7人組多国籍音楽集団のALIが27日、EP『LOVE, MUSIC AND DANCE』をリリース。ALIはファンク、ソウル、ジャズ、ラテンなどのルーツミュージックにHIP HOPをクロスオーバーした東京・渋谷発のバンド。メンバーはLEO(Vo)/KAHADIO(Dr)/YU(Sax)/ LUTHFI(Ba)/ALEX(Per)/JIN(Key)/CESAR(Gt)。リーダーでボーカルのLEOを中心にメンバー全員が日本とヨーロッパ、 アメリカ、アジア、アフリカなどをルーツにもつ。ここでは本作の各楽曲を中心に、ALIの音楽性の魅力に迫りたい。(CESARのEは正式表記はアキュート・アクセントの付いたもの)

稀有の独自性とグルーヴを放つALI

『LOVE, MUSIC AND DANCE』ジャケ写

 ALIの音楽からは圧巻の魂の熱量とグルーヴが感じられる。彼らの音楽性は、ブラックミュージックやダンスミュージック、ロックなどの多様な音楽性をミックスしながらも、稀有の独自性が感じられる。それは、「HIP HOP」「ダンスミュージック」「ファンク」「ハウス」など、決して一言ではくくれない音楽性。どのパートのプレイも熱量と体温があまりにも高く、濃く、それでいて全てが混じり合い、「ALI」というひとつの塊となってグルーヴしている。

 ソウルフルであり、ファンキーでもあり、ロックの叫びも感じられる。各メンバーのプレイ感、音像の立体感はくっきりしていながらも、それらが一つの集合体として出力され、自然と体と心を揺さぶってくれる。

 彼らのルーツは、様々な国の音楽のテイストから感じられる。しかし、ピンポイントで「どのアーティストからの影響を」という匂いをほとんど感じさせない。それは、ありとあらゆる音楽性をALIが吸収し、自身のものとして昇華させていることの表れなのではないだろうか。源流に(これらは憶測だが)スティーヴィー・ワンダーやジェームス・ブラウン、ビートルズ、ニルヴァーナなどの存在があるのか、そうであっても、そうでなくても納得するような“音の説得力”を彼らの音楽から感じることができる。

 ALIの魅力は全世界へ波及しているようだ。YouTube「ALI-LOST IN PARADISE feat. AKLO(Music Video)」の動画再生回数は1,200万回超えという破格の数字を示している。そして、コメント欄には英語、スペイン語、フランス語など、海外からのコメントも目立ち、彼らの音楽を評価する声が上がっている。そんなALIの最新作、EP『LOVE, MUSIC AND DANCE』各曲にフォーカスしていこう。

全7曲から感じられるALIの魅力

 本作1曲目、「FEELIN' GOOD feat. 梅田サイファー(KOPERU, peko, KZ, R-指定)」から、彼らの強力なグルーヴは瞬時に体感できるだろう。個人的解釈だが、あらゆるグルーヴのある音楽からは、「複数の楽器が合わさり、グルーヴが生まれる」という感じ方をすることが多いのだが、ALIの場合は、各パートの単体トラックを聴くことができた場合、1つのパートだけでも十分なグルーヴを感じることができると思われる。それらが合わさった時のグルーヴのパワーを掛け算で表すとしたら、「何乗(累乗)」というような計算式が頭に浮かぶほどだ。いいや、決して数値化できない強大なパワーがあるという方が適しているだろうか。

 <野生の本能は止められない 心臓の鼓動また早くなり 体が動き出して熱くなり>という歌詞が綴られる「FIGHT DUB CLUB feat. J-REXXX, RUEED」は、その歌詞の言葉が正に体現されている。グイグイと引っ張られるような4つ打ちメインのグルーヴがリスナーのBPMと同期させる。

 「MUZIK CITY feat. なみちえ, 6B, ALONZO」はストレートかつ比較的シンプルなコード進行ながらも、リズムセクションが色鮮やかだ。そして、厚くも煌びやかなコーラスワーク、多様なボーカルのアプローチがめくるめくタイム感で交差し、飽くなき約4分間を味わわせてくれる。

 「KEEP YOUR HEAD UP feat. KAZUO」も4つ打ちビートのリズムの楽曲だが、「踊れるダンスミュージック」というような一言では言い表しがたい深みがある。その背景には、ベースの緻密な裏拍の取り方、ラップの鋭い拍、4コードのループの中にも様々なアプローチが見られるギターカッティング、ドラムのハイハットやライドシンバルの刻み方もセクション毎のストーリーがあったりと、様々な要素が挙げられる。

 「METROPOLIS feat. HIYADAM」ではパーカッションの血の通ったリズムが印象的で心地良く耳と体に響く。生々しいギターのクランチサウンドは艶めかしく楽曲内で舞うように演奏されている。清涼感としっとりとした湿度を併せ持つグッドフィーリングのナンバーだ。

 「DAZE N SUNSHINE feat. SHING02」では、浮遊感のあるエレピのプレイや空間系サウンドのギターのアンビエンスと色気漂うSaxの音色から、洗練されたアーバンテイストが滲み出ている。暖色とも寒色とも感じさせてくれるHIP HOPとチルの融合だ。

 「BETTER DAYS feat. DOS MONOS」では、ストレートに入り込んでくるラップに迫り来る16ビート、ワイドに広がるコーラスワーク、楽曲構成の緩急で生じるダイナミズムと、最後の最後まで、曲の展開の予想を裏切るようで期待に沿っているような、えもいえぬ力で聴き手を牽引してくれる。

 冒頭に「ファンク、ソウル、ジャズ、ラテンなどのルーツミュージックにHIP HOPをクロスオーバー」と記したが、確かにそれは言葉通りでもあり、それをも凌駕したものを本作から感じられることができる。多国籍音楽集団である彼らの音楽は、ダンスミュージックが好き、ブラックミュージックを主に聴く、ロックが主体、様々なカラーのリスナーの心を引き寄せる多大な力を秘めていると感じる。

 ALIは、様々な音楽要素を含みつつ確固たるオリジナリティを孕み、音に血を通わせている。彼らが放つ音楽のバイブスを受けると体が能動的に揺らぎ、心を躍らせてくれる。“圧巻の魂の熱量とグルーヴ”を感じさせてくれるALIの活動への注目は、今後もより一層高まると思われる。【平吉賢治】

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