INTERVIEW

HKT48

矢吹奈子×田中美久×運上弘菜、それぞれの2年半 成長と葛藤、未来への希望


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年12月24日

読了時間:約12分

 HKT48が12月1日に発売した2ndアルバム『アウトスタンディング』のリード曲「突然 Do love me!」は、IZ*ONEの活動を終え復帰した矢吹奈子がセンターを務める。宮脇咲良と矢吹奈子が渡韓していた約2年半は指原莉乃ら初期メンバーの卒業など世代交代が進んでいた期間ともいえる。この間、けん引してきたのは紛れもなく田中美久ら。そして、新顔として台頭したのが運上弘菜ら。加入当時小学生だった“なこみく”は今やグループの代表的な顔になり、そして運上らが力をつけ、10周年を迎えHKT48は盤石の体制になったと言ってもいい。そのなかで10周年の歩みを振り返るのが今回のアルバムであり、新たな一面を魅せるべく打って出たのが今回の新曲。これまでのHKT48にはない曲調で、センター矢吹がIZ*ONEの活動を通して培った新たなエッセンスも注入されたことで、同性など新たなファン層の獲得も期待される。今回はその3人にインタビュー。この2年半の歩みを振り返るとともに、新曲への思いを聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

10周年記念特別公演

――HKT48劇場10周年記念特別公演はいかがでしたか。

矢吹奈子 今までやってきた公演の楽曲もあって、エモい2日間だったなと思います。昔から応援して下っている方が「うわ~、懐かしい!」と思えるような、素敵な公演だったと思います。

運上弘菜 私がデビューした日に披露した曲を、同じポジションで同期と歌ったり、2期生さんも初期の頃にやっていた曲を歌ったり、私がファンだった頃の楽曲もあったので、一ファンとして楽しんでいました!後輩達も頼もしくて、前の周年よりも力強くなって、手ごたえを感じた10周年公演でした。

田中美久 10周年公演でしかできないセットリストでした。たった2日間でしたが、こんなにも10年の歴史を感じられるものはなくて。それと6期生のオーディション開催や来年のライブツアーなど、これからのHKT48にとって嬉しい報告もあったので、未来のHKT48も感じられる良い2日間だったと思います。

――2日間で歌ったのは約100曲、すごいですよね。準備も大変だったと思います。

田中美久 細かい振りはメンバー同士助け合いながらやりました。私もメンバーに教えてもらわなかったら全然踊れなかったので、そういう部分では助け合いって大事だなと思いました。

――これまでやっていない曲もありますもんね。運上さんはいかがですか。

運上弘菜 48グループのなかで、1期生さんがここまで残っているグループもなかなかいなくて、10周年で後輩も頑張ろうとなっている中、本当に1期生さんの力の大きさを感じました。1期生さんがリハ中に「やるよ!」とか、「大変だけど頑張ろうね」と一言かけてくださるだけで、みんなの結束力が高まるので、改めて1期生さんのありがたみを感じました。

それぞれの2年半、矢吹から見た2人

矢吹奈子

矢吹奈子

――2020年1月の『HKT48 田中美久ソロコンサート ~みんなで一緒にみくもんもん~』で、矢吹さんは手紙を送っていましたが、実際に田中さんのことをどう見ていたんですか? 小さい頃から2名で活動することが多く、もちろん仲は良いと思いますが、ライバル意識を持っていたのか、どうか。

矢吹奈子 ライバル意識は高かったけど、いつも一緒にいる時に、みくりんが甘えて来てくれていたので、それが無くなっちゃったから、すごく寂しかったです。韓国では私が逆に甘える側でしたし、HKT48では(年齢的にも)そうやってくれるメンバーはみくりんくらいしかいなかったんです。最近では、いぶきちゃん(石橋颯)とか後輩もしてくれる時はあるんですけど…。

田中美久 ちょっとキュンとしてしまいました!いつもツンなんですよ(笑)。私が甘えても、ハイハイってやるぐらいで。でもそこがまた好きで。そう思ってくれていたのを今聞いて、可愛いなって思いました。嬉しい!

