Mizki「当時とのギャップを感じてもらえたら」“アナ雪2”シンデレラガールの今
INTERVIEW

Mizki


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年09月24日

読了時間:約12分

 シンガーのMizkiが9月20日、新曲「River」を配信リリースした。2019年に中元みずき名義でディズニー映画『アナと雪の女王2』の日本版エンドソング「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」のシンガーとして抜擢され、『第70回NHK紅白歌合戦』に出場するなどシンデレラガールとして話題に。2021年1月20日「Crazy For You」 を先行配信。4月に敬愛するAIによるボーカルディレクション、世界を舞台に活躍するダンサーRIEHATAによる振付など、一流のクリエイターがバックアップしたデビューアルバム「Bet on me」をリリースした。

 そして今回りリースされた新曲「River」は切なさの中にも光を感じさせるミディアムバラードでiri、chelmico、Awesome City Clubなどに楽曲提供、アレンジで参加している気鋭のクリエイターESME MORI(エズミモリ)が作詞/作曲を担当している。インタビューでは、シンガーを志した幼少期の頃の話から、アーティストとして表現したいこと、Mizkiの今に迫った。【取材=村上順一】

自分の声を探すためにしていたこと

Mizki「River」ジャケ写

――歌の世界に興味を持った5歳の頃を振り返るとどんな幼少時代でしたか。

 小さい頃から音楽が凄く好きでした。両親も音楽が好きで、寝る時は必ず平井堅さんを聴いていたのを覚えています。それで、歌やダンスを習い始めて、歌手になることも当たり前になっていました。保育園のお遊戯会も一人で前に出てど真ん中で歌って踊ったりしていました。園長先生には「絶対歌やダンスをやったほうがいいよ」と言ってもらえて。

――園長先生に歌やダンスをすすめられたことはどう思いました?

 自分ではただ歌やダンスが好きというだけでよくわかっていなかったのですが、母がスクールに入れてくれて、そこでダンスをした時に凄く楽しかったんです。だからそこで「もっとやってみたい」と思えたのだと思います。

――その時の好きだった音楽は?

 当時「マツケンサンバ」と、大塚愛さんの「さくらんぼ」を保育園で歌って踊っていたので、それを家で披露したりして。

――ノリが良い明るい曲が好きなんですね。広島から大阪のスクールに通っていた時期がありましたよね。お母さんとおばあちゃんに送り迎えしてもらっていて。

 最初は広島から大阪まで車で送ってもらっていました。やっぱりそれは大変だったこともあって、おばあちゃんが「大阪に行ってきな」と背中を押してくれたのがきっかけで家族で大阪に住みました。学校に通いながらレッスンに行ってという感じのライフスタイルでした。

――送り迎えをしてもらっていた時期の移動時間は何をしていました?

 お母さんが疲れないように隣で歌っていた気がします。とは言いつつ、疲れて寝ていた時間も多かったと思います(笑)。

――大阪時代で印象的だった出来事は?

 大阪に行って「こんなに凄い子がいるんだ」とビックリしました。私は負けず嫌いなので「もっと頑張らないと」と凄く思いました。スクールでは礼儀や挨拶など色々と学んで、とてもいい経験になりました。

――先生や先輩などとの会話で心に残っていることは?

 それまでの私は「こう歌ったほうが上手くなる」という考え方でした。でも、レッスンを受ければ受けるほど良くなるわけではなく、教わった先生の影響を受けて似た歌い方になってしまうこともあって「Mizkiの場合はもっと自分の声を知って、自分の個性を磨いていったほうがいい」とアドバイスを頂いたことがすごく印象に残っています。

――技術より大切なこともあると知ったような?

