ソロツアー最終公演を成功させたTAKURO

 GLAYのギタリストであるTAKUROが2月28日に、東京・Zepp Tokyoで全国ソロツアー『Journey without a map 2017』の最終公演をおこなった。 同ツアーは昨年12月に発売したキャリア初のソロ・アルバム『Journey without a map』を引っ提げ、2月2日の東京・品川ステラボールを皮切りに全国9カ所、15公演をおこなうというもの。ピアノ、サックス、ベース、ドラム、そしてTAKUROのギターによる編成でソロアルバムの楽曲を中心に全12曲を披露。「GLAYにギタリストとして何か持ち帰りたい」という想いで常にプレイしてきたいうTAKUROがそのツアーの有終の美を飾った。GLAYで見せるそれとは違った、大人の色気を醸し出した演奏で観客を魅了した。

ギタリストTAKUROの旅の終着点

TAKUROのライブの様子

 この日は2月末日。日中は厳しい寒さは和らいできているものの、日が落ちるとまだ肌寒さを覚える。会場では、ファンが寒さを凌ぐ上着を脱ぎアルコールなどを片手に開演を待ちわびていた。普段は立見席として開放されている1階も、この日はTAKUROがソロ作について「グラスを傾けながら聴いて欲しい」と語っていたコンセプトからか、椅子が敷き詰められ、バーさながらの雰囲気を纏っていた。

 会場が暗転し、ステージに安全地帯やゆずなどのツアーにも参加する川村ケン(Pf)、全国の音楽フェスなどにゲスト参加し注目を集める前田サラ(Sax)、清竜人25の作品にも参加し、ソロアルバムもリリースしている岩永真奈(Ba)、そしてGLAYや氷室京介のサポートドラマーとして活動している永井利光(Dr)がそれぞれ配置につく。永井のドラミングから前田のソロプレイでステージは始まった。

 川村のピアノと岩永のウッドベースが加わり、会場はまるでジャズバーと見まがうほどノスタルジックな香りが漂った。そのステージに右手を挙げながらTAKUROが登場、観客は拍手で主役を迎える。そしてTAKUROがギターを抱え演奏に加わると、観客から手拍子が巻き起こり「Lullaby」の印象的なTAKUROのギターリフが心地よく会場に響く。

 ステージに青い照明が満ち、悲し気なピアノサウンドに哀愁を漂わせたギターリフをTAKUROが乗せ「Autumn Rain」が始まると観客は静かに耳を傾ける。緩急のあるプレイが独特のグルーヴを生み、飽きさせない。

 TAKUROは「こんばんは。GLAYのTAKUROです! 夢のようだな…」と満席の会場を眺めながら感傷に浸った。そして前日におこなわれた同会場での公演にLUNA SEA、X JAPANのSUGIZO(Gt.Vn)がゲスト参加したことを明かした。「スギ様はオンもオフもないね(笑)」と振り返りながら、「LUNA SEAはバンドメンバー全員が自分の思いおもいの演奏で命を燃やしているというか。それを間近で観れて、嬉しかったぞぉ、何かいい匂いしたぞぉ」と独特の語りで会場を笑いで包んだ。

 会場を和ませた後は、岩永のベースソロで再び音楽の旅へ観客を誘う。怪しげで幽玄的なギターサウンドが特徴的な「Istanbul Night」では、前田とTAKUROは向かい合いながらTAKUROのギターリフを前田が輪唱のように奏で、グルーヴを加速させていく。

 さらに会場の天井から下がるミラーボールが回り、怪しい夜の雰囲気を盛り立てる。川村のピアノを激しく打ち付けるプレイの中、TAKUROはギターを持ち替える。くぐもった温かみのあるサウンドでTAKUROがバンドサウンドをリードする。

 スカ調のリズムが心地よく弾む「Fear & Favor」では再び観客から手拍子が巻き起こった。それに合わせ、バンドメンバーも楽し気に顔を見合わせながら踊るように演奏する。一体感のある熱気が会場を包み込んだ。

