忘れらんねえよが1日、東京・Zepp Tokyoで10周年&梅津卒業ワンマン『サンキュー梅ックス』をおこなった。この日は活動を共にした梅津拓也(Ba)の卒業となる現体制最後のライブ。「ばかばっか」や「忘れらんねえよ」などアンコール含め全34曲、約3時間30分にも及ぶボリュームのステージを展開。彼らの魅力を十二分に発揮したパフォーマンスで観客を扇情した。さらに東京・渋谷CLUB QUATTROで新体制でのワンマンライブ『忘れらんねえよ 渋谷クアトロワンマン YouTuberになればモテると聞いた』の開催も発表した。【取材=村上順一】

ゲストにおとぎ話や爆弾ジョニーのロマンチック☆安田

忘れらんねえよ(撮影=岩佐篤樹)

 フロアには隙間もないほどの人出埋め尽くされていた。梅津のラストステージを見届けようと多くの観客が集結。開演時刻が近づくと前説で登場したP青木。このライブの詳細や注意事項など説明し、ついにライブは開演時間を迎える。会場が暗転すると[Alexandros] の「ワタリドリ」が響き渡った。客席の後方から柴田隆浩(Vo&Gt)が登場。大歓声が巻き起こるなか「思いっきり笑えよ。思いっきり騒げよ。そして、思いっきり泣いていいからな!」と熱い言葉を観客に投げかけ、メインステージまで渡り鳥のごとくクラウド・サーフィングで向かう。

 そして、梅津とサポートメンバー、ギターのタナカヒロキ(LEGO BIG MORL)とドラムのマシータ(ex-BEAT CRUSADERS/ex-NATSUMEN)と合流し「ゾンビブルース」でライブの幕は開けた。熱の入った歌と演奏で感情を揺さぶりかける轟音。「人生で一番のライブにしたい」と柴田は「この街には君がいない」、梅津と初めて作った曲「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」と2012年にリリースされた1stアルバム『忘れらんねえよ』からのナンバーで畳み掛ける。

 観客もバンドが放つエネルギーを押し返すような熱いレスポンス。それをまた押し返すようにバンドもサウンドで応える。そのエネルギーのキャッチボールは雪だるま式に大きくなっていくよう。「自由に飛び上がっちゃって!」と投げかけると、その言葉に観客もジャンプで応えた「スマートなんかなりたくない」、観客のシンガロングを「もっと、もっと!」と煽った「バレーコードは握れない」と、会場をひとつにさせるエネルギーを持ったナンバーを立て続けに浴びせ、ライブならではの高揚感に包まれた。

 ここで、ゲストのロックバンド・おとぎ話の有馬和樹と牛尾健太が登場し、2人を加えて「俺たちの日々」を演奏。続いては、過去にサポートメンバーでもあったロックバンド・爆弾ジョニーのキーボーディストであるロマンチック☆安田をギターとして迎え「うつくしいひと」を届けた。梅津を思っての演奏はこの日にしか生まれないグルーヴが確かにあった。絆を感じさせる演奏に会場もヒートアップ。

 梅津が作曲した「紙がない」では、この曲の制作背景について語る2人。柴田が梅津のこの曲を気に入り、そこにつけてきた歌詞はウ●コがテーマ。それを振り返り梅津も「そりゃ(バンド)辞めるわ(笑)」とこれが脱退理由だとユーモアを交えたコメントに会場も笑いに包まれた。2人は1曲1曲に思い出を刻んでいくかのように「北極星」と、その想いに加わるかのように観客も拳を掲げ楽しんだ1stシングル「CからはじまるABC」とライブは後半戦へと進んでいく。

この夜は2度と来ないから、すんげー楽しもう!

忘れらんねえよ(撮影=岩佐篤樹)

 「俺、初めてチャットモンチーのライブここで観たんだ」と柴田。奏でられたのは、バンドを始めるきっかけとなった楽曲、チャットモンチーの「ハナノユメ」を、忘れらんねえよの持ち味を存分に打ち出しながら披露。そして、「梅津がいなくなるとは思えない...でも、好きな人と歌えているのは間違いない!」と「サンキューアイラブユー世界」をエモーショナルに届け、ミラーボールが反射する光が星のように会場に広がった「花火」、全てをぶつけるようながむしゃらな姿勢が心に沁みた「俺よ届け」、バンドのグルーヴがフリーダムな躍動感を紡いだ「愛の無能」と津波のように音が押し寄せてくる。

 柴田はここまでのライブを振り返り「こんな風になるとは思わなかった。スゴイ楽しい」とこのライブの意外性に感情の変化を感じられたと告げ、梅津は「この瞬間が残ってくれればいいな」と観客に投げかける。「この夜は2度と来ないから、すんげー楽しもう!」とテンション高く始まったのは「ばかばっか」。お祭り騒ぎなイントロから会場全体が一丸となった最高の瞬間が続いていく。途中ビールを飲みに客席後方まで千円札を握りしめ、再び観客の頭上をクラウド・サーフィングで運んでもらう柴田。「今日のビールはパフォーマンスじゃねえ。お前らの夢をここに注ぎ込め! 全部飲んで叶えてやるよ!!」と、観客に支えられながらビールを飲み干し、ステージに戻った柴田はこの喜びを共有するかのように梅津とハグ。そして、終わりに向かいライブは無情にも進んでいく。

 柴田は「ロックンロールは大変、こんなに俺を悩ませて人生をめちゃくちゃにして...」と話すと梅津は「ギターのチューニングもめちゃめちゃになってる...」と彼らならではの空気感で笑いが起こる。そして、「泣いてるやつ、笑ってるやつ全員ついてこい!」と投げかけ「いいひとどまり」、「この高鳴りをなんと呼ぶ」とソウルフルな柴田の歌声がより強く放たれた。金のテープが盛大に宙を舞い、リミットを超えた盛り上がりを見せた「明日とかどうでもいい」。梅津がベースを委ねるように柴田の肩にかけ、本編を終了した。

 アンコールでは過去に使用していたSE、“ヨレヨレ”のトランペットサウンドがなんとも脱力感を与えてくれたジャック・オッフェンバックの「天国と地獄」でステージに戻ってきたメンバー。まずは「世界であんたはいちばん綺麗だ」、続いて観客の盛大なカウントコールでスタートした「バンドワゴン」と2曲を披露した梅津との思い出を語る柴田。

 「最初は(卒業は)絶対嫌だと思ったけど、梅津君が決めたらそれは生半可な気持ちでは言っていないのは知っているから...」と梅津の覚悟と決意を受け取ったと柴田。そのあとも梅津から様々なことを教えてもらったことや熊本で大ゲンカしたことなど振り返る。梅津は「忘れらんねえよのライブは観に行く」と話すと柴田は「チケ代とるけどな」と2人らしいやり取りで和ませる場面も。

 柴田は最後に「一緒にいてくれてありがとう」と投げかけると梅津は「こちらこそ」と返し柴田が「終わろうか...」と呟き「これまでがすごく面白かったから、これからももっと面白いことをやっていきます」と「忘れらんねえよ」を全身全霊で届けた。観客はスマホのライトでステージを照らし、その美しい光景に2人も感動を隠せない様子。シンガロングが響くなかステージ上の4人も肩を組み味噌の歌声に揺れ、ラストは「まだ知らない世界」で『10周年&梅津卒業ワンマン「サンキュー梅ックス」』幕は閉じた。

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