INTERVIEW

坂ノ上茜

「こだわりがわがままにならないように」芝居で心掛けていることとは?:映画『神回』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年07月26日

読了時間:約8分

 女優の坂ノ上茜が、7月21日公開の新感覚タイムループ青春映画『神回』に出演。高校生の加藤恵那を演じる。映画『神回』は東映ビデオ(株)が立ち上げた、新たな才能を発掘する新プロジェクト【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】製作作品。「青春映画」をテーマに募集された、309本の企画と脚本の中から選ばれた映画『神回』はタイムループ作品。多くのループもの作品と違うところは5分間を繰り返すという、今までにない大胆なストーリーとなっている。MusicVoiceではヒロインを務める坂ノ上茜にインタビューを実施。本作の見どころから、役者として追求していることについて、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

1回目が重要な作品

村上順一

坂ノ上茜

――この作品のストーリーを聞いた時はどう思いました?

 東映ビデオさんが新進クリエイターと”劇場映画”を作り上げるTOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY』というのがありまして、その中から『17歳は止まらない』と『神回』の2作が選ばれました。『神回』のワークショップに私は2日間参加させていただいたのですが、それをきっかけに出演が決まりました。今回は作品の概要よりも先に台本から読んでいたので、5 分に 1 回のタイムループはちょっと短かすぎない? と思いました(笑)。

――その間隔の短さにはびっくりしますよね(笑)。

 台本には何万回目のタイムループみたいなことが書いてあったんですが、正直すぐにはイメージできなくて。どういう話になっていくんだろうとちょっとモヤモヤした時間があったのですが、タイムループする意味が分かってからは、すごく面白くなってきて、台本を読む速度が早くなっていったのを覚えています。

――ワークショップの時から、加藤恵那を演じることは決まっていたのでしょうか。

 ワークショップの段階では、恵那の役もやりましたし、それこそ青木(柚)さんが演じている主人公の沖芝樹も演じたので、台本を読んだ時は恵那目線というよりは、樹目線で見ていましたね。

――どのようなメッセージ性がこの作品にあると感じましたか。

 初恋の人と後悔のない時間、悔いのない人生を過ごすとか、そういったメッセージがあると思うのですが、私は樹と一緒にこの不思議な世界に迷い込んで、楽しんでもらえたらいいなという気持ちが勝りました。特にこういったミステリアスな作品は結果がわかって観るのと、わからないまま観るのとでは、印象が違うと思うんです。今はネタバレした上で映画を観たいという人も多いと聞きました。例えば、事前に「この映画は泣けますか?」と尋ねる方もいたり。感情に振り回されたくないから、内容をある程度知った上で作品を観たいからなのかなと思います。

――面白いですね。

 今はTikTokのようなショートムービーが流行っているので、 長編映画を見ることに対して構える方が多いのか、面白いなら見るとか、そういう方が多いからこそ、今回のようなネタバレ厳禁ものは、1回目が重要な作品だと思います。こういう時代だからこそ、映画の世界にどっぷり浸ってもらえたら嬉しいです。

――撮影についてお聞きします。同じような場面を何度も繰り返すのは大変そうですね。

 樹も苦しいですし、それを蓄積させていかなければいけない青木さんも、近くで見ていて大変そうだと思いました。すごく集中して取り組まれていた印象です。

 私の場合は、5分間の出来事を忘れなければいけないので、前のカットでどんなに嫌なことがあって、涙を流していたとしても5分後にシーンが変わったら、何事もなかったかのようにケロっとしなければいけなくて。この作品はカット数がすごく多くて、シーン数が多いから香盤もすごいことになっていました。 毎回忘れないといけないというのは、すごく大変でした。

――一見、同じようなシーンも使い回すのではなく、撮っていたんですね。

 逆に使いまわしているように見えていたら嬉しいです! 毎回、恵那の「ありがとう 」のセリフで樹が目を覚ますのですが、その言い方がちょっとそっけなかったり、最初と言い方が変わってしまってないか、すごく不安だったので、監督に確認しながら進めていました。正直、使い回せばいいのにと思ったこともありましたね(笑)。

