INTERVIEW

花岡すみれ

「いつも自然体でいられたら」役者としての姿勢


記者:村上順一

写真:

掲載:22年11月24日

読了時間:約7分

 女優の花岡すみれが、現在放送中の日本テレビ系列『ZIP!』朝ドラ『クレッシェンドで進め』に出演。主人公・樫浩太(演・細田佳央太)とともに合唱コンクールで優勝を目指すクラスメイトで、国公立の医学部を目指す優等生の竹内を演じる。花岡は「カカフカカ -こじらせ大人のシェアハウス- 」(MBS)でデビューし、その後「ハケンの品格」(NTV)、「ボイスII 110緊急指令室」(NTV)など数々の作品に出演。連続テレビ小説『ちむどんどん』でヒロイン・暢子(演・黒島結菜)が務めるイタリア料理店のオーナー・大城房子(演・原田美枝子)の亡き妹・智子を演じ反響を集めた。インタビューでは、11月9日に19歳を迎え10代最後の1年となった心境から、ドラマ『クレッシェンドで進め』の撮影エピソード、学生時代での合唱の思い出や、いま追求していることなど、話を聞いた。(取材=村上順一)

常にワクワクしていたい

『クレッシェンドで進め』場面写真

――2022年も残りわずかになってきましたが、花岡さんにとってどんな1年でした?

 3月に高校を卒業して、学生ではなくなったことがすごく大きなことです。生活面だと学生料金じゃなくなったとか、色々あるんですけど(笑)。これまでは学生という肩書きに、ちょっと守られているようなところがありました。私は大学に進学しないと決めたので、社会人、一人の人間として生活していかなければいけないと思っていて、責任というものがのしかかってくる1年になったと思います。焦りみたいなものもあったのですが、先日19歳になって、10代もあと1年で終わりなんだと思ったら、ポジティブな方に気持ちも切り替わってきました。2022年は子どもだった部分と大人への意識が入り混じった1年でした。

――進学される選択肢もあったのでしょうか。

 専門学校も含めて、今これをやりたいというものがなかったんです。進学するのも良い経験にはなると思うのですが、今は演技やお仕事を優先したいと思いました。

――10代最後の1年、どんな気持ちで過ごしていきたいですか。

 常にワクワクしていたいというのがあります。ワクワクという言葉がすごく好きで、小さい頃からよく言っていた記憶があります(笑)。緊張や不安を含めた上でのワクワクなんですけど、もっと細かく感じ取っていける1年にしたいです。

――さて、現在放送中の『ZIP!』朝ドラ『クレッシェンドで進め』に出演されていますが、出演が決まった時はどんな心境でした?

 まず、合唱というのと、舞台が私の地元、長野県の松本市だったので絶対やりたい!と思いました。

――脚本を読んでみていかがでした?

 脚本は最初、役目線ではなく、一つの物語として読んでいきました。私は高校が通信制ということもあって、いわゆる青春を送るような高校生ではなかったので、自分がもし高校生活を送るならこのドラマのような可能性もあったのかな? とワクワクしながら読み進めていきました。舞台となる花山高校に通ってみたいと思ったり。

 そして、竹内という役に決まって、今度は役目線で読んでみると、また違う景色が見えてきました。合唱コンクールに出ることを反対する役柄だったので、最初に読んでいた時のような感情で演じてはダメだなと思いました。

――受験生の竹内が言っていることはすごく正論なんですよね。

 私は大学に進学しないと決めたので、試験などに重きを置いていなかったのですが、よくよく考えると高校3年生という時期は人生の岐路に立たされていて、青春をとるか、大人になることを見据えた選択をするのか、などみんなそういうところで悩んでいるんだなと改めて知るきっかけにもなりました。

――竹内を演じるにあたって、事前準備などされました?

『クレッシェンドで進め』場面写真

 実際に体験した人から話を聞くというのは、セリフに説得力を持たすためにやったことでした。竹内は国公立の医学部に進学するために、勉強を頑張っているのですが、私は大学受験の大変さを知らずにいたので、その大変さをそこまで理解できていませんでした。私の友人は進学に向けて塾に通ったりしていたので、話を聞いたのですが、「国公立の医学部に進学するには相当勉強しないと難しいよね」と聞いて、合唱をやっている場合ではない! という気持ちに私もなって、納得してセリフを言うことができました。

――共感できたわけですね。撮影で印象的だったことは?