――この期間お互いの活動は耳にしていたと思いますが、どう感じていたんですか?

矢吹奈子 嬉しい事が多かったかな。シングルも、2人(田中と運上)がダブル選抜でセンターになっていたりとか、嬉しい事を耳にして「いいな」って思いました。これからのHKT48を背負っていくメンバーになっていってるなって。

田中美久 卒業する人みたいになっているけど、大丈夫?(笑)

矢吹奈子 あはは! みくりんとWセンターをした後に、すぐ韓国に行っちゃったので、この後のHKT48はどうなっていくのか、あまり予想が付いていなくて。指原さんは卒業する前だったし。どうなっていくんだろうというのがあったけど、活躍する後輩も出てきて、これからHKT48がどんどん変わっていくのかなという感じがして、すごく期待していました。

――運上さんは、その矢吹さんと田中さんがWセンターを務めた「早送りカレンダー」(18年5月)で選抜入りして、去年4月発売の「3-2」でシングル初センターとなって、その勢いはすさまじいですが、どう見ていましたか。

矢吹奈子 最初はちょっとびっくりしましたね。でも、実は4期生のお披露目の時から、なっぴ推しでした。だから自分の目は合っていたじゃないですけど、ちょっと自分を誇らしく思いました。なっぴがセンターに立つ姿を見て、後輩だけど、頼もしいと思う部分もありました。

――当時どう感じていたんですか?

矢吹奈子 雰囲気も、喋る感じも、初々しさがめちゃくちゃ可愛くて、この子だと思いました。

それぞれの2年半、運上から見た2人

運上弘菜

運上弘菜

――運上さんは逆にどういうふうに過ごしていましたか。センターもありましたし、グループ自体コロナ禍もあって大変だったと思いますけど。

運上弘菜 最初はどうしようという感じでした。指原さんが卒業されて、次のシングルまで1年かかっちゃって、やっと出せたところで、自分がセンターというのも大丈夫かなという気持ちもありました。上手く活動できない期間も長かったので、奈子さんも(宮脇)咲良さんも韓国にいらっしゃるし、自分達がHKT48を前に出していかなきゃいけないのに、この期間どう過ごしたらいいんだろうとすごく悩みました。でも、メンバーやファンの方が前向きに声を掛けてくれたので、披露まで時間は掛かったんですけど、初披露した時にすごく嬉しかったというか、披露出来ない期間もファンの方と支え合って、たくさんコミュニケーションを取ったので、絆が深まった感じがして。大変でしたけど、成長出来た期間だったと思います。

――HKT48は卒業も含めて色んな壁を乗り越えて、いま強い時期にいるような気がするんですけど、自分自身も強くなれましたか。

運上弘菜 センターになる前は、自分がセンターになる人間だと思っていないし、消極的過ぎると言われる感じだったので、少しは強くなれたかもしれないですけど、まだまだ弱気な部分はあるので、奈子さんと美久さんに支えられています。

――運上さんから見たら、田中さんはどのように映っていますか。

運上弘菜 美久さんは、普段はちょっと天然な所があってプライベートではすごく可愛いんです。でも、お仕事ではガラッと先輩になって引っ張って下さるので頼もしいなと思います。美久さんは奈子さんとずっと一緒にいたから、2人でお仕事をするようになった時に「私が隣にいていいのかな」って思っていました。でもずっと優しく話かけて下さったのでありがたかったです。

