ロックバンドのLACCO TOWERが12月27日、東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTでツアー『LACCO TOWER ホールツアー2018-2019「五人囃子の文明開化」』の初日公演を開催した。2018年は自身の新たな決意を示した最新アルバム『若葉ノ頃』のリリースを行い、全国4公演の、バンドとしては初のホールツアーを成功させたLACCO TOWER。バンドとしてのステータスを一段階上げ、さらに今後への期待も大きく膨らんでいる。この日のステージは、彼らとしては2回目となるホールツアーで、東京を皮切りに群馬、京都と3か所だけの小規模ツアーではあるが、この日と群馬でのライブはすでにソールドアウトしており、彼らの躍進が確かなものであることを、改めて確信させている。2018年の締めくくりであるとともに、ツアー初日という特別な日ともなっているこの日のライブ。今回はそのステージをレポートする。【取材=桂 伸也】

文明開化ァ~!行けるか、渋谷!

LACCO TOWER(撮影=Masanori Fujikawa)

 定刻通りに会場は暗転し、SEが切り替わる。静けさを感じるそのハーモニーの中、不意に大きな音がドーン!と鳴り響く。するとステージの下手上側に、大きな月が映し出される。何か明確なシンボルがあるわけでもないのに、和のテイストを感じるその空気感。急に音は途絶え、カセットテープを切り替える音がせわしく鳴り響く。音を早送り、巻き戻し、そしてときに流れるのは、LACCO TOWERの曲。音は徐々に大きくなり、ノイジーに変わっていく。そしてその音は頂点に達したときに再びブレイクし、会場はまた暗闇に包まれる。そして次の瞬間、照明がステージに当てられると、そこにはLACCO TOWERの5人がたたずんでいた。その堂々とした姿に、観衆は惜しみない拍手を送った。

 この日のオープニングナンバーは「薄紅」。疾走感がありながらポップなイメージもあるこの楽曲は、どちらかというと彼らのステージではクライマックス間近かアンコールで披露されることが多い。さらに同じくキャッチーな「灯源」へ、そしてダークな雰囲気を持った「葡萄」「狂喜乱舞」へと続いていく。彼らのこれまでのステージでは、オープニングはアクティブで、時に狂気を誘うリズムとマイナーなハーモニーで彩られた激し目の楽曲を持ってくることが多かったが、今回のステージ、前半のセットリストだけでも、ホールでのステージという規模感を意識したことや、自分たちの音楽を見つめ直し、新たな道を進めようとする意向も感じられるところだ。「さあ参りましょうか、皆さん!?」「お手を拝借!」松川ケイスケ(Vo)の煽りの一声が、会場の温度を上げていく。

 「文明開化ァ~!行けるか、渋谷!」さらにキーボードの真一ジェット(Key)の声が響く。張り詰めていた緊張感が、一気に解けていく。音に命を賭けた男たちの、シリアスな雰囲気もLACCO TOWERのライブの魅力であるが、そんな中でフッと現れる彼のこうしたパフォーマンスは、さらに彼らのライブを魅力的に見せる大きな要因の一つだ。ステージの真一ジェットも、そして観衆も腕をワイパーのように振り、「傷年傷女」を目一杯盛り上げる。こうでなくては。こうではなくては、少年少女の心についた傷を吹き飛ばすことなど、到底なし得ることはできないだろう。

 中盤は、優しく、せつなく、そして最後には少しの勇気を与えてくれる彼らのバラードへ。「朝顔」「蛍」とバラードをはさみ、少し気持ちを上げてくれる「楓」へとつなぐ。その流れはそのまま、聴くものの気持ちを優しく癒やし、そして徐々に気持ちを持ち上げてくる。綺麗ごとだけでは済まされない、傷つくことも往々に出くわすことのある人生。そんな中でも希望を見出し、歩いていく。そんな縮図が、ここでは切々と描かれる。

ちょっと欲張りやけど、今年一番をもらえるか?

LACCO TOWER(撮影=Masanori Fujikawa)

 ツアーの初日ということもあってか、少し緊張した様子も見られた松川だが、そこにはネガティブな印象だけでなく、何か新しい挑戦をしようとしているようにも見える。単に巧く、美しく表現するだけではない。ホール規模でのライブをおこなえるだけのバンドに成長したことで、その規模に見合ったパフォーマンスを目指しているような、そのためにより歌う中での、観衆とのコミュニケーションをいかに密にしていくか、彼の姿は、そんな壁に対して前向きに格闘しているようでもあった。

 そしていよいよステージも「未来前夜」より後半に。観衆は聖歌を響かせるように、ハーモニーを響かせる「雨後晴」。「ちょっと欲張りやけど、今年一番をもらえるか?」松川の声に、観衆の声はさらに大きなハーモニーで応える。轟音を響かせるLACCO TOWERのバンドサウンドの中でも、まったく埋もれることなく、むしろバンドの音と共鳴しそのサウンドをさらに大きく持ち上げていく。

 あとは、まさにLACCO TOWERのペースだ。ステージではすっかりおなじみとなった、重田雅俊(Dr)と塩﨑啓示(Ba)の二人によるセッションでフックを与えたあとは、「火花」まで、キラーナンバーで一気に突き進む。重厚なリズムセクションの上で、細川大介(Gt)と真一ジェットの生み出すサウンドはさらに音に厚みを与え、松川のボーカルを支えていく。エンディングは「遥」。2018年末という節目と、ツアー初日、そしてさらに重田の誕生日が重なったというこの特別な日を、彼らは自分たちの一番ふさわしい曲で締めくくった。

 アンコール前には彼らが主催するイベント『I ROCKS 2019』を開催する旨を発表、それに伴い第一弾出演アーティストが解禁されるなど、来年に向けての勢いも十分だ。彼らの奮闘は当面途切れることを知らないだろう、そんなことを感じさせるステージだった。

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)