AKINO「ソロでも決して一人ではない」15年間続けることができた音楽との絆
INTERVIEW

AKINO from bless4

「ソロでも決して一人ではない」15年間続けることができた音楽との絆


記者:榑林史章

撮影:

掲載:21年03月24日

読了時間:約11分

 AKINO from bless4が24日、ソロデビュー15周年を記念した15thアニバーサリーアルバム『your ears, our years』をリリース。兄妹ユニットbless4のメンバーとして2003年にメジャーデビューし、2005年にアニメ『創聖のアクエリオン』のオープニングテーマ「創聖のアクエリオン」でソロデビュー。その後『アクエリオンEVOL』、『甘城ブリリアントパーク』、『艦隊これくしょん~艦これ~』など人気アニメ作品の主題歌を担当し、ソウルフルなボーカリゼイションで世界中にファンを持つ。今作『your ears, our years』は、3枚組にAKINOのソロ名義の作品をほぼ網羅した38曲のほか、新曲「your ears, our years」も収録。本作について話を聞くとともに、ソロデビューしてからの15年を振り返ってもらった。【取材=榑林史章】

「創聖のアクエリオン」のオーディションはボロボロだった

『your ears, our years』通常盤ジャケ写

――15周年を迎えたことについて、率直にどんなお気持ちですか?

 すごくうれしいです。この『your ears, our years』というタイトルの通り、みなさんが私たちの歌を聴いてくれるから、大事にしてくれるから、私は15年経っても歌い続けていられていると思っているので、感謝の気持ちでいっぱいです。この作品には私の想いがいっぱい詰まっていて、言い換えるなら私からみなさんへの濃いラブレターのような作品になったと思います。

――きっかけになった「創聖のアクエリオン」は、いろんなチャートで1位を獲得するなど、長く愛されています。その当時のAKINOさんはまだ15歳でしたが。

 私と弟のAIKI、そしてお姉ちゃんのKANASAの3人が、「試したいレコーディングがあるので、これ覚えて」と、1日前に音源を渡されたのが最初でした。私は覚えるのが遅いので必死に当日の朝の5時までかかって覚えたのですが、本番を迎えてブースに入ったらパッと頭が真っ白になってしまって。唯一うまく歌えたのがサビで、それ以外はボロボロでした。もう情けなくてすごく落ち込んでいたんですけど、なんと「ソロデビューしませんか」と言われて。

 当時の私はまだ少しシャイだったし自分に自信がなかったから、自分には無理だと思ったんですけど、家族の応援や「創聖のアクエリオン」を作曲した菅野よう子さんが私を信じると言ってくれて。みんなが私を信じてくれるのだから、私もみんなを信じて一歩踏み出してみようと思って、「創聖のアクエリオン」でソロデビューすることになりました。

――ボロボロだったのに合格したのは、どこが評価されたのか後で話は聞いたんですか?

 その時は聞けなかったんですけど、菅野よう子さんと雑誌で対談させていただく機会があって。その時に聞いたのは、「AKINOちゃんの初々しさと純粋さ、高音がすごく良かった」と。菅野よう子さんと言えばアニソンを歌う者にとっては神で、その菅野さんのオーディションには歌が上手い人がいっぱい集まります。「だけどAKINOちゃんの高音が一番響いた」とおっしゃっていただいて、すごくうれしかったです。

――そういう意味でも、原点と呼べる1曲ですね。しかし「創聖のアクエリオン」にはMVが無くて、今回初めてMVを撮影したとのことですが。

 リリースから15年後にMVを撮影するというのは、本当に珍しいことで、私にとっては奇跡が起きたくらいうれしいことです。それに音源は15年前の私の声なので、ある意味で15歳の私と今の私がコラボレーションした作品になっています。

――東京駅で始まり浅草や上野など東京の名所がたくさん出てきますが、それは海外のファンにもたくさん見てほしいということで。

 はい。「創聖のアクエリオン」は海外のライブでも、すごく盛り上がるんです。みんな日本のアニメや文化が大好きで、みんな最初から最後まで完璧な日本語で一緒に歌ってくれます。そんな海外のみなさんなら日本文化が満載のこのMVは、ダブルでよろこんでくれると思います。今後みんなが日本に来られる状況になった時は、聖地巡礼のように私が歌ったのと同じ場所で歌って踊ってくれたら最高です。

