超絶テクニックを誇るギタリスト・だいじろー(ex.宇宙コンビニ)が始動したプロジェクト・JYOCHO(じょうちょ)が3月9日、東京・代官山UNITで全国ツアー『JYOCHO Oneman Tour 2019「美しい終末サイクル」』のツアーファイナルをおこなった。昨年12月にリリースされたアルバム『美しい終末サイクル』を引っさげて、2月9日の福岡DRUM SONを皮切りに全国8カ所にて開催された本ツアー。アルバムの曲を中心に既成概念を壊す音楽でオーディエンスを魅了したライブのもようを以下にレポートする。【取材=村上順一】

色んな意見が聞けるのは嬉しい

だいじろー(撮影=佐藤広理)

 ツアーファイナルの代官山UNITには多くのオーディエンスが集まった。ミディアムなナンバーがBGMとして流れる穏やかな空間。オーディエンスはこれから始まるライブへの期待感を胸にドリンク片手に開演を待ちわびている。

 開演時刻になり、会場は暗転。「from long ago」をSEにメンバーがステージに登場。だいじろー[Gt./Cho.] によるタッピング奏法を駆使した複雑なシーケンスフレーズ、sindee [Ba.]とhatch[Dr.] が繰り出すアバンギャルドなリズム、そこに乗る猫田ねたこ[Vo./Key.] の歌とはち[Fl.] のフルートの音色と、異空間へといざなうサウンドで我々を迎えてくれた。拍という概念を感じさせない演奏は、自由という美しさを感じずにいられない楽曲。

 最初に演奏された「つづくいのち」では、猫田の奏でるキーボードの設定が変わってしまっていたハプニングもあり、音源とは違った「つづくいのち」となった。演奏終了後、「スピリチュアルバージョンでお届けしました」と、ライブならではのハプニングも楽しんでいるようだった。

 MCでは、メンバーがニューアルバム『美しい終末サイクル』のMVに寄せられたコメントについて語る。「色んな意見が聞けるのは嬉しい。(意見が)真っ二つに分かれると思って作っているので…」と賛否のあるコメントにもタフな姿勢をみせた。そして、このツアーでのミーティングで「もっとヒューヒュー言われたい」という楽曲の方向性から想像できない答えを導き出したJYOCHO。

 難解なフレーズを駆使した一際スリリングな1曲「sugoi kawaii JYOCHO」で、その思いは通じイントロで敢えてブレイクさせオーディエンスから「ヒューヒュー」という盛り立てる声。その声に満足気な笑顔を見せるメンバーの姿が印象的だった。

意識が及ばないような領域で皆さんとフィットしていく

JYOCHO(撮影=佐藤広理)

 MCを挟み、ピアノのシーケンスが印象的な一曲で、フルートが映えるミディアムナンバー「Lucky Mother」から激昂するかのように「Aporia」への流れはビックバンでも起きたかのような、ダイナミックな展開。続いて、切なさを感じさせる「365」では、終わりゆく星のように赤く染め上がるミラーボールが存在感を放つ中、感情を揺さぶりかける歌とサウンドで魅了した。

 深い夜に沈み込んでいくかのような、シンセパッドによるSEから「グラスの底は、夜」。空気の振動で様々な景色を見せてくれるJYOCHO。続いての「わたしは死んだ」は、相反する表裏一体の言葉と、密度のある低音が会場を支配するシリアスなナンバー。深い闇へと誘うような重いサウンドに、ガラスのようなピアノの音色が緊張感を与えてくれた。

 全国8カ所を回ってきたツアーもこの日でファイナルということで「感極まりますね」と猫田が話す。だいじろーは「JYOCHOは難しそうな音楽性だったり、わかりにくい言葉かもしれないんですけど、意識が及ばないような領域で皆さんとフィットしていくと信じて活動しています。JYOCHOはジャンルの壁をぶち壊していきたいと心の底から思って活動しています。新しいものを見せていけたらと思っていますので、これからも宜しくお願いします」と決意を告げ、ニューアルバムから表題曲「美しい終末サイクル」を届けた。流れるようなグルーヴは心の隙間を埋めてくれるかのように芸術性のあるサウンドで、我々を満たしてくれる。

 本編ラストは「こわかった」。歌は言葉を持った楽器のようにサウンドと調和し、タイトルとは裏腹に心地の良い空間を作り出していく。無限大の可能性を感じさせてくれる演奏でステージをあとにした。

 アンコールを求める手拍子にメンバーが再びステージに登場。オーディエンスもクラップで参加するナンバー「pure circle」で一体感を高めながら『JYOCHO Oneman Tour 2019「美しい終末サイクル」』の幕は閉じた。

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