INTERVIEW

梶 裕貴

全力ではなくベストを発揮できるか。
『七つの大罪』から学んだこと


記者:鴇田 崇

写真:桃

掲載:21年07月06日

読了時間:約7分

 講談社「週刊少年マガジン」誌上で約8年にわたって連載され、単行本は全41巻で完結。累計発行部数が3700万部を突破しているという大人気コミック『七つの大罪』。そのファン待望の『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』がついに公開となる。7年にも渡ったアニメ放送もいよいよ最終回を迎え、その“最後の物語”として公開を目前に控えた、ファンを中心に高い関心と注目を集めている超大作だ。

 今回の劇場版は、原作者・鈴木央が描き下ろしたTVアニメから続く“最終章のその先”を描いた完全新作オリジナルストーリーであり、主人公メリオダスとメリオダスの弟で〈十戒〉のリーダー・ゼルドリスの2役を演じる梶裕貴自身も、「振り返るにはまだ少し早いですが…まさに自分の名刺代わりとなる作品であり、僕の人生に大きな希望を与えてくれました」と万感の想いだ。梶本人に映画の話を聞いた。【取材=鴇田崇/撮影=桃】

劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち

メリオダスの存在

――長い間本作に関わってこられましたが、ご自身にとってメリオダスは、どういう存在になりましたか?

 TVアニメ『七つの大罪』にかかわらせていただいてから、早いもので7年半。イベント等があるたびに「物語の最後まで、そのキャラクターを演じ切ることが声優としての目標です」というお話はしていたのですが、それが、まさか本編完結後に劇場版製作というご褒美までついてきてくれて…本当にうれしいです!でも同時に、やはり幕を閉じるということへの寂しさも、とても大きく感じていますね。

――7年間は決して短くはないですよね。

 そうですね。これだけ長い期間をキャラクターと共に歩むという体験自体が初めてだったので、気持ち的に、振り返るにはまだ少し早いのですが…まさに、自分の名刺代わりとも言える作品と出会えたなと感じています。メリオダスの声を聴いて、僕という声優を認識してくださった方々も沢山いらっしゃると思うので、そういった意味でも彼との出会いは、僕の人生に大きな希望を与えてくれました。

――やがてゼルドリスを加えて、メインの二役を演じられることになりますが、特に意識していたことや、大切にしていたことは何ですか?

 そもそもメリオダスのオーディションを受けた時には、ゼルドリスの存在自体が、まだ明かされてはいないタイミングでした。のちに原作の台詞で、ゼルドリスとメリオダスの声質が近いことを示唆するようなものがあったんですよね。後日お聞きしたところ、央先生の中では「そんな台詞を書いてしまった以上、梶さんにやってもらうしかない」という意識があったそうです。うれしさ半分、驚き半分でしたね(笑)!

 見た目のシルエットが似た兄弟なので、その役づくりも悩むところ。どう演じ分けるかは、ゼルドリス役も演じさせていただけることが決まってから、自分の中でいろいろと考えましたね。実際に、アフレコ現場で声色を2パターン提案してみました。ひとつは"メリオダスと声質は近いけれど、纏っている雰囲気・オーラが違うもの"。もうひとつは"声質からしてガラリと変えるもの"でした。

――メインキャラクターが増えることの苦労はありましたか?

 <十戒>の中心人物で、メリオダスたちからすれば悪であり、敵であるという立ち位置。そんな印象を強く持たせたいという演出も加味して、結果的に後者の"声質から大きく変える"というプランに落ち着きました。正直、自分としては声自体をあそこまで太く・低く作るイメージはあまりなかったので、馴染むまで多少の違和感はありましたね。でも、とりわけ悩むということもなく、演じていくうちに、自然とゼルドリスというキャラクターは僕の中で確立していきました。息継ぎなどの物理的な難しさはありましたが、声質自体が違うということもあり、演じ分けるという部分での苦労はそこまで感じなかったです。

 ただ…今回の劇場版は、この二人の会話とタッグバトルが肝。ひとつの作品でここまで自分のキャラクター同士が会話する機会は今までもなかったですし、予想もしていなかったので…台本をいただいた時は衝撃的でしたね(笑)。

梶裕貴

プレッシャーに感じたことも

――この作品はご自身にとって、声優としての成長の糧になりましたでしょうか?

