島津亜矢、カバーに臨む姿勢とは
INTERVIEW

島津亜矢

カバーに臨む姿勢とは


記者:編集部

撮影:

掲載:21年03月28日

読了時間:約7分

 圧倒的な歌唱力と表現力から“歌怪獣”とも称される歌手の島津亜矢が28日、好評カバー企画「SINGER」シリーズの最新作「SINGER7」をリリース。キャリア35年を迎えた演歌歌手でありながら、ポップスや洋楽のカバーを着物姿で歌い、もはやジャンルや世代をも超えて支持される彼女の歌声の秘密を聞いた。

お客様の前で歌えなかった7カ月

島津亜矢「SINGER7」ジャケ写

――昨年のコロナ禍から1年が経ちました。毎年、全国各地でコンサートを行ってきた島津さんにとってどのような一年となりましたか?

 昨年の3月頃からコンサートが中止や延期になりました。正直長くは続かないだろうという思いはありましたが、それ以降も軒並みコンサートが出来なくなり、「これは大変なことになっている」と改めて思いました。そこから約7か月間お客様の前で歌うことはできませんでした。

――これだけの長い期間、お客様の前で歌わなかったことは初めてだと思いますが?

 誰もが初めて経験するようなことでしたので、歌い手である私に限らず、皆さんが大変な思いをされているので、歌えないことは仕方のないことだと思いました。

――島津さんにとって、コンサートというものはどういったものでしょうか?

 生の舞台というのは、約2時間という時間の中で『お客様』と『歌い手』という立場に少し距離があったものが、最後にはお客様と心の距離が近づいているところが良いところだと思っています。お客様と心を通わすことができるコンサートというものが、私自身にとって本当に大きなものだったと改めて感じました。

――昨年の3月にはYouTubeチャンネルをいち早く立ち上げ、7月には初めての配信ライブも行いました。

 コンサートを楽しみにされていた方や、会うことが出来ないお客様のために、配信でのライブとYouTubeでのチャンネルを開設いたしました。ファンの皆様から頂くお手紙や、こういったネット上でのコメントにも目を通していますが、本当に力になりました。

――コンサート活動を自粛されている中、昨年の夏には故郷熊本をはじめ、九州では大変な水害が起こりました。

 水害のあった人吉という町は、母が生まれた場所で親戚もたくさんいたのでとても心配でした。熊本は大きな震災もあって、まだ復興の途中だというのに今度は水害が起こって...熊本は、負けるもんかという思いが強い土地ですが、コロナもあって本当に大変な思いをされていると思います。状況が変われば一日も早く歌を届けに行きたいと思います。

――その後、昨年の10月には、通常の客席の半数という入場制限の中、名古屋で約7か月ぶりにお客様の前でコンサートを行いました。

 感染対策を行ったうえで、久しぶりにコンサートをさせて頂くことが出来ました。まだまだ不安も多い中、ご高齢のお客様も“亜矢ちゃんの歌聴かないとやっぱり元気が出ないから”って足を運んでいただき、そういった声や温かい拍手に涙が止まりませんでした。

演歌を歌わない「SINGER」シリーズはライフワーク

――さて、今年は“歌怪獣・生誕半世紀”ということで、デビュー35周年と合わせご自身にとってもまた節目の一年になります。3月28日の誕生日には、10年近く取り組んできている“演歌”を歌わずにポップスや洋楽を歌うカバー企画「SINGER」シリーズの最新作が発売されました。こういった“演歌”以外の歌へ取り組むようになったきっかけはありますか?

 もともとポップスや洋楽も好きで、母とこういったアルバムが出せたら良いねという話から、当時のディレクターさんに協力していただき出来上がったのが始まりでした。ここ数年、いろいろな番組で様々な歌に挑戦させて頂く中で、若い方や演歌を聴かない方々にもアルバムや私の歌を聴いて頂く機会が少しづつ増えました。最初のアルバムから10年が経ちましたが、歌い手としてライフワークにもなるよう
なシリーズになっていることは、本当に光栄です。

――そういった活動の中、“歌怪獣”と称されることでさらに多くの方にも知られるようになりました。普段演歌を聴かない若い世代からの反響も多いのでは?

 マキタスポーツさんに“歌怪獣”と名付けて頂いたのですが、最高の誉め言葉だと思っています。お仕事の幅も広がりましたし本当に感謝しています。SNSなどで若い方からのコメントをいただくことも嬉しいですし、番組などで共演させて頂く若いアーティストの方々からも刺激を頂いています。演歌の世界で生きてきた私にとって知らないことが多いのですが、そういった若い世代の方々との共演はいつも楽しませて頂いています。

――こういったカバー曲を歌うにあたって、普段はどのように音楽を聴かれているのですか?

