INTERVIEW

山田杏奈

フラットな視点が引き寄せた“怪演”。
ホラー映画『樹海村』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年02月10日

読了時間:約6分

 映画『ミスミソウ』の主人公・春花を怪演し、以降も話題作への出演が続く山田杏奈(20)が、女優・山口まゆ(20)とのW主演でホラー映画『樹海村』(公開中)に挑んだ。映画『呪怨』シリーズを生んだ鬼才・清水崇監督の最新作。前作『犬鳴村』ではコロナ禍で異例の興収14億円超えの大ヒットを記録した。本作の舞台は有名心霊スポット、富士の樹海。その描写は「恐ろしい」の一言に尽きるが、山田は「怖さよりもどう撮るのかという所に自然と意識が行きました」とホラー映画に出演する役者として冷静に向き合っていた。

物事をフラットに

 舞台となるのは、有名な心霊スポット・富士の樹海。「絶対に検索してはいけない」とインターネット上で語り継がれる“コトリバコ”をモチーフに、断ち切れない呪いがもたらす狂気と混沌とした世界が描かれる。山田と山口は、その“コトリバコ”に翻弄させる姉妹を演じる。

 もともとホラー映画には縁がなかったという山田。出演が決まり、清水監督作『呪怨』や『犬鳴村』を観たといい、「怖さよりもどうやって撮っているんだろうとカメラワークなどを考えながら観ていました」。本作にどう挑むのか、役者としての向き合い方がその言葉に表れている。

 山田が演じるのは、姉妹の次女で霊が見える天沢響。役作りの一環として、霊感がある知人にどのような見え方をするのかを聞いたという。

 「空間の中に、等身大の“はりぼて”が置かれているような不思議な感じに見えるらしいんです。昔からそういうのが見えていたら慣れませんか? と聞いたら、いや慣れないですと」

 その話だけでも背筋が凍りそうだが「人でも知らない人が突然そこに立っていたら怖いですから」と至って冷静。「なぜ人は怖いと感じるのか?」と聞けば「それは相手が何を考えているか分からないからだと思います。意思の疎通ができないというか」。霊に限らず、見えないものや見えたとしても認識できないものイコール怖いと紐づけてしまうが、山田は物事をフラットに見る、そうした考えがうかがえる。

 そして、本作では「ただ怖い」ということだけでなく、姉妹の母親の愛情なども描かれている。

 「『犬鳴村』もそうでしたが、幽霊の側にも物語としての背景が描かれています。もちろん怖さもありますが、ファンタジーのなかにそうした要素も組み込まれていて、単にホラー映画で終わらない、新しい見せ方をされている気がします」

山田杏奈

感情の表現の違い、学んだこと

 撮影は、富士の樹海でも行われた。「落とし穴のようなところもあり、危険だなと思いました」とするも「昼間の撮影でしたので天気も良く空気が綺麗でした」と語る。しかし、その言葉には彼女なりの気遣いがある。

 本作は、自ら命を絶とうとした人々が広大な森のどこかに暮らしているという都市伝説がモチーフになっている。「フィクションですが、富士の樹海は実在しますし、都市伝説も絡んできます。その周辺に住んでいる方もいらっしゃると思いますから、その土地が怖いとはなかなか言えないです」

 片方に寄らず、フラットに物事を見る。それは表現に幅を持たせることにもなる。そんな彼女だからこそ、撮影となれば、想像を超える演じぶりを見せる。憑りつかれ落ちてゆく響の姿を通して「恐怖」が“観客”を襲う。

 響をどう捉え、演じたのか。

 「響は、信じているものを強く持っていて、自分が出来ることはこれしかないと思っているので、憑りつかれた芝居は逆に、危うく見せなきゃ、変な印象を受けるように芝居しなきゃと意識しました。人を襲う時も力強く襲うのではなく、変な所を見たり、フワッとした喋り方もして。憑りつかれた響なのか、素の響なのか、どちらか分からない見え方を意識しました」

 その“二面性”の表現は監督と話し合いながら作り上げたようだが、彼女の偏らない考えが引き出したものとも言える。一方、山口演じる姉・鳴との関係性のバランスは難しかったという。

 「響は不思議なところもありますので、最初はお姉ちゃんに疎まれたり、響も基本、自分は自分というところがありましたが、後半には姉妹の絆、お互いに助け合うという関係性に変化が生まれます。でも最後で再び変化が生じます。その時の響の感情と、ホラーとして見せるそのバランス、折り合いをどうつけるか考えました」

 落ちゆく響の姿は、どこか映画『ミスミソウ』の主人公・春花にも通じるところはある。

 「確かにそれはあると思います。『ミスミソウ』の春花は、表現の出し方としてどちらの方面に行くか、ということでしたが、『樹海村』の響は根本的に考え方が他の人と違う。監督と最初に話したのは『ナウシカ』みたいな子だねと。なので、人間の世界にいるけど違う括りの世界観を持っているキャラクターがいる映画を参考に観ていました。そういう感覚なのでずっと宙に浮いた存在でした。でも響は途中まで抗おうとしています。対して春花はそれを受け止めてしまったというか。諦めていた子でしたので、通じるとこもありますが、その点は明らかに違います」

 同じ負の感情でも様々なものがあり、それをどうアウトプットするかもそのキャラクターによって違う。それを見事に演じ切っている。まさに『ミスミソウ』に続く“怪演”と言ってもいいだろう。そんな山田にとって本作は役者人生にどのような影響を与えそうか。

 「同じ芝居でもホラー映画はまた違うことを学びました。感情をベースに考えるところを、外側からどう見えるようにするのか、その全体的なバランスをいつもよりも考えたお芝居でした。叫びひとつとってもレベルがあります。そういうところの見せ方という技術的なところが今回多くて、新しく学べました」

山田杏奈

同い年・山口まゆ、そして音楽

 姉妹を演じた山口とは同い年。初対面から違和感は全くなくスッと姉妹になれた感覚があったという。

 「同じ世代で、同じお芝居の世界にいますので、共演がすごく楽しみでした。鳴と響は対照的な姉妹だったからこそ、撮影はすごく刺激的でした。同い年ですが、お互いに良い感じに姉と妹としていられたと思っています」

 そんな山田に音楽のことも聞いてみた。「普段、どういう音楽を聴いていますか?」

 「シティーポップやヒップホップなど色々聴きます。何かの作品に出演している時は役から抜ける時にも役立てています。家に居るときはずっと音楽をかけていて、朝・晩・就寝前と聴き分けしています。たとえば、朝はアップテンポのもの。夜帰宅後はノリのいい感じの曲を聴いて、寝る前は落ち着いたものを聴いています。今聴いているのは…邦楽だと最近はyonawo(ヨナオ)さんです!」

山田杏奈

(おわり)

【取材・撮影=木村武雄】

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