4人組ロックバンドのLenny code fictionが24日に、東京・恵比寿リキッドルームで9月にスタートした全10公演の全国ツアー『Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”』のファイナル公演を開催。頭からテンションの高い迫力のあるステージを展開し、「明日死んでもいいと思えるような夜になった」と話した片桐 航(Vo&Gt)。これまでの活動全てを絞り出すような、完成度の高いステージで観客を魅了した。【取材=榑林史章】

気迫あふれる4人

(撮影=Yusuke Sato/Hanna)

 暗転したステージにKANDAI(Dr)が登場し、地響きを感じるほどの力強いドラミングを聴かせ、会場が一気に沸く。どっしりと構え、決して守るだけではない手数の多さは、まるでアニメ『機動戦士ガンダム』で4基のキャノン(ランチャー)を持つガンタンクのごとし(笑)。続いて、kazu(Ba)が加わり重低音のグルーブを響かせる。足を大きく広げ、黙々とプレイする様子は実にスタイリッシュ。陰に徹しながら、ときおりギターのようなメロディフレーズを刺すように聴かせる姿はアサシンだ。

 そして、ソラ(Gt)が空間を切り裂くような音を重ねる。ステージを縦横無尽に動き周りながら演奏するスタイルは実に華麗。ギタープレイも、長刀で一刀両断するような爽快さがある。ステージを飛び跳ね回りながらプレイする様子はまるでバレエダンサー。バンド界における熊川哲也とでも言っておこう。そんな3人による火花の散るようなセッションに期待が高まる中、航がステージに現れ、ピタッと音が止まったその瞬間「Lenny code fiction始めます!」と一言。それをきっかけに、会場全体にクラップが広がり、爆発するように1曲目の「Showtime!!!!」が始まった。

 「Showtime!!!!」は、デビューシングル「Key -bring it on, my Destiny-」のカップリングに収録された曲。音源よりも激しく荒々しい演奏からは、彼らのテンションの高さを感じさせた。黒い衣装に身を包み、ステージから客席をギロッと睨み付けるような航の雰囲気は、例えるならオオカミ。

 すべての闇を背負ってそれを言葉とともに吐き出し、客席を黒に染めてしまうような暴力的な歌声を聴かせ、曲によっては白銀のなかで遠吠えを上げるような姿も見せる。航は、清濁全てを背負った孤高の銀狼といった感じだろう。

 「かかってこいよ!」と言わんばかりの、挑戦的な目つきをした4人。早口でまくしたてるように歌った「Alabama」。会場全体で<ヘイ!>と声を合わせ、ステージと客席が一体になる。「KISS」では、熱いエネルギーがほとばしる演奏を聴かせ、航は手振りを加えながらセクシーなボーカルを響かせる。途中でベースのソロプレイによるジャズっぽい展開も。

 パワフルなドラミングを繰り広げながら、ときにはコーラスを担当して歌を支えたKANDAI。kazuは頭を振りながらベースをプレイし、ときには手招きをするような仕草で観客を挑発。ソラは、どうやったらそんなに動きながら弾けるのか? と思うほど、ステージを駆け回りクルクル回ったり、魅せて聴かせるギタープレイで観客を盛り上げた。

集大成の「AWAKENING」

(撮影=Yusuke Sato/Hanna)

 この日のセットリストは、デビュー曲「Key -bring it on, my Destiny-」や「Colors」「Flower」、最新曲の「AWAKENING」といったシングル曲を網羅したほか、未発表の新曲「Enter the void」と「オーロラ」も披露して観客を喜ばせた。「Enter the void」を演奏する際には「ライブハウスくらい、無になってもいいんじゃないでしょうか!」と航。ハイスピードのグルーヴィーなナンバーで、全体にワイルドさがありながら、それとは対照的に<ヘイ!ミスター・ジャンキー>とハイトーンで繰り返すサビメロが実にキャッチーだ。このギャップが、Lenny code fictionの音楽の魅力だ。曲の最後では倍テン(ポ)になってよりいっそう加速し、一気に駆け抜けるような爽快な演奏を聴かせた。

 MCでは「今日は、マジで楽しいです。ライブ人生でいろいろなことがあったけど、このツアーでいろいろな部分で過去最高を記録することができた。これからも、もっとイケると思っています」と感想を話し、「そのきっかけとなった曲です」と、「AWAKENING」を演奏した。

