一】

外側に向かった『遙かいま』


――早いペースでのアルバムリリースになりましたね。

荒谷翔大 僕は割と曲を書き溜めるタイプなので、前作『明日は当然来ないでしょ』から9カ月くらいですけど焦って作ったという感じではなくて。前作に収録されなかった曲も今回入ってます。

――それぞれどんな1枚になったと思いますか。

野元喬文 前作は自分たちで完結した作品でした。今作はプロデューサーに入っていただいた曲もあり、ミックスエンジニアも色んな人にお願いして完成した作品です。加えて楽器テックの方に入っていただいたり、友達の声をレコーディングしたり、ストリングスアレンジもNABOWAの山本啓(ヴァイオリニスト)さんにやっていただいたりと、自分たち以外の人が沢山関わった作品で、僕としてはおもちゃ箱みたいな1枚になったと思います。

――田中さんはいかがですか。

田中慧 外に出ていろんな人と出会って自分を知ることが出来たような感覚がありました。今回、冨田ラボさんと亀田誠治さんに一曲ずつプロデュースしていただいたのですが、荒ちゃんが作ったデモを聴いて、お2人がアレンジされたものが戻って来るんですけど、自分では考えつかないようなフレーズだったので、すごく勉強になりました。亀田さんのフレーズをコピーしていく中で僕が勘違いしてオクターブ高く演奏してしまったんですけど、それを聴いた亀田さんが「それが僕のテイストになっているからそれで行こう」と言っていただけて、自分でもそれがらしさに繋がっていることに気付いたりしました。

――亀田さんはベーシストなので、“ベース談義”とかされたりしました?

田中慧 談義というほどではないかもしれませんが、僕がいまベースで和音を奏でる事にハマっていて、亀田さんに和音の響かせ方のコツを教えていただいたりしました。

――斉藤さんはどんな1枚になったと感じていますか。

斉藤雄哉 プライベートスタジオを作りたいと以前から思っていて、今年の1月についに完成しました。そこで収録曲の半分以上の楽曲を制作したのですが、DIY感が出せたんじゃないかなと思います。ギターは8割くらいこのスタジオで録ることができましたし、やりたかった事が出来た1枚になったと感じています。

――ちなみにプライベートスタジオ製作でこだわったところは?

斉藤雄哉 こだわったというより、手間をかけたところなのですが、壁です。4人で漆喰を塗りました。音がどうこうではなく完全に気分的なところなんですけど(笑)。音の面では、導入する機材はこだわりました。

――荒谷さんはどんな1枚に?

荒谷翔大 前作も1曲1曲に挑戦はありましたが、今作は質の違う挑戦が出来たと思います。プロデューサーを立てたのもそうですし、「闇燦々」では今までの僕らにはないグルーヴィーな曲になっていたり、「哀してる」では、敢えて歌謡曲っぽいものにチャレンジしたいと思って制作しました。自分でテーマを作って制作に臨んだ曲が多かったので、挑戦が詰まった1枚になりました。

――ポエトリーが付属していますが、これも挑戦の一つ?

荒谷翔大 前回は短編小説を書いたのですが、今回は凝縮してポエムを書いてみました。自分の中でポエムの基礎知識がなかったので、詩と呼んでいいのかわからないんですけど。アルバムをより詳しく説明するためのものだったので、『遙かいま』に対する考えが伝わるかどうかが肝でした。

――『遙かいま』というタイトルにはどんな想いが込められていますか。

荒谷翔大 曲が出揃ってから考えたタイトルなのですが、アルバムのイメージがある程度決まっていた中でそれらを表現する言葉を探しました。それで「遙か」と「いま」という言葉がすごく合うなと思ったので融合させて。

野元喬文 ちょうど季節が春の時にタイトルを考えていたみたいなんですけど、買い物をしている時に荒ちゃんが「遙かいま」とボソッと呟いて。僕は「春か今」と言ったんだと勘違いして。「今は春だよなあ」とか思って、スルーしてしまったんですけど、後から聞いたらアルバムタイトルの事だったという。

一同 (笑)。

荒谷翔大 ちょっとみんなの反応をみたかったので、呟いてみたんです。

――アルバムは時間というのもテーマにあるんですよね?