凄腕プレイヤーのサウンド

TAKUROのライブ会場の様子

 ここからそれぞれがソロ回しで、存分にその存在感をアピールする。川村の撫でるような繊細なものから、激しくたたきつけるような荒々しいものまで、ピアノという楽器の持つ様々な表情を惜しげもなく披露する演奏にTAKUROは「音楽的な意味で凄くバックアップしてもらいました」と川村への賛辞を述べた。

 岩永はスラップ奏法で自在に低音を操った。ファンキーな演奏からシンプルでもインパクトのあるロックな演奏までベースの可能性を極限まで引き出すそのプレイに観客も魅入っていた。

 前田はTAKUROのギターとデュエットの様なかたちでサックスを披露。TAKUROも「今回彼女のサックスなしにはこのステージも語れない」と絶賛。どれだけ息が続くのかと驚くほどの、熱くて長いソロプレイに観客からも喝采が送られた。

 TAKUROは「Toshi(永井利光)の生き様を感じて欲しい」と話し、永井のドラムソロへ。ドラムセットを余すことなく使い、ありとあらゆるビートを刻んでいく。タムを高速で叩き、シンバルで色を添える。緩急をつけ細かなスティック裁きから、激しく会場を揺さぶるようなビートまで、リズムの向こう側を垣間見れたような瞬間だった。

 そして、中国の古楽器演奏グループである女子十二楽坊に提供した曲としても知られる「流転」を披露。TAKURO自身「オリエンタルなサウンドを意識した」と話す、どこか懐かしいサウンドで観客の心を掴んでいる様だった。

 演奏を終え、TAKUROは普段支えてくれる家族、スタッフ、ファンへの感謝を述べた。そして「故郷は何者でもない自分を思い出させてくれる大切な場所」であると言い、彼の故郷である北海道・函館市をモチーフに作った楽曲「函館日和」を演奏。極寒の地でありながら、どこかその中にも行き交う人や、豊かな自然から伝わる温かみのようなものを表現したようなギターリフが印象的だ。TAKUROは「どうもありがとうございました」と礼を言い、本編を終えた。

GLAYに持ち帰るもの

 鳴り止まない拍手はそのままアンコールへと繋がった。TAKUROは再びステージに現れ「うれしいぜ。これはアンコールというやつか(笑)」と照れながら歓声に応えた。さらに「ソロツアーは今日で終わりなんですけど…GLAYはいよいよ動くってことで。4月にツアーが始まります。アルバムももうすぐ完成でございまして」とGLAYの活動について言及。

GLAYとは違うギタリストの顔を見せたTAKURO

 さらにTAKUROは「いい音楽を作って、誰かの力になれればいいと思っているんですけど、東北、九州などまだまだ復興には時間が必要です。GLAYが必要とされれば、日本全国どこへでも、活動を止めることなく飛んでいきたいと思っています」と自身の音楽活動についてその想いを語った。

 最後はソロアルバムの表題曲である「Journey without a map」を演奏。TAKUROが「自分のギタリストとしての全てが詰まっている気がする」と語るように、全身全霊のプレイでギターをかき鳴らす。長いチョーキングから始まるギターソロも思う存分にギターを鳴かせ、その渾身のプレイに引っ張られるようにバンドメンバーが情熱的なプレイでそのサウンドに厚みと彩りを加えて、この日最高の盛り上がりの中ステージは幕を引いた。

 「GLAYにギタリストとして何か持ち帰りたい」常々そう思いながらソロでも活動していたというTAKURO。GLAYは4月からは全国ツアーが始まり、そして新譜の完成も間近だという。1ヵ月に及ぶツアーを経て、ギタリストとして得たものが今後GLAYの音作り、演奏でどのように発揮され、またそれを迎えるメンバーとどのような新たな化学反応があるのか、その成果を見るのにそう時間はかからないようだ。(取材=松尾模糊)

セットリスト

『Journey without a map 2017』

2月28日Zepp Tokyo

01.夢の途中に
02.Lullaby
03.Autumn Rain
04.Istanbul Night
05.Francis Elena
06.Fear&Favors
07.Guess Who
08.RIOT
09.流転
10.函館日和
Encore
EN1. Northern Life
EN2.Journey without a map

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)