 そうです。当時はどれだけ上手く歌うか、音程を外さないように、ということばかり気にしていたのですが、色んな声の出しかたを学んだり、自分はこういう声で歌ったほうがいいということに気付いたので、そこから世界が変わった感じがしました。

――自分の声を探すためにどんなことをしましたか。

 洋楽など、これまで自分が挑戦したことのない色んな曲を歌ってみました。アーティストそれぞれの歌いかたを勉強していました。

――様々な歌を歌っていくなかで、自身の歌い方のヒントになったアーティストは?

 Superflyさんのパワフルな感じが似ていると言ってもらえて、Superflyさんからヒントを得ていたと思います。自分の歌と比べて、どうしたらこういう声が出るのかとボーカルの先生に聞いたりして分析していました。

――分析してわかったことは?

 Superflyさんの声を聞くだけで元気が出るんですけど、それは声の太さと、高音を出した時の深く突き刺さる感じが影響しているんだなと思いました。

――パワフルさといえばMizkiさんはAIさんの全国ツアーを一緒に回っていましたが、それはどんな経験になりましたか。

 AIさんの歌はもちろんなのですが、近くにいるだけで元気もパワーももらえるんです。誰にでも凄くフレンドリーで、ずっと笑顔で声のトーンも明るくて。本番後の疲れている時でも「今日お疲れ! めっちゃよかったよ!」みたいな感じで言っていただけたり、そういった気遣いだったり、歌だけではなくて人間性が凄いなと。AIさんはずっと憧れのシンガーで、ああいう人になりたいと強く思いました。

――2019年は『アナと雪の女王2』の日本版エンドソング「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」のシンガーに抜擢され、スタートダッシュが凄かったですが、『第70回NHK紅白歌合戦』はいかがでした?

 色んな歌番組に出演させていただいたんですけど、紅白は他とは違う感じがありました。ステージも大きかったし、どこかピリッとしていて。そこに立ったら孤独感と怖さもあって足も震えていたんです。

――相当緊張されていたんですね。

 はい。でも、紅白のステージに立てることはなかなかないので、緊張しているという言葉が自分から出た時点で負けた気がしていて。なので、その日は一切「緊張している」とは言わずに「いけるいける!」と一人念じていました(笑)。でも、出番が終わったあと足の力が抜けて立てない、みたいな感じでした。

――反響も凄かったのでは?

 ケータイがずっと鳴っている感じでした。紅白が終わってすぐに家族に連絡したらおじいちゃんとおばあちゃんが「すごくよかった」と泣いてくれて。私もすごく嬉しかったです。

――改めて『アナと雪の女王2』での活動を振り返ると、Mizkiさんにとってどんな時間でした?

 夢のような時間で、本当に現実だったのかなと思うくらい怒涛に流れていった時間でした。そのなかでもたくさん学んだこともあります。メンタル面も鍛えられましたし、自分でも気づかなかったくらいのパワーが出ていたと思います。私は緊張すると失敗するんですけど、大きな失敗をすることなく最後まで出来たことは、自信に繋がりました。

――ちなみに、紅白の出演シーンは録画で観ました?

 恐る恐る観ました(笑)。実は緊張しすぎてあまり記憶がないので「ちゃんと歌えているのかな?」って。映像を観てまた紅白に出たい、このステージに戻りたいと思える刺激を受けられるんです。

――メジャーデビュー前に抜擢されたこともあり、プレッシャーも凄そうですね。

 自分のオリジナル曲ではないから、失敗したら『アナと雪の女王2』の映画自体がダメになってしまうんじゃないかとか、そういうことばかり考えちゃってプレッシャーは凄かったです。でも、こんなことは本当にないと思うし、ディズニーの方に選んで頂いたので、その自信だけでなんとか乗り切れたんじゃないかなと思っていて。

ガラッと変わりたい

――Mizkiさんとしてメジャーデビューされましたが、今度は別のプレッシャーも?

