平山みき with ザ・サーフコースターズ

平山みき with ザ・サーフコースターズ

 歌手の平山みきが7日、東京・渋谷のMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASUREで、『ビューティフル』と銘を打ったライブをおこなった。平山みきは今年11月のデビュー45周年を控え、7月20日には「真夏の出来事~ナウ・アンド・ゼン」をセルフカバーした新曲をリリースした。当時、流行したサーフロックサウンドを表現するため、中シゲヲ率いるザ・サーフコースターズが演奏、当時と今をシンクロさせ、さらなるサウンドの飛躍を見せた。この日は、平山みき with ザ・サーフコースターズとして名曲の数々を披露した。

渋谷の地での昭和歌謡とサーフロック

 この日のライブ「平山みき with ザ・サーフコースターズ『ビューティフル』」がおこなわれた地は、文化発信の街・渋谷。この地は、平山みきのデビューである1970年頃より、横浜の異国文化と東京の新しい文化が結びつき、若者文化を主として発展を遂げ、現在進行形で常に変化を続ける刺激的な街だ。ヒッピーカルチャーにサーファーブーム、クラブシーンにストリートカルチャー、渋谷系にヒップホップシーンなど、他にも数々の文化が渋谷を起点として発展した。

 今回、昭和歌謡とサーフロックサウンドを結びつけ、新たなアプローチとして発展させるなど、平山みきもまた現在進行形で自身の音楽を常に発展させている。そういった点と線が繋がる地・渋谷で、平山みきwithザ・サーフコースターズのライブは開催された。

昭和のあの頃の平山みきを再現、そして新たな試み

平山みき

平山みき

 ステージ背景は平山みきを象徴するカラーである黄色で染められ、ザ・サーフコースターズのサウンドの波に乗り、“歌謡界の女王”は黒の華麗な衣装で姿を現した。

 「心のとびらをノックして」で始まった平山みきの歌唱。ステージフロントに佇み、客席中に挨拶をするように、まずはゆっくりと、持ち前のハスキーボイスで「ノアの箱舟」「希望の旅」と立て続けに歌い上げた。“昭和のあの頃の平山みきを再現”というコンセプトもある中、もちろん今も色あせない歌声を渋谷・Mt.RAINIER HALLに響き渡らせた。

 数曲歌い終わると、客席からの温かい反応で会場が包まれた。当時からのファンの年層もいれば、若い世代の層もいる。平山みきは、「昭和のあの時代の良さが再現できたらいいな」とにこやかに切り出し、「今日の衣装もその時代のものを、という事で黒の衣装にしたのよ!」とチャーミングに語った。

 昭和時代の良さの再現、それはショーのみならず、客席からのおおきな口笛の煽りなど、ちょっと“昭和チックな反応”も手伝い、良き時代の再現と、ザ・サーフコースターズのサウンドとの融合という新たな試み、その両方がショーのテーマとして進行し、黄色と黒とサーフブルーの“鮮やかでちょっと懐かしい”そんな素敵な渋谷の夜が深まっていった。

平山みき×ザ・サーフコースターズの抜群な相性

平山みき with ザ・サーフコースターズ

平山みき with ザ・サーフコースターズ

 「フレンズ」「マンダリン パレス」と続き、会場は今回のサーフサウンドと歌の融合がつくり出すライブ空間を、温かく自然に受け入れていた。それもそのはず、平山みきの歌とザ・サーフコースターズのアレンジ、演奏はぴしゃりと合う。サーフロックの「無骨でありながら爽やかで鋭いサウンド」それを基調としたザ・サーフコースターズの演奏は、平山みきのハスキーボイスと芯のある歌い回しに相性抜群であったのだ。

 それは「何より自分自身らがその事を解って楽しんでいる」という感覚がなければ決して滲み出す事はない、奔放でありながら統合性のとれた演奏となり、そこには、ある種の敷居も固さもなく、楽しく演奏し、歌唱している感情がそのまま音となって観客を包み込み、自然な笑顔を咲かせるように会場中を楽しませていた。

昭和時代の再現と新たな前進

平山みき

平山みき

 今夜のライブショー『ビューティフル』は、“昭和歌謡のアイコン・平山みき”と、“日本のサーフロックの雄・ザ・サーフコースターズ”が融合し、昭和の良き時代を再現すると共に、新たなアプローチの提示も兼ねた温故知新のエンタメショーであった。