荒谷翔大 はい。自分が捉えている時間の流れの感覚、昨日とか明日といった物理的なことではなくそう言ったものに影響を受けない時間を表現できたらいいなと思い、その感覚をタイトルに落とし込みました。未来と現在を、一つの言葉でうまく表現できたなと思います。

アルバムの新しい試みとは

――今作での皆さんの新しい試みをそれぞれお聞きしたいです。

野元喬文 プロデューサーが入っていただいた事によって自分が今まで叩いたことがないようなフレーズもありました。「闇燦々」のフィルインは自分で考えたフレーズなんですけど、亀田さんがフィルインを変えてみようとのことで、何パターンか試して一番良かったものを選んだのですが、臨機応変に対応出来たことと、それがみんなに気に入ってもらえて嬉しかったです。あと、「sofu」のドラムパターンはすごく不思議な感じで面白いです。今回は機械的なところと生の融合を目指していたので、オケの音を敢えて外して、クリックだけでドラムを叩いたのも僕の中では挑戦でした。

田中慧 挑戦とは違うかも知れないのですが「はっぴいめりいくりすます- at the haruyoshi/Take 5」はクリックを聞かずにバンドで同録しました。間違えてもパンチイン※もしないというルールで、ライブのような感覚でやったのは新しかったです。(※ 再生の状態から瞬時に録音状態に移行すること)

――なぜこの曲は一発録りにしようとおもったのでしょうか。

荒谷翔大 この曲はもともと弾き語りでデモを録っていたのですが、セッションっぽい、ライブのような感じで録れたら良いなと思って。

斉藤雄哉 部屋でやっている感じが欲しかったんです。パンチインをして修正していくとどんどん綺麗になっていってしまうので、納得のいくまでテイクを重ねて。

――それでTake 5なんですね。この“at the haruyoshi”というのは?

斉藤雄哉 プライベートスタジオがある福岡の天神にある地名です。そこで録音したということを記しています。

――ところでタイトルはなぜ平仮名なんですか。

荒谷翔大 ひらがなが可愛いなと思ったのと、はっぴいえんどのようなニュアンスでつけました。(※はっぴいえんどは細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂によって結成されたバンド)

――確かに可愛いです(笑)。田中さんが今作で印象的な曲は?

田中慧 「sofu」と「夢幻」は原点回帰と言いますか、yonawoの初期の要素もあり、それを今の僕らでアップデート出来たと思うので、気に入っています。すごくシンプルな構成になっているんですけど、緩やかな流れがあって、クラリネットが入っているのも気に入っているポイントです。

――「sofu」のタイトルの由来は?

荒谷翔大 もともとは歌詞にもあるように「so who?」だったんですけど、僕の行きつけのカフェが「そふ珈琲」という名前で、それをタイトルにしてみました。表記としてローマ字にしたのは、アルバムに曲名が並んだ時に見栄えがいいなと思って。10曲目に収録されている「beautiful Day to Die」の“D”を大文字にしたのも、デザインとして見栄えがいいなと思って大文字にしました。

――斉藤さんの挑戦だった曲は?

斉藤雄哉「The Buzz Cafe」です。この曲はyonawoで初めて僕と荒ちゃんの2人で共作した曲で一つの挑戦でした。あと、「はっぴいめりいくりすます」は僕がミックスダウンを担当しました。インディーズでの作品は僕がやっていましたが、メジャーでミックスしたのはこの曲が初めてです。

――「The Buzz Cafe」のイントロの半音で下がっていくコードワークはクールですね。

斉藤雄哉 ありがとうございます。あれはDm9から6フレット分半音で下がっていくんですけど、この雰囲気は鍵盤ではなかなか出せないギター特有のものになっていると思います。

――ちなみに斉藤さんはエンジニアもできるんですか。

斉藤雄哉 もともとはプレイヤー志望だったのですが、自分たちの楽曲をレコーディングしたいと思い、エンジニアの勉強を2年間しました。プロのエンジニアを目指しているわけではないのですが、アルバムをミックスしたいという気持ちは当時からあって、今後もチャンスがあればミックスしたいなと思っています。

ライブは4人のみで鳴らす音の面白さを届けたい

『遙かいま』ジャケ写

――荒谷さんはご自身の中で印象的な楽曲は?

