「幸せにしてやる!」BAND-MAIDの本質とは
INTERVIEW

BAND-MAID

「幸せにしてやる!」BAND-MAIDの本質とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年11月04日

読了時間:約12分

 メイド姿のハードロックバンドBAND-MAIDが10月27日、ニューシングル「Sense」をリリース。今年1月にメジャー4枚目のアルバム『Unseen World』をリリースし、“現点進化”というらしさを追求しながらも、新たな挑戦が詰まった作品を提示。さらにその15日後にサプライズリリースされた「about Us」を発表した。それらを経て、新たな試みも詰まったニューシングル表題曲「Sense」はTVアニメ『プラチナエンド』のオープニングテーマに起用され注目を集めている。さらにカップリングの「Corallium」でSAIKIが全編作詞に初挑戦し、新たな彩をバンドに投入。インタビューでは、「Sense」の制作背景を尋ねるとともに、メジャーデビュー5周年を迎えたBAND-MAIDの本質に迫るべく小鳩ミクとSAIKIの2人に話を聞いた。【取材=村上順一】

メジャーデビュー5年で変化したこととは

「Sense」ジャケ写

――今年はメジャーデビュー5周年の年だったんですよね。

小鳩ミク そうなんですっぽ! 2016年の5月に『Brand New MAID』でデビューしたので、もう6年目に突入しましたっぽ。

SAIKI えっ、そうなの? デビュー日はあまり気にしていなかった(笑)。結成して今9年目で、もうすぐ結成10年目なので、私はそっちで周年は覚えていて。

――結成10周年の時にはミュージアムとかやれそうですね! 歴代のメイド服を並べたり。

小鳩ミク それが、これまでのメイド服はライブで酷使しすぎて残っていないので、無理なんですっぽ(笑)。

SAIKI ボロボロすぎて人様にお見せできる代物ではなくて…。

小鳩ミク なので、ミュージアムをやるとしたら残っている写真からレプリカを作るしかないっぽ!

SAIKI でも、結成10周年では豪華なことをやってみたいよね。例えばフィギュアを作ってみたりとか。

――個人的にBAND-MAIDはアニバーサリー的な催し物をやっているイメージがないんですよね。

小鳩ミク 1周年の時だけちゃんとやりましたっぽ。

SAIKI いま思い出したんですけど、1周年の時に毎年じゃなくて、5年とか10年という節目の時だけやればいいんじゃない、と言ったのを覚えています。

小鳩ミク 言ってたっぽ! それが今年だったけど忘れていて…。

――(笑)。では、結成10年に向けて意気込みは?

小鳩ミク 攻めの姿勢は変わらずに、落ち着くことなく10年を迎えたいですっぽ。コロナ禍もあってBAND-MAIDも落ち着いてしまうんじゃないかとか、そういったことを言われることもあるので…。

SAIKI 「BAND-MAIDも歳をとったな」みたいな(笑)。

小鳩ミク でも、その不安を払拭させていきたいなと思っていますっぽ。

SAIKI 「Sense」の音を聴いていただければ安心してもらえると思うんです。

――確かに。このタイミングで「start over」のような曲をリリースしていたらまた違った感覚になったのでしょうけど。

小鳩ミク 「start over」はお給仕(BAND-MAIDのライブの呼称)で休める、一息つける場所が欲しくて作った曲でもあったんですっぽ。その前に出したアルバム『WORLD DOMINATION』(2018年リリース)が駆け抜ける感じの作品だったので、休める曲がないとみんながあぶない(笑)。

SAIKI お給仕で身の危険を感じたので(笑)。それこそご主人様、お嬢様(BAND-MAIDのファンの呼称)も危なかったんです。

――でも、アコースティックコーナーを作ったりしていたじゃないですか。

SAIKI 急にアコースティックコーナーになるじゃないですか。それがどうなんだろう? というところもあったので、フルバンドで出来る「start over」のような曲があるといいよねって。

――優しさに満ちた曲だったんですね。

小鳩ミク みんなにも元気でいてもらわないとダメで、みんなで世界征服をしなければ意味がないんですっぽ。

――アルバムにも入ってないので、この曲はベスト待ちですね。

SAIKI それも考えました。けっこうみんなからアルバムに入ってないと言われたので、シングルコレクションのような作品を出そうかとなったんですけど、それは今じゃないなって。

――この5年間で一番変化したことは?