 この夏は、『SUMMER SONIC 2017』、『ROCK IN JAPAN FES 2017』、『WEST GIGANTIC CITYLAND 2017』など、名だたる夏フェスに次々と出演し、他のバンドと切磋琢磨を繰り広げながら、同時にこのツアーでは己の牙を丹念に磨き上げていった彼ら。そんな彼らの集大成となるのが「AWAKENING」という曲だったのだろう。

 包み込むような強さと優しさがありながら爽快感もあるといった、彼らの持ち味と呼べるものがすべて詰め込まれ、ステージではそれを余すことなく熱い演奏で放出した。ファルセットのコーラスが響いて展開が変わるDメロは、まさしく感動の瞬間。光のなかにシルエットが浮かぶ航たちに向けて観客は手を伸ばし、ステージと客席の思いがひとつになった、歌詞の通り奇跡のような瞬間だった。

(撮影=Yusuke Sato/Hanna)

 そして、もう一つの未発表の新曲「オーロラ」は一転、温かさを感じさせるミディアムバラードだった。曲について航は「生まれて一音目を慣らした瞬間からビッグになりたいと思ったけど、現実を見ながらここまで何とかやってきて。それが今、過去最高規模の会場でやれるまでになりました。それは応援してくれたみんなや支えてくれたスタッフや仲間のおかげです。ありがとう。僕の故郷は田舎で、まさかこんな都会的な街でできるとは想像もしなかったけど、やっぱり故郷での思いや経験があってこそ生まれる曲もあります。故郷での気持ちのまんま生まれた曲です」と説明。

 故郷のほっとするようなやさしさと、キラキラとした希望が落とし込まれた楽曲。シンプルだが太さがあり、この夏を経験した今の彼らだからこそ、鳴らすことができる楽曲だったと思う。東京には、さまざまな地方から人が出て来ている。それぞれのなかにある故郷への思い、夢を追いかけて東京にきたときの思い、すべてをやさしく包み込んで昇華してくれるようで、航のソリッドな歌声は、このときばかりは優しさに溢れていた。

リベンジ果たした4人の笑顔

(撮影=Yusuke Sato/Hanna)

 さらに、ツアーを振り返り「前回のツアーのファイナルだった代官山ユニットが終わったときは、悔しくて、何のためにやってきたのかと思って、泣き崩れた。そのときの悔しさを取り戻すためにここまでやってきた。あのときから自分に嘘をついていなかったか振り返ったり、メンバーとケンカしたり。後悔はしていないかとか、裏切りたくない気持ちとか。俺ひとりでこんなにたくさんの気持ちを背負わないといけないと思うと、くじけそうになったときもあったけど、ここにいるみんながそれを少しずつ分け合ってくれるような、そんなツアーになったと思う。ずっと語っていけるツアーになった」と語った。

 終盤の畳みかけは、実にすさまじく、何一つ残さず出し切り、絞りきるといった印象を受けた。ラストの「世界について」は、会場が一体となって、手を挙げながら声をあげた。キラキラとしながらスケールの大きなサウンドが、広大な景色を想像させてくれる曲。目の前には、恵比寿リキッドルームよりも、もっと大きな会場でバンドサウンドを鳴らしている、未来の彼らの様子が浮かんだ。ここにいた誰もがきっと、彼らの“覚醒”を実感し、更なる高みへと上り詰める期待に胸が膨らんだだろう。ステージを終えた4人の表情には笑顔がこぼれ、やり切ったという達成感が満ちあふれていた。

 代官山ユニットのときの終演後の関係者挨拶では、関係者に合わせる顔がないといった様子で、伏し目がちだった航の姿が、今も強く印象に残っている。その日は特に何か大きな失敗をしたわけではなく、ライブとしては申し分の無いものだったと思うが、彼ら自身にしかわからない、やり切ることができなかった無念さが残っていたようで、それだけ彼らの志が高かったということだろう。しかし、この日の挨拶では、満足げな笑顔で希望に満ちあふれた4人が、関係者を出迎えた。この笑顔が、すべてを物語っている。覚醒したLenny code fiction。何度も限界突破し、何度でも覚醒を続けていくだろう。

セットリスト

Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”

2017.12.24 @恵比寿LIQUIDROOM

M1 :Showtime!!!!
M2 :Alabama
M3 :KISS
M4 :Enter the void(※ 未発表曲)
M5 :AWAKENING(※ 新曲)
M6 :Colors
M7 :Key -bring it on, my Destiny-
M8 :Once
M9 :オーロラ(※ 未発表曲)
M10:Orion
M11:2073
M12:Romance
M13:Lightness Monkeys
M14:Rebellious
M15:Flower
M16:世界について

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