それぞれの2年半、田中から見た2人

田中美久

田中美久

――田中さんはどうですか。運上さんの印象と、矢吹さんがいなくなった時にどのように思っていましたか。外から見たら引っ張っている印象が強かったですが。

田中美久 最近では、なっぴと一緒に活動する機会が増えていって、後輩でこうやって先輩を超える勢いで伸びてきているメンバーがいるというのが長い目で見てHKT48として嬉しかったですし、どんな時でもおしとやかで、いつでも冷静にいられているところもすごいなと、後輩だけど尊敬している部分がたくさんあるメンバーだなと思っています。奈子は、活躍がすごく嬉しくて、昔は、どっちかが選抜に入って落ちるという事もあったので「悔しいな」と思う時もあったんですけど、今は何でも嬉しく感じちゃって。そういう部分では自分も成長出来たので、奈子がいてくれて良かったなって思っています。

――背負っていかないといけないという気持ちがあって、重圧も感じていたんじゃないかなと思うんですけど、どうですか。

田中美久 奈子と咲良ちゃんがIZ*ONEに行って、その後すぐ指原さんが卒業した時は、本当に前が見えないくらいどうしようと思いました。「早送りカレンダー」で奈子とダブルセンターになって、これから2人でもっとHKT48を頑張っていきたいなと思っていたし、AKB48さんの選抜にも2人で入った時に、もっと活躍していきたいなと思っていました。指原さんなど前にいた先輩方の背中をずっと追いかけて、いつか越えたいという状況だったので、先輩方が卒業してしまったり、ずっと隣にいた奈子がいなくなったり、そこで自分の立ち位置が分からなくなって迷ってしまって。でも前を向いて頑張るしかないんです。だけど本当に気を抜いたら折れちゃいそうなくらいで、その時期は切羽詰まっていたかなと今では思います。

――ずっと重圧は抱えていると思うんですけど、少し溶けたのは、矢吹さんが戻ってきたりしたから?

田中美久 それもあるんですけど、やっぱりファンの方の声もすごく大きくて、そういう時にたくさん心配して、支えて下さったファンの方のお陰で折れずにやってこられたというのと、周りのメンバーも変わらず優しくて「一人で背負わないで、私にも頼ってね」という声に助けられました。

――そこでより一層、矢吹さんが戻って来たことによって結束が強くなったというか。

田中美久 そうですね。奈子も変わっていなくて、戻って来てすぐみんなと馴染んで、明るくて、みんな一気に仲良くなって。結束力もあると思うし、レベルアップして帰ってきてくれたので、HKT48で活動する上で良い刺激になります。

――矢吹さんは、HKT48に復帰したときに何を感じましたか。

矢吹奈子 メンバーに会えること、そしてファンの方と専用劇場で会えるというのが嬉しかったです。また、こうしてちゃんと帰って来ることが出来て、ファンの方に挨拶出来て嬉しかったです。

矢吹奈子の葛藤、与えられた役割「突然 Do love me!」

田中美久、矢吹奈子、運上弘菜

田中美久、矢吹奈子、運上弘菜

――さて、新曲「突然 Do love me!」についてですが、センター矢吹さんということも含めて印象をお願いします。

運上弘菜 10周年の節目にとてもぴったりな曲だなと思って、今までのHKT48にはなかなかない曲調ですし、可愛さもかっこよさもあって、この10周年という節目で特別な感じがします。歌詞も励ますというか、前向きにガツガツしていこうという歌なので、それが今のHKT48に寄り添ってくれている曲みたいで嬉しいと思いました。それと今、奈子さんがセンターに立って下さることはHKT48にとってプラスになるし、他のメンバーにとってもきっと良い方向になるので、ありがたいなって思います。

――矢吹さんは今回の曲はどう思っていますか。

矢吹奈子 グループが明るいというイメージがあるので、まず明るさと、曲調はかっこいいんですけど、歌詞とかみんなの声が入ると可愛くなるので、そこも含めて。あと、ダンスが今回はいつもと違う先生で、K-POPでも振付をされている方なので、ちょっとまたニュアンスの違う振付になっていて、そういうところでは韓国で学んだところを見せられたらなという、いろんな思いがありました。

