『ガールズ&パンツァー』・西住みほ役 や『暗殺教室』・潮田渚役など、数々の作品に出演している声優の渕上舞が4月24日、中野サンプラザホールで「渕上舞 3rd LIVE "星空"」を開催した。今年1月にアーティストデビュー3周年を迎え、渾身の2ndアルバム『星空』とシングル「操り人形クーデター」を同時リリースした、声優/アーティスト・渕上舞。今回はそのアルバムを引っさげて、約2年ぶりとなる大規模ライブを行なった。しっとりとしたバラード曲から激しいダンス曲まで、全21曲によって様々な“星空”が表現された一夜の模様をレポートする。

 幕が上がると、照明が無数の星のようにきらめく幻想的な空間が覗き、ヘアアクセサリーからシューズまで全身に星をまとった渕上がその中央にそっとスタンバイ。“おやすみ、世界。またあした”――デビューアルバムから「おやすみのワルツ」のフレーズを歌い上げたあと、そう夜の始まりを告げた。

 バックには大きく輝く満月が、客席には今回のライブグッズとして販売された星型ペンライトが輝く中、演奏がスタートしたのは「Rainbow Planet」。アーティストデビューの約半年後にリリースされた1stシングルの表題曲だが、冒頭から“青空の反対側で 星空が煌めくみたいに”と歌われ、今回のライブにもぴったりの一曲だ。デビュー当初からの揺るぎなさを感じさせながら、「予測不能Days」へと繋いで爽やかな歌声を響かせ、定番ナンバーで会場を一気に温めた。

(撮影=佐藤薫)

 「素敵な夜の世界へとご案内いたします」という一言から、さっそくアルバム新録曲を3曲連続で披露。初デートを目前にしたピュアな恋模様を歌ったアルバム新録曲「恋なの?」では、愛らしさを振りまく渕上のそばでデート中の2人に扮したダンサーがステージを賑やかに彩る。続くは「廻り廻る奇跡」「揺れるMoonlight」と、比較的穏やかな内容の2曲……のはずだが、“恋愛三部作”の一部である「揺れるMoonlight」は、実はいけない恋の歌でもあるといった制作時のエピソードも明らかになっている。そういった裏側を知ってからこのライブを見ると、また違った光景を想像しながら楽しむことができそうだ。

(撮影=佐藤薫)

 そして、ワンマンライブ恒例となっているキャラクターソングのセルフカバーコーナーは健在で、今回は宇宙から来た少女“KΛNΛTΛ”のコンセプトアルバムから「TRΛNSMISSION」と、イオナ役を務めたTVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』のメインキャストからなるユニット・Tridentの「Blue Moon」を歌唱。新型コロナウイルス感染拡大防止のため声援禁止というレギュレーションが設けられてはいるが、客席の熱気は確かなもので、その興奮は想像に容易い。普段はなかなかお目にかかれない楽曲だけに、声優としての確かな歩みをもとにしたチョイスが会場をさらにヒートアップさせた。

 「部屋の窓から見る花火」では、窓辺の椅子に腰掛けて静かに思いを寄せる渕上、夜空に打ち上がる花火……という楽曲の光景がそのままステージ上に再現され、一瞬でその世界に引き込まれる。同じくミディアムバラードの「Meteor」は、どこか切なげな表情を浮かべて客席を見渡したあと、マイクを両手で握りながら一言一言を紡いでいった。心を引き寄せて離さない、沁み渡るような歌声と、それをさらに引き立てるバンドサウンド。何度でも聴き返したくなる音色だ。

 バンドメンバーによるアレンジ演奏を挟み、ここで、これまでのセットリストとは全く毛色の異なるショータイムが始まる。ディスコチューン「バレンタイン・ハンター」「QT Show」の出番である。フラミンゴピンクが際立つ衣装でステージ上を駆け回る渕上のキュートな歌声と踊りに、会場はフィーバー。「QT Show」ではステージ上部のミラーボールが光り輝くなど、ディスコさながらのひとときとなった。これもまた夜空を彩る星の一つなのだろう。夜が明けるまでの特別な時間を、様々な演出で表現していく。