SAIKI 何もかもが変わったと思っていて、毎年アップデートできていると感じています。

小鳩ミク 5年前は初々しさがあったと思いますっぽ。

SAIKI えっ!? 初々しさあった?

小鳩ミク えっ!?

――う〜ん、あまり今と変わらない気がしています…。ただ、SAIKIさんがすごく喋ってくれるようになったなと。

SAIKI それはこの5年というのは大きいですよ! ただ私が人見知りなだけなんですけど。

小鳩ミク でも、初対面の人が来た場合はあまり喋らないですっぽ(笑)。

SAIKI そこは変わっていないところですね。変わったところはみんな音楽機材が増えたところかも。

小鳩ミク バンドに関するものがプライベートでもすごく増えましたっぽ。あとは海外にたくさん行けたことはデビュー当時の私たちからしたら想定外なことで、BAND-MAIDに大きな変化を与えてくれたと思いますっぽ。

SAIKI 20カ国ぐらい行きましたから。

小鳩ミク 海外での経験から、いろんなお話ができるようになったんですっぽ。

――それも関係してきているのか小鳩さんの英語の詞は、日本の方があまり使わないようなセンテンスがあって勉強になります。

小鳩ミク 英語の先生に教えていただいたりしていて、それも海外に行ってなかったらここまで勉強しようとは考えなかったと思うんですっぽ。それは大きな変化のひとつで、実際に喋る時に使う言葉で面白い表現を取り入れたいと常に思っていますっぽ。

「幸せになりたい」よりも「幸せにしたい」

――「Sense」のイントロは今までありそうでなかったですね。ラスボスが登場するような荘厳な感じで。

SAIKI KANAMIがめちゃくちゃ頑張ってました。アレンジの勉強してたよね。

小鳩ミク このイントロの感じはKANAMIの引き出しにはなかったみたいで。最初このイントロ部分はなくて、アニメサイドから「壮大なオーケストラを入れて欲しい」とリクエストをいただきましたっぽ。このアニメのオープニングテーマだから出てきたアレンジになったっぽ。

――作詞はこの作品を読んで書かれて。

小鳩ミク もともとこの『プラチナエンド』のファンで、すでに原作を読んでましたっぽ。ちょうどこのオープニングテーマのお話が来たときに最新巻まで読み終わって。それもあってすごく作品に寄り添って書くことができましたっぽ。自由に書かせていただいて、気に入っていただけたので嬉しかったですっぽ。

――『プラチナエンド』のどんなところにフォーカスして書いていたのでしょうか。

小鳩ミク 原作を読んでいる方にもいいなと思っていただけるような歌詞にしたい、と思いましたっぽ。「予感」と「天使」というワードを使って欲しいというリクエストが製作委員会サイドからあったので、それを踏まえつつ、小鳩は「明日」と「幸せ」を絶対に入れたいと思いましたっぽ。それは幸せを目指して、というのがアニメのテーマとしてあって、「明日」は主人公の名前が明日(ミライ)くんなので、絶対入れたかったっぽ。

――SAIKIさんはこの歌詞どう捉えていますか。

SAIKI これまでの小鳩の感じはありつつも、小鳩の言葉ではない部分も多くて、アニメの世界観に寄り添った歌詞だなと感じました。あと、いい意味で厨二っぽい、忘れられない青春感みたいなものがあるなと。歌は歌詞がはっきりと聴こえるように意識しましたし、メロディもすごく気持ち良いので、その気持ちよさが伝わるように歌いました。

小鳩ミク 飛び立つくらい声が伸びているっぽ!

――すごく気持ち良さそうなのが伝わってきました。ところでタイトルが「Sense」になったのは、どんなところから?