――また新たな一面を見せたりとか。そういう感じもしますね。田中さんはどうですか。

田中美久 みんなでいざレコーディングをして、音源を聴いた時に、HKT48の曲になってる!ってすごいと思って。聴けば聴く程スルメ曲というか、良い曲だなと思って、10周年にリリースするセカンドアルバムにぴったりな曲だなと思いました。

――運上さんもおっしゃっていたけど、女性のファンが増えるんじゃないかという印象も受けるんですけど、新しいエッセンスという意味ではどのように感じていますか。

田中美久 秋元先生が書く歌詞って、男性目線の歌詞が多いので、女性目線の歌詞で歌えるっていうのが新鮮で、楽しいですし、積極的に進めない方を後押しする歌詞にもなっていて、私達が歌って元気を与えられたらいいなと思います。割とメッセージ性が強いと思うので、たくさんの方に響いたらいいなと思います。6期生のオーディションも始まるのでその子達にも聴いてもらって、オーディションに迷っていたら、頑張ろう、一回やってみようという気持ちになってもらいたいです。

新たなスタート

田中美久、矢吹奈子、運上弘菜

田中美久、矢吹奈子、運上弘菜

――48グループ自体が転換期というか、新しい事にという中で、HKT48は新たな土台がすでに出来上がった印象が強いんですけど、その上で今回の曲とアルバム、今後自分達にとってどういう作品になると思いますか。

矢吹奈子 アルバム名の『アウトスタンディング』は突出したという意味なんですけど、11年目から新たなHKT48を見せていく、突出していくぞという意味が込められているんじゃないかなって。秋元先生もそうなって欲しいと思ってこのアルバム名にして下さったのかなと思っているので、新しいHKT48を見せられたらなっていう気持ちが強いです。

――運上さんはどうですか。

運上弘菜 アルバムにも新しい楽曲で、ダンスチームの曲とか、歌が得意なメンバーの曲とかもユニットで入っているので、メンバーそれぞれが得意としていることをもっともっと伸ばして、全体的にレベルアップしていかなきゃいけないのもそうなんですけど、それぞれの得意な事を伸ばして、注目してもらえるポイントがHKT48に増えるように、他のグループより頭一つ抜けれるようになったらいいなと思います。奈子さんが帰って来て、ますます頑張らなきゃなって反省する部分も多いので、本当に頑張っていきたいなと強く感じています。

――写真集も出ますしね。

運上弘菜 フォトブックも発売させていただくので、たくさんの方に見てもらいたいなと思います。

――そういう意味では、田中さんの写真集はたくさんの方に届いたっていう感じですね。

田中美久 イベントをさせていただいて、その時に多くの方が初めてお会いする方だったんです。その後の雑誌とかにも表紙で出させていただくにつれて、新しいファンの方がすごく増えてきていているのを実感していて、自分が今まであまりやっていないジャンルをやることで、今加入9年目なんですけど、それでも初めて知って下さった方がいるんだという事に嬉しく思います。

――新しいファンの方は女性も男性も?

田中美久 写真のイベントは女性の方も来てくださって嬉しかったです。

――その中で今回の作品はどうですか?

田中美久 奈子が帰って来て、HKT48全員揃ってのセカンドアルバムですし、ここからが頑張りどころだと思っています。今は奈子に頼っているのが大きかったり、プレッシャーを与えていないかなとか、自分もまだまだ頑張らなきゃと思うんですけど、みんなで力を合わせてこれを機にたくさんの方に知っていただきたいなと思います。

――矢吹さん自身は、自分の経験をHKT48にプラスしていきたいという思いは強いですもんね。

矢吹奈子 自分で意識してやったわけではなんですけど、自分の中で、前で引っ張って下さっていた先輩方がどんどん卒業されていって、自分がそのポジションに立たなきゃいけないのかなってどこか心の中で思っていたのがあって、自分から発言する人ではなかったので、自分の中で変われていたのかなと思います。

(おわり)

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田中美久、矢吹奈子、運上弘菜
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