 昭和歌謡、サーフロックサウンドのみならず、「マンダリン パレス」ではロックンロールのグルーヴ、「愛の戯れ」ではシティ・ポップのキラキラとしたアレンジで魅せるなど、サウンドバリエーションも多種多様だ。その中で、平山みきのブレない歌唱スタイルとザ・サーフコースターズの一貫性のあるサウンドメイクは、一度惹き付けたら聴き手を離さない個性を放っていた。“昭和のあの頃を再現する安心感”と“新たな試みのワクワク感”の同居という、正に今回のコンセプトにフィットしたショーである。
 ライブ中盤、平山みきは一旦お着替えタイム。「次こそは黄色の衣装か?」と思わせるような空気の中、ザ・サーフコースターズのインストゥルメンタルライブが始まる。今でこそ耳馴染みが濃くはないサーフロックサウンドだが、昭和歌謡の時代には“全盛期”を迎えたサウンドだ。

サーフロックとは?

 押し寄せる波の如く奏でられた「これぞサーフロックサウンド!」という演奏。サーフロックサウンドの代名詞とも言える、ギターの「テケテケテケ!」というサウンド、怒濤の連打とスプラッシュなドラムプレイ、海岸線を沿うようなスリリングなベースラインーー、「サーフロックってどんな音楽?」と聴かれれば、ベンチャーズや当時のサーフロックを聴くのも最適であろうが、現代であったら、ザ・サーフコースターズの演奏を体験すれば理解できてしまうのではないであろうか。

 エレガントで、ちょっと斜に構えた不良っぽさ、そしてチャーミングな笑顔。“昭和歌謡の女王”という形容しか思い当たらないような物腰の平山みきは、漆黒のドレスと赤のヒールで再びステージに登場。サーフロックサウンドで更に熱を帯びた会場からは、これでもかという程の拍手と“口笛”で平山みきを歓迎した。

スタンディング・オベーションで幕を閉じた渋谷の「ビューティフル」ショー

 「楽しく歌わなきゃもったいない!」と、はにかんで、客席と近い距離でトークを楽しみ、「愛の賛歌」から始まるメドレーへとショーを繋げ、渋谷での「ビューティフル」ショーは佳境を迎える。アコースティックサウンド、渋谷系アレンジを交えながら、「ほっといてちょうだい」「恋のダウン・タウン」などの名曲を惜しみなく披露した。

 そして本編を「真夏の出来事」で締めくくり、アンコールでは平山みきのデビュー曲「ビューティフル・ヨコハマ」を最後に歌い上げた。ショーが終了し、 平山みきwithザ・サーフコースターズがステージフロントに集い挨拶をすると共に、着席スタイルであった会場は全員起立しての大歓声。東京渋谷・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE「ビューティフル」でのライブショーがどんな温度であったかというのは、このスタンディング・オベーションの決して短くない瞬間によって物語られた。(取材・平吉賢治)

セットリスト

平山みき with ザ・サーフコースターズ「ビューティフル」
2016年10月7日、東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE

1. AND THE ADDRESS ※ザ・サーフコースターズ演奏/Deep Purple cover
2. 心のとびらをノックして
3. ノアの箱舟
4. 希望の旅
5. フレンズ
6. マンダリン パレス
7. 愛の戯れ
8. ~ザ・サーフコースターズ コーナー~
9. 20才の恋
10. 愛の賛歌~潮風の季節~いつか何処かで
11. 涙の太陽~太陽の彼方に~真っ赤な太陽
12. 太陽の下の18才 *New Singleより
13. ほっといてちょうだい
14. 恋のダウン・タウン
15. 真夜中のエンジェル・ベイビー
16. 真夏の出来事 ~ナウ・アンド・ゼン ※New Singleより
EN01. ビューティフル・ヨコハマ 2016 ※New Singleより

 ◆平山みき 昭和24年8月22日生まれ、東京都大田区出身。蒲田中学校から日本音楽学校に進み歌のレッスンを始める。昭和42年、銀座の音楽喫茶「メイツ」オープンに伴いメイツ・ガールとしてステージに立ち、そこでコロムビアにスカウトされる。昭和45年、「ビューティフル・ヨコハマ」でレコードビュー。2作目の「真夏の出来事」が50万枚の大ヒットとなり一躍人気歌手となる。現在も独特の歌声は変わらず、ライブやショーに出演中。また、京都在住で「滞在型観光客」と自身のことを呼ぶ程の京都愛好家。京都に関する著書やCD等も発売している。

 ◆ザ・サーフコースターズ(The Surf Coasters) 日本のインストゥルメンタルロックバンド。ギタリストの中シゲヲを中心に1994年に結成、1995年にレコードデビュー。往年 のザ・ベンチャーズを髣髴させるサーフ・ロック・サウンドを身上とする。2004年、2005、2008、2014年にアメリカツアーを敢行。

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