小鳩ミク レコーディングが終わった後、最後に決めたんですけど、色々考えたときにアニメを見ている人も、見ていない人でもカッコいいと思えるタイトルがいいなと思ったっぽ。「Sense」に行き着くまでは、天使をフランス語にしてみたりしたんですけど、予感という意味を持つ「Sense」が一番しっくりきましたっぽ。

――先程お話ししていたキーワードにも予感ってありましたね。ところで、「幸せ」というのもテーマとしてありますが、お2人は「幸せになりたい!」と強く思うことはありますか。

SAIKI ないかなあ。主人公の架橋明日のようにあそこまで追い詰められてはいないので(笑)。

小鳩ミク 『プラチナエンド』は絶望から始まる物語なので、あそこまで絶望を感じていないっぽ。小鳩は幸せになりたい、というよりも平和でいたいと思うことはありますっぽ。

SAIKI たぶん絶望を感じたら、幸せになりたいと思うよりも「生きる!」という感情の方が強く出ますね。

小鳩ミク 幸せになりたいだと、どこか人から与えられるものになってしまうのかなと。自発的ではなくどこか受動的な感じがしていますっぽ。BAND-MAIDのメンバーはみんな自発的なのでそういった感じにならないですっぽね。なので、「幸せにしてやる!」といった感覚だと思いますっぽ。

SAIKI どうやったら皆さんに喜んでもらえるかどうかを考えます。

小鳩ミク メイドなのでご奉仕の精神ですっぽ。「幸せになりたい」よりも「幸せにしたい」というのがBAND-MAIDですっぽ!

SAIKI 今、BAND-MAIDの本質が見つかりました。

海が怖いSAIKI、その理由とは

――さて、今回SAIKIさんが作詞された曲が初収録されていますけど、このタイミングになったのは?

SAIKI コロナ禍で時間があったので作詞に挑戦していました。去年か今年の初めくらいにKANAMIからリリース予定もない曲を送ってもらってました。KANAMIはひと月に作る曲のノルマを決めているので、メンバーが聴いていない曲もたくさんあるんですよ。それを使って作詞の練習をしていました。

――KANAMIさん、追い込みますね...。

SAIKI すごく作詞への意欲も湧いて。ただこんなに早くリリースされるとは思っていなかったんです。今作はストック曲として作っていた感じでこの曲に小鳩も歌詞を書いて、コンペみたいな感じで進めていったんですけど、今回は私の歌詞が選ばれて。

――小鳩さんにライバルができたわけですね!

小鳩ミク そうなんですっぽ! 見ている視点が違うので、歌詞の世界観も全然違うので面白いっぽ。

――ちなみに小鳩さんはどんな歌詞を書いたんですか。

小鳩ミク 啓発っぽい感じの歌詞だったと思いますっぽ。ちょっと小難しい感じの言葉も使っていて、私がたまに出す感じの世界観の歌詞でしたっぽ。

――ところで「Corallium」というのは?

SAIKI 宝石珊瑚という意味です。この歌詞は場所でいったら海なんですけど、実は私、海が怖くて。波の感じが苦手なんです。それを気づいたのは最近で、歳を重ねていくうちに想像力も増してきてどんどん怖くなってきて(笑)。それでテレビでたまたま海の映像を見て「怖っ」となって。

――それで歌詞に溺れるとか入っているんですね。

SAIKI そうなんです。それを恋愛と絡めて表現して、海は恋愛にも似ているなと思いました。それによって自分らしさも出すことができた歌詞になったと思います。でも、小鳩はこの歌詞を見た時恥ずかしかったみたいですけど(笑)。

小鳩ミク すごくSAIKIらしい歌詞になってますっぽ。私は自分の感情はあまり詞に乗せないタイプなので。SAIKIのことをよく知っているからこそSAIKIの中身を見せられているみたいで照れ臭くなってしまったっぽ。でもそれがこの歌詞の良さだと思っていて、すごく真っ直ぐでポジティブな言葉でもSAIKIが使うことでエロスを感じて。

――それを特に感じさせる歌詞は?

