2019年3月、突如YouTubeに現れたAnonymouz(アノニムーズ)。J-POPの英語カバー、独特な世界観と歌声が話題を呼んでいる。AnonymouzのYouTube登録者数は12万人を突破。1st EP『No NAME』はiTunesオルタナ1位、総合4位を獲得。最新曲「Eyes」で11月より地上波オンエアの Sony Xperia 5IIのCMタイアップソングに抜擢。ここではAnonymouz が11月6日にリリースした2nd EP『Addiction - EP』にフォーカスし、Anonymouzの魅力に迫る。

名前のない女の子

 Anonymouzの洋楽テイストの楽曲、歌唱テクニックがRADWIMPSの野田洋次郎や藤井風にも称賛されており、Youtube総再生数1000万回超えと反響を呼んでいる。そんなAnonymouzのアーティストコンセプトは以下のようだ。

 “ある日突然自分の名前を失った19歳の少女・・・。絶望や落胆の中、彼女はまだ旅の途中。Anonymouz (アノニムーズ) - 名前のない女の子。彼女は本当の名前を探して、歌を歌う。”(Anonymouz のTwitterアカウント、YouTubeチャンネル概要欄より)

 アーティスト名からしてミステリアスな存在のAnonymouzは、J-POPの英語カバーが総再生回数1000万回超えという破格の数字が注目を浴びていることを物語っている。

 彼女がこれまでカバーした楽曲は、Official髭男dismの「Pretender」、King Gnuの「傘」、LiSAの「紅蓮華」、RADWIMPSの「告白」、藤井風の「もうええわ」、瑛人の「香水」、米津玄師の「Lemon」、YOASOBIの「夜に駆ける」、宇多田ヒカルの「初恋」など、J-POPの中でもジャンルに偏ることのないシームレスな選曲。

 Twitterなどでは、Anonymouzの歌唱力、そして日本語詞を英語に訳して韻を踏んでいるという英語翻訳スキルについてなどに絶賛の声が上がり、話題を呼んでいる。

独自性と統合性

Anonymouz『Addiction - EP』ジャケ写

 2nd EP『Addiction - EP』の1曲目「Your Plan」を聴くと、途中の日本語詞の部分に入るまでこの曲を洋楽と思うリスナーは少なくないのではないだろうか。ビートのリッチなテイストと構築、ベースのLowの帯域の深み、シンセサイザーの特有のザラつきの音色、そしてメロディラインや楽曲構成も、J-POPとはどこかテイストが異なる。それらは海外サウンドのアプローチと言っても過言ではないと思われる。

 2曲目「Thrill」以降の楽曲でも同様のことが感じられる。AnonymouzのこのEPのサウンドを、どんなジャンルかと言い表すのは難しいのではないだろうか。メロディアスに、ポップに歌を聴かせる部分もあれば、ディープなアンダーグラウンドな雰囲気を感じさせる部分もある。ダンスミュージックの爽快なテイストや“チル”の味わい、HIP HOPの要素も含まれている。そして、オルタナティブなアプローチがありながらも、好みが分かれるような突き放すフィーリングではない。

 彼女の楽曲は、“anonym:匿名の、匿名者”という単語が混じるアーティスト名と合致しているような、よい意味での掴み所のなさと特有の魅力が感じられる。本作ラストトラックの「Eyes」の美麗なメロディとストリングス、雫のようなピアノの音色、一編の物語のような壮大さと繊細さを併せ持つアレンジメント、楽曲展開には、人を恍惚とさせる成分がふんだんに含まれているようで、聴き手を包み込むような空気感を醸している。

 Anonymouzの魅力の特筆すべき点としては、「歌唱力が格段」「サウンドがとにかくクール」「ビートが特にハイクオリティ」「ソングライティングや歌詞がよい」など、これらのように挙げられる要素のいずれかが突出しているというよりは、「全ての音楽的要素の質が高く、統合性のとれたミステリアスな独自性」ではないだろうか。

 本作『Addiction』というタイトルのように、一聴してその世界観に引き込まれ、後を引く感覚のAnonymouzの音楽性。彼女の音楽が今後どう展開していくのか、どのような方向に進み、どうリスナーを魅了するのか、それはあまりにも未知数であり、さらなる期待の念が集まりそうだ。【平吉賢治】

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