ASCA、音楽で届ける希望 ニューアルバム『百希夜行』に込めた想いとは
INTERVIEW

ASCA

音楽で届ける希望 ニューアルバム『百希夜行』に込めた想いとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年01月19日

読了時間:約12分

 シンガーのASCAが27日、2ndアルバム『百希夜行』をリリースする。前作『百歌繚乱』から約1年3カ月ぶりとなったアルバムは新曲「進化論」から昨年リリースされたシングル「Howling」、話題となった西川貴教とのデュエット曲「天秤 -Libra-」、前作に収録された「NO FAKE」に続いて、ASCAが敬愛する阿部真央がプロデュースした「regain」、親交のあるメンバーと歌唱した「Wings to fly feat. 足立佳奈, MaRuRi, mizuki」など全11曲を収録した。インタビューではアルバム『百希夜行』に込めた想いから、アルバムの制作背景、2021年への意気込みなど、多岐に渡り話を聞いた。【取材=村上順一】

希望を詰め込んだ『百希夜行』

『百希夜行』完全生産限定盤ジャケ写

――ASCAさんのロゴの“C”の中に風車みたいなマークが入ってますけど、これは何をイメージされているんですか。

 デビューする時にこのロゴを作ったんですけど、そこに何かモチーフを入れたいというお話しになって、スタッフさんと考えたんです。いろいろ考えた結果、私は星が好きだったので入れていただきました。他にはお芋とかスタッズとかも好きだったんですけど、ちょっとそれはロゴに入れるのには向いてなくて(笑)。

――芋は難しいですね…(笑)。さて、今回のアルバムも前作『百歌繚乱』と同様に「百」という漢字が入っていますね。

 前作『百歌繚乱』は、色とりどりの曲が入っている、 今後いろんなところで咲き誇ってほしいという想いを込めて付けました。曲が揃ってから四字熟語を探すんですけど、それで『百歌繚乱』にたどり着いたという経緯がありました。今作『百希夜行』には希望というテーマを沢山詰め込んだので、このタイトルになりました。

 今回は2020年の私のテーマ、ファンの皆さんを最高の場所まで引き連れていきたいということが、2021年のテーマにもなるんじゃないかなと思い、“百鬼夜行”という言葉が出てきました。でも「鬼」だとテーマとも合わないし、少しいびつな感じだったので、前作同様一文字もじって「鬼」を「希」に変えました。

――ちょっと気が早いですけど、次作も百から始まる四字熟語ですか。

 ファンの皆さんからも予想されちゃってるんですよ。次は「百戦錬磨」なんじゃないかとか(笑)。たぶん次は全然違うタイトルになると思います。というのも、百から始まる良い言葉が見つからないなと思っていて。

――ファンというところでいうと、ファンコミュニティ「AME(ASCA Music Entertainment)」を2020年の10月に立ち上げられて、約3ヶ月ぐらい経ちましたけどいかがですか。

 ファンコミュニティでは私が社長でファンの皆さんが社員という形でやらせていただいていて、最初の頃は社長というものになりきれてなかった部分があったと思うんですけど、やっと板についてきたなと思っています(笑)。

――ASCAさんから社長になりたいというアイデアを?

 これは私からではなくて、スタッフさんと一緒に考えた中で出てきたアイデアだったんですけど、 社長というワードが出てきた時に「それいいな」と思って。今ノリノリで楽しく社長をやらせていただいています(笑)。

――ファンコミュニティの今後の展望はどんなことを考えていますか。

 今みなさんと会えないなりにもできることをやっていて、皆さんと会えるようになったらまだできていない新入社員歓迎会とか、ホールで集まってやりたいです。あと社歌を作ってみんなと歌えるようにしたいなと思っています。
 
――楽しみがたくさんありますね。さて、今作のレコーディングは11月の終わり、ギリギリまでやっていたみたいですね。今アルバムが完成してどんな気持ちですか。

 今アルバムができて「やっと出来た」という思いが強いです。怒涛の11月で、人生でこんなにレコーディングをしたことない、というぐらいアルバムの曲をたくさん録音しましたし、絶対に風邪をひけないというプレッシャーと戦っていました。

 完成してみて前作の『百歌繚乱』の時よりも自分が伝えたいことをたくさん入れこむことができました。本当に前向きなメッセージで、この時代を一緒に生きていてくれてありがとう、2021年も一緒に生きて行こうね、という思いがこもった一枚になりました。

私にしか出せないものが絶対ある

『百希夜行』初回盤ジャケ写

――すごくいいアルバムができましたよね。 その中でもASCAさんが初めて作曲した「君の街へ」という曲があるのですが、作曲に挑戦した経緯はどんなものだったんですか。

 これまでは作曲することに対してすごく消極的で、「私にはできない」という気持ちがあったんです...。私はすごく恵まれていて周りには素晴らしい作曲家さんたちがいらっしゃって、良い曲をたくさん歌わせていただいているので、私の出る幕はないなと思っていたんです。でも、今作のアルバムのお話をいただいてすごく嬉しくて、今しか書けない楽曲が絶対あると思ったのと同時に、その中で歌詞だけではなくメロディも私にしか出せないものが絶対あるなと感じました。

