aiko「昔の感触を大事にしていきたい」ニューシングル「ねがう夜」に迫る
INTERVIEW

aiko

「昔の感触を大事にしていきたい」ニューシングル「ねがう夜」に迫る


記者:編集部

撮影:

掲載:22年05月02日

読了時間:約6分

 aikoが4月27日に、約7カ月ぶりとなる通算42枚目のシングル「ねがう夜」をリリースした。表題曲の「ねがう夜」を初め、カップリングにはどちらも新録となる「友達になりたい」と「ゆあそん」を収録。表題曲の「ねがう夜」は、自分自身が感動できるもの、リスナーにも何かを感じてもらえる曲をイメージしながら制作されたという。インタビューではシングル「ねがう夜」の制作背景から、音楽を続けていく原動力、自身が追求していることなど、まもなくデビュー24周年を迎えるaikoの今に迫った。【もりひでゆき】

夢に翻弄されている気持ちが曲になった

「ねがう夜」通常盤ジャケ写

――aikoさんは今年に入ってたくさんの曲を作られたそうですね。新曲「ねがう夜」はその中の1曲になりますか?

 はい。私は自分で曲を作るようになった頃、1曲1曲ができあがったときにものすごくうれしかったんです。今年でデビューから24年経つんですけど、今も変わらずそういった昔の感触を大事にしていきたいなと思っていて。そんな気持ちで作った十数曲の中のひとつが「ねがう夜」でした。自分自身が感動できるもの、そして聴いてくださる方たちにも何かを感じてもらえる曲をイメージしながら、今まで以上に自分の好きなことをやりたいように詰め込んでいった感じでしたね。

――様々なメロディが次々とあらわれ、ころころと転調していく流れがすごく楽しい曲ですよね。トオミヨウさんによるアレンジと相まって、聴いているとものすごくワクワクしてきます。

 トオミさんのアレンジを聴いたときは私もすごくワクワクしました! 2度、3度と聴くたびに新しい感触を味わえるんですよ。アレンジに刺激されたことで新たにつけ加えたメロディもありましたし、ちょっとユニークなコーラスを入れてみたりもしましたね。

――歌詞では、かつての恋人が夢に現れたときの心の揺れ動きが描かれています。

 別れてからけっこう時間が経っているのに、ひょっこり夢の中に昔の相手が出てきて複雑な気持ちになって目覚めることがよくあるんですよ(笑)。自分でコントロールすることができない夢というのはおもしろいものでもあるけど、その日のテンションを決めてしまうくらい重さのあるものだったりもして。そうやって夢に翻弄されている気持ちが曲になりましたね。

――<かき氷の雨><勘違いの苺味>というフレーズがすごく印象的で。これはどんなイメージで出てきたものなんでしょう?

 この歌詞を書いているときにみぞれが降ってたんですよ。「わ、雪や!」と思ったらみぞれだったからちょっと肩透かしを食らってしまったというか。それを恋愛の中での感情に重ね合わせましたね。<かき氷>という言葉を使ったので、それに引っ張られて<苺味>も出てきました。苺味やから美味しいと思ったらちょっと違ってたっていう感情を、好きな人への勘違いに重ねたっていう。

――全編通して心地よいボーカルが流れていますが、レコーディングはいかがでしたか?

 レコーディングはものすごく楽しかったです。Aメロとサビのメロディがちょっとジャンルの違ったタイプなので難しさもあったんですよ。でも、そこを流れるように気持ちよく歌えたのが自分でもすごくうれしくて。自分の歌で「ちゃんとひとつにまとまった!」という感覚になれましたね。

――カップリングの「友達になりたい」は壮大なバラードですね。

 これは去年作った曲ですね。私は好きな人に対しても友達に対しても、「この関係はいつまで続くんだろう」っていう恐怖が常にあるんです。もしさよならするときが来たらきっと耐えられないから、あまり踏み込まず程よい関係のままにしていこうかなって思ってしまうというか。築き上げてきたたくさんの大切な思い出があればあるほど、どうしようもない感情になってしまうので、最終的には<別の時代に生まれたら良かった>と思ってしまうっていう、そんな曲になりました。元々はシンプルなサウンドをイメージしていたんですけど、トオミさんが厚みのあるストリングスを入れてくださったことで、せつなくて素晴らしい仕上がりにすることができました。