――AKINOさんたちがペンライトを振ってオタ芸をやっているシーンもあって、あのシーンはファンへの愛だなと思いました。

 そう思ってくださってうれしいです。今までたくさん歌ってきて、たくさんの人からパワーをもらったので、このシーンでは自分の恩返しの気持ちを100%届けたいと思って頑張りました。撮影のためにオタ芸の練習をしたんですけど、やってみるとすごくパワーがみなぎるんですね。みんなこうやって、こういう気持ちで愛を送ってくれていたんだなと分かって感動しました。実際にライブで歌う時も、そのシーンになったらステージの私とみんなとで、一緒にやれたらいいなと思います。

私を変えてくれた麻倉未稀さんの「ヒーロー」

『your ears, our years』初回限定盤ジャケ写

――そして今作には、アルバムのタイトルにもなっている「your ears, our years」という新曲も収録しています。

 お兄ちゃんのAKASHIが作曲、お姉ちゃんが作詞、アレンジは「エクストラ・マジック・アワー」や「Golden Life」の作曲・編曲などを手がけてくださっている鴇沢直さんです。初めてこの曲を聴いた時は、すぐ大好きな曲だと思いました。元気で明るくて、「みなさん一緒に歌いましょう! カモン・フォロー・ミー!」みたいな(笑)。

――明るくハートウォームな楽曲で、ゴスペル風の感じもあってすごく胸に響く曲ですね。

 ありがとうございます。15年、本当にいろいろな気持ちがあって。音楽が大好きな気持ちで15歳の時にデビューして、音楽が怖くなって嫌いになった時期もあり、それを乗り越えて今は音楽が本当に大好きです。音楽と出会った奇跡、みなさんと出会えた奇跡、たくさんのアニメやゲーム、私を支えてくれているみなさんと出会えた奇跡に対する感謝をこの歌に込めました。

――歌が嫌いになった時期があったんですか?

 初めて「創聖のアクエリオン」をテレビで歌った時に、どんな子が歌っているのか、みなさんが想像していたAKINOと私のイメージが合わなかったみたいで、容姿に対するひどいことをたくさん言われて。自分では気にしないでいたつもりだったんですけど、思っていた以上に心に影響があって、ある時ステージに立った瞬間、お客さんのことが怖くなってしまったんです。お客さんがどういう目で私を見ているのか疑心暗鬼になって、そのうちステージに立つだけで心臓がバクバクして手も震えて、上手く歌えなくなってしまって。

――トラウマみたいになってしまったんですね。

 そうなんです。ステージに立つのも怖いし心がぐちゃぐちゃになって、それが3年くらい続きました。でも、いつも兄弟たちが側にいてくれたことが救いでした。毎回ステージを終えて泣いていると励ましてくれて、すごく心強かったです。ある時お兄ちゃんが、「音楽は漢字でどう書くの? 音楽は楽しく歌わなくちゃいけないよ」って言ってくれて、その時ハッとしたんです。私が歌っていた音楽は、楽しい音ではなく苦しい音だったと。お兄ちゃんの言葉が、改めて音楽の深さや楽しさを考えるきっかけになって、それから少しずつ音楽に対する苦しさや怖さが薄れていきました。ソロでステージに立っている時も決して一人ではない。兄弟や家族がいてくれるし、応援してくれる人がいるから私は歌える。改めてそう思ったら歌うのが楽しくなって、自分から歌いたい気持ちがどんどん溢れるようになって、また以前のように歌えるようになったんです。

――非常にドラマチックな楽曲で、とくに雰囲気が変わる大サビは聴き応えがありますね。

 レコーディングにはお兄ちゃんも立ち会ってくれて、その大サビは「ディズニーみたいな感じで、エルザを助けに行く時のアナの気持ちで歌ってみよう」とディレクションしてくれました(笑)。今の時期は、ライブに行きたいとか友だちと会いたいと思っても行くことが出来なくて、まるで暗闇の中にいるみたいだけど、でもきっとその中には小さな光があると思っています。その光は一人で見つけることは難しくても、仲間や助けてくれる人がいれば、光を見つけて暗闇をキラキラと輝かせることが出来る。この曲が、みんなが光を見つけるための助けになったら良いなと思っています。