――どのように制作して行ったんですか。

 『百歌繚乱』の時に重永さんとSakuさんのお2人が集まって私の歌詞にメロディを付けていただいたことがあったんですけど、そこに私も参加してメロディを作れるんじゃないかなと思ったんです。それで重永さんのお家に3人で集まって作曲しました。 私はメロディを作ったことがなかったので、何をどうしたらいいのかさっぱり分からなかったんです。そうしたらお二人が「何か鼻歌で歌ってみてよ」と言っていただいたので、思いついたメロディを歌ってみたんです。信頼しているお二人だったので、緊張もせずにメロディが出てきたんじゃないかなと思います。 そこにSakuさんがギターでコードをつけていただいて、 それを聴いた重永さんがさらにピアノを弾いてくれました。

――この曲はミディアムバラードですけど、それはもともと決めていたんですか。

 曲調は自分の中で決めていました。ASCAの楽曲はドラマチックなものが多いんですけど、この曲はあまり起伏をつける感じではなくて、淡々と思いを語っているような歌にしたかったんです。

――アレンジはライブでもサポートしてくれているAS課ですね。

  ギターとラララで歌ったシンプルな音源を事前にAS課のみんなに聴いていただいて、レコーディング当日に楽器隊全員で同時に録りました。バンドメンバーみんなで作った曲なので、その録り方が一番いいかなと思いました。 アレンジも当日まで完全に決まってない中でのレコーディングだったんですけど、すごく楽しかったです。

――ジャズみたいなレコーディングですよね。 歌詞はツアーへの思いが溢れているなと感じました。

 2020年はいろんなことが中止になってしまいました。私だけじゃなくてファンのみんなも会いたいなと思ってくれていて、ワンマンが中止になるって本当に悔しいなと思いました。みんなに届けたい、絶対会いに行くからねという約束の曲なんです。作曲してる時から<君の街に会いに行くよ>というワードはあって、その言葉から広がっていったという感じなんです。バンドメンバーもファンのみんなに会いに行きたい、という気持ちは持っていたので、そのメンバーとこの曲を作れたことが本当に良かったなと思っています。

――2020年11月に開催された『ASCA LIVE TOUR 2020 -華鳥風月-』を行なわれましたが、その思いも歌詞に反映されていますか。

 はい。ファンクラブから50名の方を無料でご招待させていただきました。その日に会えたことはすごく意味があって、とても幸せな時間だったんですけど、ライブをやったことでもっとみんなに会いたい、直接届けたい、という想いがより強くなりました。その気持ちが<君の街へ会いに行くよ>という言葉に繋がった感覚はあります。

――さて、「regain」は阿部真央さんがプロデュースですね。

 中学時代に真央さんの歌に出会ったんですけど、それはもう衝撃でした。こんなに声色を使い分けてすごいなって。ずっと真央さんを追いかけていたので、プロデュースしていただくというのは私にとってとんでもないことなんです。過去に「NO FAKE」という楽曲を歌わせていただいているんですけど、近いタイミングでこの「regain」も頂いていたんです。「NO FAKE」は私のライブを観る前に書いていただいた曲で、「regain」はライブを観た後に書いていただいた曲なんです。 「NO FAKE」はまさに真央さんといった楽曲なんですけど、「regain」はどんな楽曲にしようかヒアリングしていただいたので、「NO FAKE」とはまた違った曲になりました。

――ヒアリングはどういった感じだったんですか。

  私がどういった人間なのかというのを聞いていただいた感じです。「regain」はまた違った感覚があります。歌詞で<生まれた意味くらいは この手で掴みたいから> とあるんですけど、私のことを思って書いてくださったんだなというのがすごく伝わってきました。ヒアリングの中で自分らしくいることの難しさをお話していて、それはアーティストとして自分の歌を貫くという怖さでした。でも、自分らしく生きることでそこについていきたい、という人が生まれてくるから、すごく大事なことだよねって。そこから自分を取り戻す、という意味で「regain」というタイトルになりました。

――いま取り戻したい物ってありますか。

 もう取り戻せたかなと思っています。真央さんから頂いた「自分らしく行け」というメッセージをいま自信を持って歌えると感じていますし、ここからみんなを引き連れて行かなければいけないので、私はいま未来にしか向かっていないんです。

一緒に生きていこうという思いを凝縮した「進化論」

――「進化論」は『ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング』の主題歌なんですよね。

 「進化論」は私が願っていることや、こういう自分でありたいという想い、一緒に生きていこうという想いを凝縮しました。

――私はこの「進化論」に「Howling」のアンサーソングみたいな位置付けの曲なのでは? と感じた部分があるんです。

 「Howling」完成後に「進化論」の歌詞を書いているので、意識はしていなかったんですけど、つながっている部分はきっとあると思います。「Howling」では独りじゃない、こんな時代だからこそみんなで声を上げていこうということを歌っているんですけど、「進化論」では悲しいことはあったけど、立ち止まっていてはいけない、でも、ただ進むだけではなくて進化しながら進んで行かなければいけないという曲にしました。それは登場人物であるロニエとティーゼにもその思いは重ね合わせたんですけど、私は常に進化していきたいと思っていて、それはきっとみなさんも思っている事だと思うんですけど、私はそれが人一倍強い部分があるんです。<細胞の殻を破って>という歌詞があるんですけど、ここで生まれ変わるということを表現しています。

 このゲームをプレイしていただく方にも楽しんでいただける歌詞になったと思いますし、そこから離れたところでこの曲が流れても、強く生きて行こうという、気概がこの曲から伝わったら嬉しいです。

――レコーディングはいかがでした?