荒谷翔大 4曲目の「浪漫」を収録できた事です。この曲はバンドを結成して一番最初にみんなで練習した曲で、バンド初期の頃からライブで演奏していた曲でした。友達や当時のライブを観にきてくれていた人たちにはお馴染みの曲で、そろそろ音源化して欲しいとリクエストしてくれる人もいて、このタイミングしかないなと思い収録しました。あと、「闇燦々」はマイケル・ジャクソンの「Rock With You」のようなグルーヴをyonawoでやったらどうなるのか、というのをテーマに挑戦した曲でしたし、最後に収録されている「美しい人」は対話形式の歌詞になっているんですけど、それは「木綿のハンカチーフ」から影響を受けています。

――「浪漫」はなぜこのタイミングで?

荒谷翔大 1stアルバムに収録する案もありましたが、たしか慧がちょっと1stにいれる雰囲気じゃないと当時話していて、結果流れてしまって。

田中慧 僕らはエレピがメインでそこに打ち込みというのがサウンドのカラーとしてあったと思うんです。でも「浪漫」は荒ちゃんがギターボーカルでロックバンドのような雰囲気の時代にやっていた曲だったので、これを今のyonawoとして音源化するにはどうしたらいいのか悩んでいました。

荒谷翔大 ピアノもちょっと弾けるようになってコードワークの知識もついてきたので、今なら「浪漫」を今の自分たちで表現できるなと思い、今回収録できました。

――ジャケット写真も目を惹きますね。

野元喬文 ジャケットは前作からの繋がりもあります。今回のアートワークはコラージュ作品で、カメラマンの濱本奏さんが撮影した写真の中からジャケ写に合うようなものを選んでいただいて、さらにそこからメンバーみんなで選びました。その中に瞬間の輝きを収めるというテーマで撮影された写真があって、それは車のミラーに反射した光の写真だったのですが、何かが閉じ込められているような感じがして。

――印象的だったんですね。

野元喬文 はい。その写真はすごく儚いんですけど、その儚さ以上に輝きがあって。そのイメージを壊さないようにコラージュしていきました。ジャケットの人に見えるモニュメントは前作の赤ちゃん、その私という存在がここに生き続けているイメージなんです。インスピレーションが湧いて短時間で作業も終わって、メンバーも気に入ってくれて嬉しかったです。

――バンドにデザインもできる方がいるというのも、強みですね。

荒谷翔大 野元はドラムを叩く前から絵を描いていたので、センスがあります。なので、僕らのアートワークは全て彼が手がけていて。

――今回、初回限定盤としてDEMO音源が付属するものもありますが、このアイデアは?

斉藤雄哉 3パターンCDを作れることになって、ライブDVDを付けることはすぐに決まりました。もう一つ何にしようかと考えた時にDEMO音源をつけるというのは面白いなと思って。この音源には「Adieu」とかリリースする予定だった曲も入っていて、このタイミングで聴いてもらうのも面白いかなと思いました。

――DEMO音源はたくさんあると思うので、選ぶのも大変だったのでは?

荒谷翔大 選んだ基準はDEMOと完成したものの振り幅が大きい作品を敢えて選びました。完成形を知っている人が聴いたら、そのギャップを楽しんでもらえるんじゃないかと思いました。

――聴き比べて見て欲しいですね。最後に今後の展望を教えてください。

荒谷翔大 まずは10月からスタートするツアー『yonawo 2nd full album「遙かいま」 release one man live tour』です。皆さんはもちろん、僕たちも楽しめて満足がいくステージになるように仕上げていかなければいけないと思っています。前回のツアーでは同期を使用してクリックに対するグルーヴを追求していましたが、今回は同期を使わずに4人のアンサンブルをよりフォーカスしたいと思っています。音数が少なくなるので個々の音がより聴こえてくると思いますし、4人のみで鳴らす音の面白さを皆さんに届けられたらいいなと思っているので、楽しみにしていて下さい。

(おわり)

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