INTERVIEW

奥平大兼

探求心は芝居にも。注目新人の素顔。
『恋する母たち』で息子役


記者:木村武雄

写真:(C)TBS

掲載:20年10月23日

読了時間:約4分

 俳優・奥平大兼(17)が、23日放送スタートのTBS系金曜ドラマ『恋する母たち』(毎週金曜よる10時)に出演する。デビュー2作目の作品が初のドラマ。しかも木村佳乃・吉田羊・仲里依紗が演じる3人の母たちの息子の一人という重要な役どころだ。大型新人と期待が寄せられる奥平は何を思い、撮影に臨んだのか。【取材=木村武雄】

『MOTHER マザー』で高い評価

 奥平のデビュー作は、今年公開された映画『MOTHER マザー』。初のオーディションで射止めた役柄は、長澤まさみが演じたシングルマザー・秋子の息子・周平。親の歪んだ愛情しか知らずに育った17歳の少年を好演、高い評価を受けた。鮮烈な銀幕デビューを飾った彼にかかる期待は大きい。しかし、彼自身は反省点も多かったようだ。

 「期待を寄せて下さるのは嬉しいのですが、僕の中では演技が上手いとは思っていなくて…。感情に任せて演じ切りましたが、全体としてはまだまだ未熟。撮影が終わった後や取材を受けるなかでそれを強く思うようになりました」

 その一方で芝居への意欲も芽生えた。「役者としてもっと演じたい、もっと出たいという思いが強くなりました。まだまだ自分自身の個性は分かりませんが、これから俳優としての武器を見つけていきたいです」

 それを経て迎えるデビュー2作目は、木村佳乃主演の金曜ドラマ『恋する母たち』。「恵まれています」と謙虚に言うと「映画の撮り方とは違うので慣れない部分もありました」と撮影を振り返った。先の作品の舞台挨拶では「思ったよりも緊張していません」と笑顔を浮かべていたが、初めてのドラマ現場に「少し固くなっていたかもしれません」と17歳の素顔を見せ、笑った。

大介を演じる奥平大兼(C)TBS

共通点はない、役者冥利

 本作は、柴門ふみさんによる同名作品が原作。迷える母たちの恋愛と友情を描く。脚本を担当するのは大石静さん。三者三様の家庭環境を持つ3人の美しい母たちには一見幸せそうな生活を送りながらも、誰にも言えない秘密と悩みがあった。ギリギリで平穏を保っている母親たちの心の隙間に入り込む、別の男性との“恋愛”の行末は…。

 奥平が演じるのは、吉田羊が演じるキャリアウーマン・優子の一人息子で、有名私立高校1年生の大介。成績1位で入学した中学校は2年の秋から不登校でひきこもりに。矢作兼演じる父のシゲオは小説家で専業主夫。優子とは距離をとって接しなかなか心を開かないが、シゲオとは仲が良い。本当はかっこいい母親だと思っているが言葉に伝えづらいと思っている役どころだ。

 「大介は頭が良い人で自分の思っていることを表に出さない、表現できないタイプです。彼には自分のなかで抱えている秘密があって、物語が進むにつれて色々な動きをします」

 そんな大介との共通点は「ない」ときっぱり。「僕は頭が良いわけでもないですし、思ったことを言う、表現するタイプ。ですので、大介は僕には理解できないところがある人物です」

 自身にないものを役に落とし込み、表現するのは役者にとっては挑戦であり、財産になる。『MOTHER マザー』の周平もそうだが、そうした役どころに「経験値としては良いと思っています。演じていて楽しいですし、こういう経験は今後役に立っていくと思います」と前向きだ。

 実際に役作りでは、参考となる人物像を探すなどして当てはめていった。台本を読んで疑問に思う箇所は、その役柄の感情と向き合い、自身で答えを探す。「すぐに監督に求めるのではなく、自分で考えるべきだと思っています。メモしてそれを実践して、それが間違っていると指摘されれば、その場で直す、そういうことが大切だと思います」

 向き合い、探求する。そうした考えを養ったのは何か。

大介を演じる奥平大兼(C)TBS

趣味で養った探求心

 趣味の一つに、芸術・音楽鑑賞がある。最近ハマっているのは、世界的ロックバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。その聴き方が奥深い。使用楽器や昔と今のリズムの違い、テーマ性などを聴き比べる。「レッチリに限らず、芸術にはその時代や文化が反映されていると思います。専門家までとはいきませんが、知りたいという欲求があり、その曲から時代性を見ると面白いです」

 幼少期はピアノも習っていた。「ピアノを習っていた時はクラシックが大っ嫌いで…(笑)中学生になっていろんな音楽を聴くようになってからはクラシックもその時代や作者のことなどを調べて楽しんでいます」

 音楽には、作者の心情や時代背景が表れる。「音楽も美術も昔のことを調べて聴くのが好きです」

 そんな芸術は自身にとって探求心の源だ。「音楽や芸術がなければ探求心自体が無くなる気がします。好きなものを分析することが、自然と台本の読解力に繋がっていると思います」

 ピアノだけでなく空手も学び、音楽や芸術にも触れる機会に恵まれた。そうした家庭環境に「恵まれている方だと思います。自分のやりたいことをやらせてくれる親ですので感謝しています」

個性を出したい

 そんな彼には目標とする俳優が多くいる。だが、それは公言しない。「みなさんに対しての尊敬の念はもちろんあります。ただ、自分のやり方で自分にしかできないような、個性が出るような演技をやりたいと思っています」

 演じる上で大切にしているのは「リアル」。それを実現させるのは、役柄への感情移入と体験。「これからも沢山経験していきたいです」

 経験に貪欲。探求心は底知れず。そうした彼が作り出す「大介」はどのようなものなのか、期待される。

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