 私は割とスロースターターなんですけど、今回は鮮度を大切にしたいと思って臨みました。それもあってこの曲は数テイクで録り終えることが出来たんです。やれば出来るんだなと思いました(笑)。

――しっかり進化されて(笑)。あと私は「SAYONARA」のサビがすごく気に入ってまして、<no no no no yeah>のニュアンスが絶妙でした。

 嬉しいです。ここは何度も録り直したんです。 この曲を作ってくださった津波(幸平)さんは、レコーディングの時「いい感じですよ」とおっしゃってくれていたんですけど、私は もっと良いものが録れる感じがしていて、ちょっと上に当ててみたり、少し音を伸ばしてみたりして、すごく細かいところなんですけど、こだわりました。

――しかもアッパーな曲なのにちょっとウルッとくるところがあってそれが不思議なんですよね。

 泣きの要素も入れたんです。この曲はデビュー当時からデモがあった楽曲で <さよならは 痛い 痛い 痛い>という歌詞も当時からありました。 このフレーズが頭から離れなくて、すごく今の時代にも合っているし楽曲もすごくキャッチーだったので、この曲を今作に収録したらいいんじゃないかという話になって。

 あと恋愛の曲を入れたかったというのもありました。 過去に配信でリリースした「偽物の恋にさようなら with 分島花音」という曲があるんですけど、その曲は恋愛をした女の子がこの恋は本物じゃなかった、ということに気づいて男性と別れてしまう曲なんです。その曲は女性目線の歌詞だったので、今回は男性目線の曲を書きました。「偽物の恋にさようなら」と対になっている曲なんです。いま傷ついている方達に聴いて欲しい一曲です。

――今作は前半にアッパーな曲が続いて、後半からメロウなナンバーになっていきますが、曲順はどのように考えられましたか。

 「命に嫌われている。」から3曲は言葉をより伝えるゾーンにしたいなと思いました。今の時代を表している3曲になったなと思っていて。このコロナ禍で「命に嫌われている。」はより意味が強く伝わってしまう曲だなと感じています。生きていくことは辛いことも多いと思うけど、だけど生きて行こうねという。

――「命に嫌われている。」はこの状況もあって収録されたんですか。

 はい。アニメ『魔法科高校の劣等生』が延期になってしまって、何か皆さんに届けたいと思い、この曲がいいんじゃないかとなって。ステイホーム明けにレコーディングしたんですけど、歌える喜びがありました。届く人によっては重すぎる歌詞かもしれないんですけど、この時を一緒に過ごしていなかったらおそらくカバーしていなかった可能性もあります。

――どんどん高揚していくのが伝わってきました。

 この曲でしっかり言葉を伝えるというのを決めてレコーディングに臨んだんですけど、転調前までは一発で良い歌が録れました。2020年は生きているだけでもすごいことなんだと思えて、みんなにも生きていて欲しいという想いが歌に強く出ました。京都で行ったライブでこの曲を歌ったんですけど、聴いてくださった皆さんも、感動したと言ってくれて。きっと皆さんもこういう曲を求めているんだなと思いました。

――「Wings to fly」はフィーチャリングに足立佳奈さん、MaRuRiさん、mizukiさんとコラボされていますが、このメンバーが集まったのはどんな流れがあったんですか。

『百希夜行』通常盤ジャケ写

 私と親交が深い方達なんです。この曲はとにかくハッピーにアルバムを終わりたいと思ったので、これまでのASCAにはないピースフルな楽曲にしたかったんです。「君の街へ」もそうなんですけど、日本だけではなく世界中のファンの方へ届けたいと思いました。

 このハッピーな楽曲をより幸せな形で届けたいと思い、3人に声を掛けさせて頂きました。録る前からこのメンバーで歌ったら「絶対良いものか出来る!」と思っていたのですが、完成してみたらその予想を超えてきました。3人の歌声もすごく個性的で、彼女たちが歌っているパートの歌詞も一人ひとりにすごく合っているので、ぜひ注目して欲しいです。

――「命に嫌われている。」、「君の街へ」からの「Wings to fly」はグッとくるものがありますよね。このセクションは皆さんもこの曲順、流れで聴いてもらいたいなと思いました。最後に2021年の意気込みをお願いします。

 2020年を一緒に生き抜いたみんなに届けたい1枚ができました。生きてさえいれば絶対に希望は見えてくるし、私がその希望をみんなに見せられるような存在になれたらいいなと思っています。そして、みんなに伝えたい曲ができたので、ライブが開催できるようになったら会いに来てほしいです。聴いてくれるあなたの心が震えるような1枚になることを祈っています。

(おわり)

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