 実は、プライベートではほとんど音楽を聴かないんです(笑)。オンとオフを切り替えていかないと疲れてしまうので。お笑い番組が好きで、テレビはよく見ています(笑)。

――では、これまで発売されたカバーアルバムに収録されている曲や、今回発売される「SINGER 7」では、どのように選曲されたのですか?

 実は、選曲に関しては殆ど関与しないようにしていて、自分の好みが出ないようにスタッフの方の意見をもとに選曲させて頂いています。これまでのシリーズの中には、私でも懐かしいと思う歌がありましたが、今回発売された『SINGER7』では、若い方々の歌ばかりでとても難しい面もありましたが、楽しくレコーディングいたしました。

――今回のアルバムでは、初めてラップにも挑戦していますね。

 GreeeeNさんの『キセキ』の中でラップに初めて挑戦しました。一度レコーディングしたものを甥っ子に聴いてもらったのですが、“ラップは言葉じゃないよリズムだよ!”って(笑)。甥っ子が歌ってくれたものを録音して聴きこんでから、もう一度リズムを重視してレコーディングしました(笑)。

演歌の歌い手として培われた圧倒的表現力

――これまでのシリーズの中でも、いわゆる『一発録り』で録音された曲が収録されていますが、今回のアルバムではMr.childrenの『GIFT』が、ピアノの弾き語りとのコラボレーションで収録されています。

 こういったカバー曲を歌う時、私はオリジナルの歌を繰り返し聴き込むということは殆どしていないんです。言葉の読み方とか伸ばして歌っている所とかは聴いて覚えますが、基本的にオリジナルをくずさずに私の色を入れるということを心がけています。私は演歌歌手なので、どうしても言葉、歌詞が重要なんですね。最初に歌は聴かせて頂きますが、歌詞を見て自分なりの解釈、表現で歌わせていただいています。

――島津さんが歌われるカバー曲を聴かせて頂くと、どの歌もオリジナルの印象に非常に近いと感じます。今回のアルバムにはテレビでの歌唱で大きな反響となったKing Gnuの「白日」や、Official髭男dismの「Pretender」をはじめ、「歌うたいのバラッド」(斉藤和義)、「全力少年」(スキマスイッチ)、「Hero」(安室奈美恵)、「ひまわりの約束」(秦基博)、さらには「To Love You More」(Celine
Dion)など、全15曲が収録されています。

 練習をする際に歌詞を見て何回か歌いながら、どこで上がるとか伸ばすとかポイントになる場所に印をつけていくのですが、数年前から、それを書き込んだ私のオリジナルの歌詞カードが頭の中に絵で浮かんでくるようになりました。だから、その私のオリジナルの歌詞カードがないと歌えないんです(笑)。

――その圧倒的な歌唱力だけではなく、演歌というバックボーンがあり、その独特な感性から生み出される「表現力」こそが、“歌怪獣”とも称される所以なのかと、今回のアルバムとお話を聞かせて頂き改めて感じました。まだまだ大変な状況が続いていますが、最後にファンの皆様へのメッセージをお願いいたします。

 今作『SINGER 7』は、普段演歌を聴かない若い方々をはじめ、幅広い世代の方に聴いていただけたら嬉しいです。今は外出をためらうこともあると思いますが、そういう時にも寄り添えるアルバムになって欲しいと思います。自分自身もそうでしたが、音楽は苦しい時に背中を押してくれたり、勇気づけてくれたりするものだと思いますので、少しでも皆様のお役に立てたらという思いです。

作品情報

「SINGER7」 島津亜矢
2021年3月28日発売
TECE-3630 
定価2,818円+税

1. THIS IS ME<オリジナル:Keala Settle>
2. Pretender <オリジナル:Official髭男dism>
3. Hero<オリジナル:安室奈美恵>
4. NO ONE <オリジナル:Alicia Keys>
5. ひまわりの約束<オリジナル:秦基博>
6. Story <オリジナル:AI>
7. 全力少年<オリジナル:スキマスイッチ>
8. To Love You More<オリジナル:Celine Dion>
9. キセキ<オリジナル:GReeeeN>
10. Precious <オリジナル:伊藤由奈>
11. 歌うたいのバラッド <オリジナル:斉藤和義>
12. やさしい風が吹いたら <オリジナル:小田和正>
13. GLAMOROUS SKY<オリジナル:NANA starring MIKA NAKASHIMA>
14. GIFT <オリジナル:Mr.Children>
15. 白日<オリジナル:King Gnu>

■「歌怪獣 半世紀生誕祭ライブ」オンデマンド配信
【配信日】
2021年3月28日16:00 ~ 2021年4月4日19:00

【鑑賞方法】
鑑賞チケットをオンラインで購入
※購入方法は、「島津亜矢公式HP」をご覧ください
https://www.shimazu-aya-koenkai.com/

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