 今度は自分自身を表現しなければいけないし、自分はこうなりたいんだという表現や曲の方向性などを多く考えるようになりました。色んな人が関わってレコーディングをしたりMVを作ったり、力をくれているので自分ももっと頑張って、また紅白や『ミュージックステーション』などに出られるように頑張らなければと思っています。

――紅白出場後はメジャーデビューするまでの準備期間だったと思われますが、どんなことをしていましたか。

 デビュー曲を「踊れる曲にしたい」ということで、色んな曲を歌って試していました。どういうビジュアルでやるのかとか、すごく考えて。

――意識としてはどんな気持ちで?

 ガラッと変わりたいというのがありました。名前も中元みずきからMizkiに変えたのも雰囲気を変えるためでもあったし、自分が上を目指して行く中でMizkiのほうが合っているのではないかって。それだけでも雰囲気が全然変わるので髪色も金色にして、踊って歌ってと、恰好いい女性というのがまさ私が見せたい雰囲気だったので、それに向けて色々話しました。

――アーティスト名について、「Mizki」は、「みずき」をローマ字表記した場合は「Mizuki」と、「u」が含まれるところを敢えて抜いたのには理由があるのでしょうか。

 見た目と文字数的にも「u」がないほうがいいのではないかと、色んな名前の案があるなかで決めました。名前の候補としてほかには「ミズキー」とか最後を伸ばすのもありました(笑)。

――さて、ソロデビューして時間が多少経ちましたが、活動していてどんな実感がありますか。

 『アナと雪の女王2』とは雰囲気が全然違うので、まず家族にびっくりされました。周りの人からも全然雰囲気が違うし恰好いいねと言ってもらえて凄く嬉しかったです。自分はこういうイメージで行きたいと思いましたし、オリジナル曲が出てそこで色んな人に「よかった」と言ってもらえると嬉しくて、また次に向けて色々頑張ろうと思えていて。

――クールなスタイル、雰囲気への憧れもあったのでしょうか。

 クールで恰好いい人が好きで、ガールクラッシュのような存在になりたいと思っています。特にパフォーマンスをする時はキリッと恰好よくなるアーティスト、みんなから憧れられる人になりたいと思っています。

――自分の見せかたの課題としては?

 自分にしかない個性を磨いていきたいです。ダンスのスキルを磨くこと、ファッションやヘアスタイルなども常にチェックしているんです。

ギャップを感じてもたいたい

――デビューアルバム『Bet on me』は直訳すると「自分に賭ける」という意味で、覚悟を感じました。

 『Bet on me』は、私の気持ちを表しています。5曲それぞれのカラーが出ていて、どんな雰囲気にも染められるし、やりたい自分の方向性が詰まった1枚になったと思います。コロナ禍でみんなテンションが下がっていると思うんですけど、これを聴いてみなさんに元気を出してほしいなと思い作った作品なんです。

――Mizkiさんの意見もかなり反映されている?

 楽曲を制作する時からどんな曲がいいのか、歌詞も自分の歌いたいことを伝えながら作っていったので、思い入れの詰まったアルバムになりました。

――みなさんにどのように届いたら嬉しいですか。

 『アナ雪』の頃から一皮むけて、こんなこともできるんだ、という当時とのギャップを感じてもらえたら嬉しいです。中元みずきの時では踊れるイメージはなかったと思うので、踊れる私も見てもらいたいです。

――歌とダンスが揃ってMizkiという感覚が強い?

 そうです。自分の強みを考えた時に、歌だけではなく、ずっとやってきたダンスももっと魅せることができればと思いました。今歌って踊れるソロシンガーというのはあまりいないと思うので、そこを目指したいんです。

――『Bet on me』収録曲の「Stay」はAIさんがボーカルディレクションをされていますね。歌の面での発見としては?

