暁月凛「自分のありのままの姿を受け入れる」闇も光も全てを内包する魅力
INTERVIEW

暁月凛「自分のありのままの姿を受け入れる」闇も光も全てを内包する魅力


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年12月11日

読了時間:約12分

 シンガーの暁月凛が11日、約1年4ヶ月ぶりのアルバム『没入time mixed by DJ和』をリリース。2016年3月に『金田一少年の事件簿R(リターンズ)』のエンディングテーマ「決意の翼」でメジャーデビュー。以後、数多くのアニメソングなどを歌う人気歌手。本作は数々のアニソンのMIX CDをリリースしているDJ和が加わった、全20曲アニソンカバーのノンストップMIX。「より私の本質をわかって頂けると思う」と言う彼女。“闇”という内面性、内観的な感情や退廃的な世界観から感じ取れる美や人間の「陰と陽」のバランスについて、そしてアニメから受けた精神性など暁月凛に語ってもらった。【取材=平吉賢治】

私という人間を理解して頂ける一枚

――本作はアニソンのカバーアルバムですが、仕上がった心境は?

 デビュー前からずっと、いつかはカバーアルバムを出したいと思っていたので、この機会があって良かったと思っています。

――『没入time mixed by DJ和』というタイトルはインパクトがありますね。

 ありますか(笑)。今回は区分けとして闇系の曲が多かったので、明るくはしゃぐというよりか、深く没入して頂ける一枚だと思います。

――20曲カバーが並んでいるのに暁月さんの歌の一貫性を感じました。

 私が子供の頃から聴いてきた曲が多いからなんです。好きな曲の傾向が一貫していて、私の人生において凄く重大な意味を持っている曲たちです。言葉よりも私という人間を理解して頂ける一枚だと思います。

――選曲はどのように?

 カバーアルバムはずっと前から出したかったので、なんとなく心の中でリストが存在していたんです。今回は1枚なのでその中でも代表的な曲をピックアップして頂きました。

――そのリストはけっこう曲数があったのでは?

 40曲はありました。アルバム3枚とか5枚出せるんじゃないかというくらい(笑)。

――それを絞り込んでの20曲なのですね。

 けっこう重なる傾向の曲もあったので、それらは1曲に絞るという感じでした。傾向としては闇系なんですけど、20曲というなら、より私の色んな側面を見てもらいたいのでそういう角度から選びました。

――闇系の角度はご自身のなかで重要?

 そうなんです。別に性格が闇というわけではないんですけど、自分が美しいと感じた物事のなかに、いわゆる明るくはしゃぐ楽しい生のエネルギーや、マイナスの感情もなくはないんですけど、あまり多くないんです。

 何が多いかというと、あまり理解されない痛みとか、内観的な感情、退廃的な世界観、そういう望ましくないと思われる感情とか、そっちの方が私は魅力を感じたりします。確実にこの世に存在している感情なのに、人々はそれを否定したり消したりする場合が多いので。そういう部分に美しさを見出す人も必要ではないかと思います。存在するものは何かの意味があるわけなので、それが好きじゃない人も、好きな人も当然いますし。私がそのなかの一人ということです。

――内観的な感情や退廃的な世界観の魅力ってありますよね。闇に敏感だったりするのは、スラング的な言葉で言うところの“陰キャ”という、性格が比較的内向的な人の傾向でもある?

 “陰キャ”、“陽キャ”は、単純にキャラというか、その人の気質やオーラでしかないような気もします。人の心の闇が本当に闇なのかは、キャラと関連していない場合もあると思うんです。例えば、普段は陽キャだけど本当は凄い闇を持っている人のほうが陰キャより闇なんです。表面と中身、その中身よりもさらに深い中身が複数存在していると思いますので。私は場合によっては陽キャと言われることもあるんです。でもそれが決して“陽”というわけではなくて。人って陰と陽のあの図、わかりますか?

――白と黒が曲線で玉状に交わる陰陽のマークですね? 中国古代の思想が発端とも言われる。

 そう、あれですよ! 中国古代の道教なんかの。あれは正にあらゆるものを説明できる図だと思っています。だから陽気なキャラクターの人も心の中には闇がありますし、普段は陰キャの人でも心の中には希望があると思います。私だったら、いままでは自分自身の曲が闇でもあったけど最終的には明るい方向に持っていくとか。それも一つの自分かもしれなくて。

 それは客体としての自分、見られたい自分、見せたい自分ではあるんですけど、今回はカバーアルバムということなので、自分自身が好きだった曲、自分が主体として好きになった曲を聴いて頂く機会なので、主体としての自分もアピールできるいいチャンスだと思います。自分という人間が心から好きだった曲たちをお見せすることによって、より自分という人間の違う側面を見て頂けるのかなと思います。

――その点は、まっすぐ前を見ている表情のジャケットにも出ていると感じます。

 確かに「明るめですね」。でも表情があまり明るいわけではないのに、色合いが明るいのが正にさっき言った陰陽の図みたいで。感情表現の仕方は色々あると思うんです。表情とかジェスチャーとか、非言語コミュニケーションとか、音楽とか色々と手段はあるんですけど。だから今回アルバムを出させて頂くことによって、より私の本質をわかって頂けると思いますし、本当に音楽って凄いと思いました。

――確かに、意思疎通において言語的コミュニケーションの割合は低いとも言われていますね。

 言葉って記号でしかないので。本当の意味というのが記号から独立した別の存在であって、その記号というのが一部表現できるかもしれないですけど、わりと音楽や絵とかより意思の情報量がちょっと少ないかなと思います。私は普段の言葉よりも歌詞のほうがより多くの情報、ノイズのない真の情報を伝えられるかなって思っていて。

――こうして会話していていも、確かにノイズ的な言葉を自分が多々出していることに気づきました。

 社交のなかでのコミュニケーションとしては必要不可欠な言葉かもしれないんですけど、歌や絵になるとそれが必要なくなるので、よりストレートに自分の感情が伝えられると思います。例えが難しいかもしれないんですけど、言葉が塗布する軟膏だとしたら、絵や音楽は静脈点滴だと思います。

――絵や音楽の方が直接的だと。

 軟膏は吸収の確率が悪いけど、一番手軽にできる手段という。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事