――あと、この曲ではAKINOさんの声の最高音が使われているそうですが。

 今まで出した最高音がAだったんですけど、今回は新しいことにチャレンジしたいとお兄ちゃんに話をして、今まで出したことがなかったA#にチャレンジしました。

――今後どこまで高くなるんでしょうね。

 私の目標は、Cまで出せるようになることです! よくファンの方から「高音を出す秘訣を教えてください」と聞かれるので、自分でも研究するようになって。今では発声方法や高音が出しやすくなる筋トレなど、ワークショップで教えることもしています。一つ言えるのは、声が通りやすくなるように口を大きく開けることです。でも、そのおかげで私のライブ写真は、どれも変な顔ばかりなんですよ。大きな口を開けてマイクを食べそうな勢いの顔ばかりです(笑)。

――そんなAKINOさんに影響を与えた曲は何ですか?

 私を変えてくれた曲は、ドラマ『スクールウォーズ』のテーマソングで麻倉未稀さんが歌った「ヒーロー」です。

――すごく意外ですね。

 再放送をやっていて、その曲を初めてテレビで聴いた時は、「何この曲!?」ってすごく感動したんです。子どもの頃の私はシャイで、いつもお姉ちゃんの後ろに隠れている子だったんです。「ヒーロー」と出会った時は9歳で、自分でも変わりたいと思ってきっかけを探していた時に、お父さんが1カ月後に「ヒーロー」を歌えるようにという課題を出してくれました。お父さんのレッスンはすごく厳しくて、いっぱい泣いたし悔しかったけど、変わりたい気持ちが大きかったから頑張ることが出来ました。1カ月後にステージで歌った時は、お客さんから「素晴らしかった」「感動した」などたくさんのうれしい声をいただいて、人は1カ月でも変われるんだなとか、歌って楽しいし気持ち良いんだなって実感しました。自分の殻を破るのは、すごく大事だなと思いました。それ以来「ヒーロー」は、カラオケで必ず歌う定番です。

――もしその時「ヒーロー」と出会っていなかったら?

 ファッションが好きだったし、料理も好きだったので、もしかしたら料理関係の仕事に就いていたかもしれませんね。

――では最後に、AKINOさんにとって歌うこととは?

 今の私にとって歌うことは、感謝の気持ちを表すことかもしれません。この15年間歌ってきて思うのは、みんなと出会えたから今の私がいるということ。みんなからパワーをいただいて、みんなからたくさんの愛をもらったので、自分が何か一つでも恩返しが出来るとしたらそれは歌うことしかない。だから感謝の気持ちを忘れない人になりたいし、その気持ちだけで純粋に歌えることが出来たら最高だなと思います。

(おわり)

作品情報

AKINO from bless4
15thアニバーサリーアルバム
『your ears, our years』
3月24日発売

初回限定盤(CD+Blu-ray) 【VTZL-181】 4,500円+税
通常盤(CD) 【VTCL-60540~60542】 3,500円+税

<収録曲>
【DISC1】
1.創聖のアクエリオン
2.ニケ15歳
3.荒野のヒース
4.Go Tight!
5.プライド~嘆きの旅
6.Genesis of aquarion
7.Genesis of LOVE
8.素足
9.パラドキシカルZOO
10.イヴの断片
11.君の神話~アクエリオン第二章
12. 月光シンフォニア
13. ZERO ゼロ

【DISC2】
1.エクストラ・マジック・アワー
2.Jet Coaster Ride
3.海色
4.The Ghost of You
5.雪のように
6.Let‘s Fly
7.EXTRA MAGIC HOUR [international Edition]
8.Golden Life
9.ドキドキするから
10.cross the line
11.I Got This
12. OVERNIGHT REVOLUTION
13. 月のもう半分
14. 月明かりのMonolouge
15. Etoile de priere
【DISC3】
1.Chance to Shine
2.運命の前奏曲
3.愛と絶望のイデア
4.Chase the WAVE
5.What Am I Fighting For
6.シラカバの光
7.運命のプロローグ
8.The End begins
9.Soccer Spirits
<新曲>
10.your ears, our years

【初回盤BD】
1:「創聖のアクエリオン」ミュージックビデオ
2:「cross the line」ミュージックビデオ

■公演情報

AKINO15周年コンサート「your ears, our years」
4月14日 神奈川・CLUB CITTA'

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