 タイミングによって、自分のやるべき課題やハードルといったものが、その都度変化していくのが人間だと思いますし、それを成長と呼ぶのだと思いますが…この<七つの大罪>のメリオダスに関しては、いわば最初から完成されている存在。しかも最強の騎士団の団長で、もはや常人には、彼の本音などまったく読み取れないようなミステリアスな性質。ひょうひょうとしているなと思えば、すごくシリアスな面も持っている、そんな謎多き人物です。なので演じる上で、これまで自分が培ってきたお芝居の引き出しでは、なかなか通用しないキャラクターだろうなとは感じていましたね。

 それまでにも主人公というポジションを経験させていただいたことはありましたが、いわゆる“等身大の少年・青年が、いろいろな出会いや別れを通して、悩み・葛藤しながら成長していく”というような役柄が多かった気がするんです。“役と一緒に成長していくことが、作品・企画としてもベストである”的なポジションと言いますか(笑)。でもメリオダスは、そういった役柄ではない。というのも、<七つの大罪>のほかのメンバーを演じられる役者の皆さんは、基本的に、自分よりも年齢もキャリアも上の方たちばかり。どこを見渡しても、全員が主役級の存在感を持っている方々だらけだったんです。そんなキャスト陣の中で中心的なキャラクターを演じ、現場的には、座長として引っ張っていかなくてはいけないという立ち位置で…当時、果たして自分にそんな役割が務まるのだろうかと、プレッシャーを感じる部分はありましたね。

――それは、どう乗り越えましたか?

 終わった今、振り返ってみると…そんな不安は、まったくの杞憂でした(笑)! 自分でどうにかするというよりも、まわりの皆さんが一緒になって、楽しみながら現場を盛り上げてくださったので、最後まで団結してアフレコを終えることができました。もう感謝しかありません。このメンバーと一緒に「七つの大罪」という作品に向き合うことができて、本当に幸せでした!

――この経験は、さらなる自信に変わりましたか?

 “続ける”ということ自体が、何事においても絶対的に進化をもたらすかと言われれば、決してそうではないように思います。人間として心がブレてしまう瞬間だってありますし、喉のコンディションだって、いろいろな役をやらせていただければいただけるほど、調整が難しくなっていくものだと思いますし。なので、常に万全とは言いがたい状況の中で、いかに自分のベストを発揮するか、それが大事になってくるのではないかと感じています。もちろん全力で向き合うことが何よりも大切なわけですが、ひとつの作品にすべてを出し切ってしまい、万が一、他の作品に穴を開けてしまったら、それはプロフェッショナルとは言えないと思うので。そのあたりが、この仕事を続ける上での難しさなのかなと。けれど、どんなに不恰好であれ、この仕事を今まで続けてこられたことは、自分の人生にとって、とても大きな意味を持つだろうと感じています。

――また、理想の声優像については、どうお考えでしょうか?

 日々変化しているような気がします。だからこそ悩むし、葛藤もしますし…自分の理想だけでは成り立たないことも当然あります。ただ、シンプルに、これまでもこれからも声優を続けていく上で変わらないのは、その役を担当させていただくからには、この世の誰よりもその役の人間らしさ…人間じゃない場合もありますが(笑)、キャラクターの魅力を引き出してあげることだと思っています。

 そこにはもちろん、監督をはじめとするスタッフの皆さんが求められる理想形というものがあるわけで、その要求にきちんと応えることが一番ではありますが…あわよくば満点以上の、想像を超えた表現をもってお返しできればと思っています。なので、最終回を迎えたときに、スタッフさんや視聴者の皆さんから「梶裕貴に演じてもらえてよかった」と思っていただけることが、もしかしたら自分の一番の理想なのかもしれません。

――最後になりますが、映画を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!

 『七つの大罪』ファンのみなさん、最後まで一緒に作品を応援してくださり、本当にありがとうございます!原作の最後までアニメとして完走できたこと、そして今回、新たに劇場版をお届けできること、この上なく幸せに感じています。メリオダスとして、ゼルドリスとして、映画館のスクリーン越しにまた皆さんとお会いできる日を楽しみにしています!

梶裕貴

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