――感情をグッと抑えたボーカルがせつなさをより増幅させていますよね。

 自分の心の中で静かに、誰にも言えずに思っている気持ちを歌いたかったんですよ。なので、ビブラートをつけたりとかフェイクをしたりとかそういったイメージではなく、比較的淡々と歌うことにしました。感情の部分で歌うのが難しい曲でもあるので、ものすごく体力は使いますね。一回歌うごとに「ふぅ」って休憩しながらレコーディングしてました。この曲は久しぶりのスタジオでの歌録りだったので、聴こえ方にちょっと普段と違うところがあって。そういう面ではすごく新鮮な気持ちで歌うこともできました。

――もう1曲は「ゆあそん」。島田昌典さんがアレンジを手掛けた、心地よいグルーブ感を持った1曲です。

 恋愛に対して不安でせつない気持ちはあるんですけど、でもそれが決して後ろ向きではない状態というか。相手への好きという気持ちが勝っているから、その想いで乗り越えてしまおうとしている強気な自分が出た曲のような気がします。曲自体は2年くらい前にできたんですけど、今回島田さんにステキなアレンジをしていただいたことで、最後のパートのコードを変えたんです。それによって「こう歌いたいな」っていうイメージもより明確になったんですよね。

――aikoさんの歌に満ちたブルージーな要素は周知されていることだとは思いますが、この曲ではそこがいつにも増して色濃くあらわれている印象を受けました。

 この曲は普段よりもクォータートーンを使ったブルージーな雰囲気を自然に出そうと思って歌いました。例えば“ド”というひとつの音階も、細かく見ていくと10個くらいのレベルにわかれていたりもして。私は自然に歌うとそのレベルの後ろの方にぶら下がって歌うクセがあるんです。そこを自分では直したいなと思っていたりもするんですけど、今回はそれが気にならないメロディだったので、自然とぶら下がったり、もたれかかったりしながら歌えた気がします。全体的にもったりした感じで、気持ちよく歌うことができました。

aikoが今追及していることは筋肉

「ねがう夜」初回盤ジャケ写

――本作のリリースと同時に、ファンクラブツアー「Love Like Rock Limited vol.2」の開催が発表されました。全16本のライブをどんな気持ちで周ろうと思っていますか?

 コアなファンのみなさんたちに向けたライブなので、いつもとは違った雰囲気の内容にできればなと思っています。みんなの想像の斜め上を行くようなライブをしたいですね。

――デビューから一度も止まることなく走り続けているaikoさんにとって、何が音楽を続けるための原動力になっているんだと思いますか?

 音楽が大好きで、歌っていると気持ちいいという感情が自分の中にはずっと変わらず当たり前のものとしてあるので、原動力と呼べるものは基本的にはないんですよ。ただ、そうやって自分の好きな歌を歌えている状況の中で、たくさんの人がそれを聴いてくれて、いろんな感想を伝えてくれる。ライブでは楽しそうな笑顔を見せてくれる。そういったファンの方の存在が私にとっての栄養になっていることは間違いないですね。

――では、今のaikoさんが追求していることとは?

 今追及していることは、筋肉かな。一昨年の年末くらいからハウスダンスを習っているんですけど、それによって脚の筋肉がライブにとってどれだけ大事かっていうことにあらためて気づいたんですよ。あとは声帯も筋肉なので、そこをいかに衰えさせないかもすごく大事だなって思うんです。こないだ耳鼻科の先生に聞いたところ、私の声帯はアスリートの筋肉みたいになってるらしくって。スポーツ選手って練習を1日休むと筋力が1週間前に戻ってしまうらしいんですけど、私の声帯も同じ感じみたいなんです。ちょっと驚いたんですけど、でも毎日歌い続けていればずっと声が出続けるってことなので、安心してうれしくなっちゃいましたね(笑)。

――今年の7月17日でデビュー丸24年。そこからはいよいよ25年目に突入しますね。

 あらためて聞くとピリッとしますね。24年も歌い続けてこられたことが本当にうれしいです。ただね、それだけの時間を過ごしてきてもなお、新しく出てくるアーティストやミュージシャンの方にはすごく刺激を受けるし、「負けたくない!」ってめちゃくちゃ思っちゃうんですよ(笑)。私はこれからもそういう気持ちを大事にしつつ、血気盛んに生きて行きたいなって思ってます。ここからは「ちっちゃなくせして血気盛ん」をキャッチコピーにしようかな。あかんか(笑)。

(おわり)

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