(撮影=佐藤薫)

 再びの衣装チェンジではセクシーなへそ出しスタイルのトップスに着替え、「Dive Into Emotion」をライブ初披露。以前からダンスが苦手だと話している渕上だが、シンセサウンドやボーカルエフェクトが多用されるダンサブルなこの楽曲は「しっかりダンサーさんと一緒に踊りたい」と練習に練習を重ね、今回のライブを初披露の場に選んだそう。凛とした表情でしなやかかつキレのあるダンスを魅せ、新境地を開いた。「思っていたよりはできた」と自らのダンスパフォーマンスを評価すれば、バンドメンバーからは“近所のお兄さん”目線での優しい微笑みが、客席からは声援に代わる大きな拍手が送られた。

 「ここからはかっこいい私を存分にお届けします」と宣言すると、スパートをかけていく。「操り人形クーデター」では、人形使いと化した渕上が、ダンサーを操り人形に見立ててダンスを披露。時折見せるのは狂気さえ感じるような歪んだ笑顔で、力強い歌声とあわせて表情の豊かさを楽しめる一曲に。そこからロック調の「リベラシオン」や「A Crow」、疾走感あふれる「Crossing Road」と激しいナンバーを畳み掛け、クールな面も余すことなく届けていった。

(撮影=佐藤薫)

 MCパートでここまでのライブを振り返ったあとは、“渕上様からのお言葉”として、2ndアルバムの表題曲「星空」に込めた想いを語る。この歌詞を書くことで不安な気持ちを整理できたそうで、「コロナ禍では落ち込むことが多かった」と吐露してネガティブな感情にも寄り添いながら、「『人生において上手に取捨選択をしていけたら』『いらないものはどんどん捨てましょう』っていう曲です(笑)」と、楽に生きていく術を伝授した。

 ライブ本編の最後は、夜明けを惜しむように「星空」を披露し、優しい歌声で会場を包み込む。先ほどのMCも踏まえて耳を傾けてみれば、暗い夜道を照らす希望の光とも言える温かさが感じられる締めくくりとなった。

(撮影=佐藤薫)

 渕上いわく“番外編”のアンコールでは、まず「Love Summer!」「追想Colors」を披露。久しぶりのライブという高揚感からか歌詞が飛んでしまう場面があったが、それも笑いに変え、全力で楽しみ、楽しませてくれる。そして、2021年8月1日(日)に代官山UNITで「A-on STORE Presents 渕上舞アコースティックLIVE 02」を行うことを発表。「こういうライブとは違ったステージを見ていただけたら」と公演への意気込みを語った。その後、バンドメンバーとダンサーを紹介すると、高らかなタイトルコールからラストナンバー「フラミンゴディスコ」へ。楽曲の後半ではスタッフ陣による“フラミンゴダンサー”もステージ上に間隔を空けて集結。会場にいる全員が一心に扇子やペンライトを揺らし、3rdライブは大熱狂のうちに幕を閉じた。

 本公演の模様は2021年5月2日(日)23:59までアーカイブ配信が実施されている。カメラ目線やステージ後方から渕上を捉えたカメラアングルなどもじっくり楽しむことができる。
※配信視聴チケットは同日20:59まで販売。【Text by 友安 美琴】

セットリスト

2021年4月24日(土)「渕上舞 3rd LIVE "星空"」
OP おやすみのワルツ
1 Rainbow Planet
2 予測不能Day
3 恋なの?
4 廻り廻る奇跡
5 揺れるmoonlight
6 トランスミッション
7 ブルームーン
8 部屋の窓から見る花火
9 Meteor
10 バレンタインハンター
11 QTショー
12 Dive Into Emotion
13 操り人形クーデター
14 リベラシオン
15 A Crow
16 Crossing Road
17 星空

En1 Love Summer
En2 追想 Colors
En3 フラミンゴディスコ

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