 コンクールで優勝するために合唱をやっているので、基本大勢の方に向けて歌うのですが、一人に向けて歌うシーンがあって、すごく印象に残っています。コンクールに向けて歌っている時は、キレイに響かせるということも重要なのですが、そのシーンで歌った曲は上手い下手ではなく、「届け!」という想い一つで歌いました。台本を読んだ時から、このシーンはグッとくるだろうなと思っていましたし、みんなで歌った一体感は今でも忘れられないです。

――共演者の方とのエピソードは?

 松本市に5泊した撮影がありました。お休みの日もあったので、みんなでご飯でも食べにいきませんか、と勇気を出して誘ってみました。ドラマに登場する栗田(演・萩原護)くんが餡蜜屋さんの息子という設定なんですけど、そのお店は実際にある餡蜜屋さんなんです。なので、前日から計画を立ててお店に行ってみようとなりました。でも、当日行ってみたらその日は休業日で...。

――残念でしたね...。

 食べることはできなかったのですが、一人で行ってお休みだったら悲しかったと思うんですけど、みんなとハプニングを共有できたことで、思い出になりました。「お店、やってなかったね(笑)」と言って笑い合えて、みんなと仲が深まったんだなと思いました。

中学の経験は今回の撮影にも活きている

『クレッシェンドで進め』場面写真

――花岡さんにとって音楽はどんな役割を持っていますか。背中を押してもらう感じだったり?

 今、現場までの行き帰りに音楽を聴いていて、生活の一部として音楽があるんですけど、私の場合、背中を押してもらうのとはちょっと違うんです。その時の感情を増幅させてくれるような感覚があります。嬉しい時にアップテンポの曲を聴いたら、もっと嬉しくなったり、悲しい時に切ない曲を聴けば一緒に悲しんでくれているような感覚になります。

――すごく感情に寄り添ってくれているんですね。ライブにも行かれたり?

 はい。私の高校3年間はほぼコロナ禍で過ごしたので、ライブに行くと生で歌を聴けるありがたみを感じています。同じ曲でもライブだとまた違う感覚になれるんですよね。合唱も生で聴くことが多いと思うのですが、生の声の力を感じます。

――今はどんな音楽をよく聴かれているのでしょうか。

 ザ・クロマニヨンズさんが好きなのですが、サブスクに入っていないので、CDからポータブルプレーヤーに音源を入れて聴いています。手間は掛かるんですけど、それでも聴きたい音楽なんです。あとは斉藤和義さんやスピッツさん、あと、今回ドラマの中で自由曲として登場するヤバイTシャツ屋さんも好きでよく聴いています。ライブにも何度か遊びに行きました。

 今日はどの曲を聴こうかなと選ぶ時間も、自分の生活の中で大切なものになっています。面白いのが、今日はあまりテンションが高くないなと思っていたけど、ヤバTが聴きたいんだと、自分のコンディションを測ることにもなっています。

――色んなことに寄り添ってくれているわけですね。ところで合唱の思い出はありますか。

 私が通っていた中学は合唱に力を入れている学校でした。毎朝、歌の練習時間があったり、合唱はコンクールではないんですけど、全校を上げて披露するコンサートがありました。競い合うわけではないので、純粋に歌を楽しんでいました。それもあって今でも合唱は楽しかった思い出として残っています。ドラマでは優勝を目指してはいますけど、楽しんで歌うというのもあったので、中学の経験は今回の撮影にも活きているなと思います。

――最後に、花岡さんがいま追求されていることは?

 人前に出るとなると、自分を守ろうとするためなのか、ちょっと力が入ってしまうところがあります。それもあって、いつも自然体でいられたらいいなと常々思っていて、芯がぶれずにいられるようにするにはどうしたらいいのか、というのを追求しているかもしれないです。それができればどっしりと構えていられると思うので、もっと楽に生活もできるんじゃないかなと思っています。今までは教えて下さる方の言う通りにやっていれば大丈夫、というところがあったのですが、もっと自分で能動的に考えて、納得してからその場に立つということをしていけば変わっていけるのかなと思っています。

(おわり)

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