 学べることが多くて表現の幅が広がりました。色んな方の考えがあって、自分一人でレコーディングしていたらこんな風にならなかったと思います。<stay stay stay stay>の4回の歌いかたも「ここだけ抜いてみたら?」「最後だけビブラート入れてみては?」とか、アドバイスをいただきながら歌いました。

 他にもフェイクやハモりもその場で試しながらやりました。色んなアドバイスをいただいて、その時の数時間で学べることがたくさんありました。AIさんは憧れの人だったのでガチガチに緊張していたんですけど、AIさんのハッピーパワーをもらって頑張ることが出来ました。

微笑みながら優しく歌うように心掛けた「River」

――そして、新曲「River」がリリースされましたが、Mizkiさんにとってどんな曲になりましたか。

 この曲は『Bet on me』のアルバムの雰囲気とはちょっと違い、夏の終わりに秋が近づき、冷たい風に吹かれて寂しさを感じる時にこの曲を聴いたらジーンと感動する曲になっていると思います。

――作詞作曲を手掛けたESME MORIさんとはどんなお話をされましたか。

 レコーディングの時に来てくださって「こういうメロディのほうがいいかも」など、その場で考えて頂いたり、話し合いながらレコーディングしました。歌詞に関しても「語尾はこっちのほうがいいかも」という感じで変えて細かく詰めていきました。

――曲を歌う際にはどんな情景を思い浮かべましたか。

 広島の風景であまりビルなどもなく、蝉の声もなくなってきて、夕暮れ時に一人で川辺で空を見上げて、「ちょっと切ないな」というイメージで歌っていました。

――どんなところにこだわって歌いました?

 メロディラインがすごく切ないので、自分が暗く解釈したら暗くなりすぎてしまうと思いました。優しく包み込むような歌がいいなと思ったので、微笑みながら優しく歌うように心掛けました。具体的には口角を上げながらちょっと声のトーンを上げて歌っています。

――切なくなりすぎず明るくしすぎない、どちらかに振り切らないというのは難しそうですね。

 はい。歌っている時も眉間にしわが寄りがちだったので、「もっとスマイル!」と言い聞かせながら口角を上げて歌っていました。

――ミュージックビデオも撮影されていますが、どんな作品になりましたか。

 2人の私がいるんですけど、それは過去に囚われた自分と未来に向かって進んでいる自分で。ずっと囚われていたけれど心を開いて前を向いて歩いていく、というコンセプトで、どんどん自分が過去の自分から解放されて前向きになっていくストーリーなんです。

――過去の自分というのは中元さん時代の自分?

 もちろん『アナ雪』の頃もそうですし、もっと前の自分を投影していると思います。

――さて、目標としてはMizkiさんとして紅白のステージに立つというのがあると思われますが、近い目標として今掲げているのは?

 もっとたくさんの人にMizkiを知ってもらいたいので、ワンマンライブを開催することが今の一番近い目標です。

――そんなMizkiさんが一番感動したライブは?

 MISIAさんのライブは心に刺さるものがあってすごく印象に残っています。そして、やっぱりAIさんのライブです。初めて行ったライブもAIさんだったので、その時は心が震えて、自分のモチベーションにもなりました。歌を聴いてあんなに泣いたのも初めてで、自然と涙が流れてきて。私も挫折しそうな時に音楽に助けられましたし、勇気も沢山もらいました。そして、音楽というのは人を変えられるんだ、ということを何度も経験しているので、私も一人でも多くの人に元気を与えられる曲を歌って行きたいです。

――前のインタビューで、歌う理由として家族のために、というのがありましたけど、今はいかがですか。

 家族に恩返ししたいという気持ちは変わらないです。もっともっと家族、おじいちゃんやおばあちゃんを幸せにしたいですし、自慢できる孫になりたいなって。きっとどこまで行っても恩返しという気持ちはずっと持ち続けるんじゃないかなと思います。

――自分のために、というのはそんなにない?

 歌を歌うことが好きなので、それだけでシンプルに楽しいですし、モチベーションにも繋がっています。それが続けられるだけでも自分のためになっていると思います。そして、周りのスタッフさんもそうですし、応援してくださるファンの方たちと、大きなステージに行った時に喜びを分かち合えるように、頑張りたいです!

(おわり)

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