小鳩ミク <癖になっちゃう どうなってんの>ですっぽ! これは私には出てこないフレーズですっぽ。

SAIKI これは私が普段よく言っている言葉ですね(笑)。なので、考えて出したものではなく自然と出てきた言葉で、歌っていて口が気持ちいいんです。あと、あえて重い言葉を選んでしまうところも私らしさもあって、自分の恋愛観も少し入っていて、誰しもが持っている恋愛の闇の部分を出せたんじゃないかなと思います。

――自然体の歌詞なんですね。さて、もう一曲「火花」は全日本大学eスポーツ対抗戦バトルテーマソングでアグレッシブですね。

小鳩ミク めちゃくちゃ銃を撃ちまくる曲ですっぽ(笑)。勢いがあるのですごくお給仕映えすると思いますっぽ。この曲もタイトルはレコーディングが終わってから考えましたっぽ。

――それは何か理由があるんですか。

小鳩ミク やっぱりボーカルが入ってからつけた方が、雰囲気もわかるのでいいかなと思ったのと、この曲に関しては漢字、日本語のタイトルにしたいなと思いましたっぽ。

――先ほどお話に出た、英語のフレーズで<You know the drill.>というのがあって、最初drillってなんだろうと思ったんですけど、調べたら「やるべきことはわかっている」といった良い言葉で勉強になりました。

SAIKI 私もなんでここでdrill?と思いました。

小鳩ミク 確かにdrill?と思いますっぽ(笑)。色々歌詞で使えそうな言葉を調べていて、そういう意味なんだと知ってから絶対どこかで使いたいなと思っていて、今回上手く曲にハマって。なかなか学校の勉強では学ばない言葉ですっぽ。

SAIKI 「Corallium」に出てくる英語は逆に日本人が使いそうなものにしています。英語では表現できない日本人の感情っていっぱいあるじゃないですか。恋愛で感じる溺れたいという表現も、それに変わるものが英語にはないみたいで。あちらでは結局愛してるという表現になってしまうみたいなんです。

――その表現を海外の方が聴いた時にどう感じるのかも楽しみですね。

小鳩ミク 動画を出すタイミングで日本語と英語を訳した歌詞も出しているんですけど、そのやりとりが「Corallium」は面白くなりそうだなと思いましたっぽ。

――そこも注目ですね。では、最後に世界中にいるご主人様、お嬢様にメッセージをお願いします!

SAIKI まだはっきりと先が見えていないのですが、未来は明るいなと確実に思えているので、皆さん心配せずにドンと構えてついてきてくれたら、もっともっとハッピーにしてあげるよという気持ちです。

小鳩ミク なかなかお給仕が出来ていないので、不安に感じている方、お給仕を求めてくださっているご主人様、お嬢様もたくさんいると思うっぽ。それは私たちも同じ気持ちで、今はその時が来たときのためにやりたい曲をどんどん出して行けたらと思っているので、その日が来るまで私たちの音源で楽しんでもらえたら嬉しいですっぽ。

(おわり)

作品情報

■BAND-MAID「Sense」CD
発売日:2021年10月27日
発売元:ポニーキャニオン

・初回生産限定盤 [CD+Blu-ray]
PCCA-06076 / 3,410円(税込)
*デジパック仕様

・初回生産限定盤 [CD+DVD]
PCCA-06077 / 2,310円(税込)
*スリーブケース付き

・通常盤 [CD Only]

PCCA-06078 / 1,320円(税込)
*初回生産分:アニメ絵柄ステッカー巻き帯仕様(オープニング/エンディング 連動デザイン)
(C)Tsugumi Ohba,Takeshi Obata/SHUEISHA,Platinum End Project

TVアニメ『プラチナエンド』放送情報

2021年10月から TBS・BS11ほかにて放送中
TBS 毎週木深夜1:28~
BS11 毎週金夜11:30~
※放送日時は変更になる場合がございます
※全24話を連続2クールにて放送

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