――あはは(笑)。ところで、タイトルの『神回』には、どのような意味があるのでしょうか。

 人の半生を描いたお話になっていて、人生において神回というのはどこにでもあるもの。一番幸せだった瞬間。人生というのは実は神回の連続で、本当は後悔していることも自分が選択したことで、人生は素晴らしい、という意味が込められているみたいです。

――ロケ地は上野原市というところなんですよね。

 はい。山梨県の緑がいっぱいあるところでした。撮影に使用した学校は廃校で、冷暖房もないし、水も出ない現場だったので、血のりを使う撮影は特に大変でした。洗い流すために車で大浴場に行ったりと、メイクさんも大変そうで。紫外線も浴びまくりのすごく夏を感じた撮影でした(笑)。

――共演した青木さんにはどんな印象がありますか?

 お芝居に振り幅があって、ミステリアスだし、正面に立っているだけで、見ている側が色々想像させられるような雰囲気を持った役者さんだなと思いました。お会いするまでは、「どういう性格なんだろう?」と未知な部分が多かったのですが、実際にお会いして話してみたら、いつもニコニコしていてすごく優しい方でした。知り合いにダンス動画を送りたいから一緒に振りを覚えよう、って言って(笑)、Tiktokを見ながら一緒に練習したりとか、普通の男の子のような一面もありました。

作品がより良くなるために、自分が動ける人でいたい

村上順一

坂ノ上茜

――女子高生役ですが、前にも演じられていましたよね。今回、再び演じてみていかがでした?

 映画『愛ちゃん物語』という作品で女子高生を演じましたが、あれは4年前くらいに撮った作品で、当時は大学を卒業してすぐの頃だったこともあり、高校生役もまだ大丈夫かなと思っていたのですが、今回は流石にどうなんだろうと少し不安になりました。でも、『神回』のストーリーを知って、これなら大丈夫かもと思いました!

――お気に入りのシーンは?

 ずっと教室にいたので、外に出られたシーンや御神楽を踊るシーンが楽しかったです。私が通っていた高校では3年生になると、御神楽を体育祭で踊ることになっていて、踊ったことがあったので、今回撮影で踊れたのはテンションが上がりました。

――本作は文化祭実行委員になった2人のストーリーでもありますが、坂ノ上さんの文化祭の思い出は?

 高校1年生の時に体育館のステージでAKB48の曲をセンターで踊ったことが楽しくて、思い出に残っています。

――撮影を通して、何か感じたことはありましたか?

 私の高校は一つ下の学年から共学になったので、私の学年までは女子校でした。男子がいる学校生活を送ってこなかったので、もし、共学だったらこういう感じなのかな? というような感覚をこの作品で感じられて、すごく嬉しかったです。

――いまどんなことを意識しながらお芝居に臨んでいますか?

 映画やドラマはみんなで作るものということを毎回感じています。自分のこだわりがあってもいいけれど、それがわがままにならないようにと心掛けています。周りに変に気を遣わせずにいられる人でいたい、現場がより心地よくいられるように接していきたいと考えています。

 例えば、共演者の方に芝居でどこかやりづらいところはないか、声掛けができるようになれたり、監督がやりたいことを気軽に言ってもらえたりするような人になりたくて。作品がより良くなるために、自分が動ける人でいたいと思っています。そして、アクションをもっと極められたらと思っています。

――アクションに興味を持ったきっかけは?

 『ウルトラマンX』で戦うヒロインとしてアクションをやらせていただいて、それがすごく楽しくて。もともと新体操をやっていたので、ちょっとアクロバットな動きはできたんです。現場にはアクション俳優の方もいらっしゃったんですが、新体操の技を生かしたアクロバットやアクションというのは、体が柔らかくないとできない技で、これはアクション俳優の方でも吹替がなかなかできないことを知って、「自分がやってきたことが武器になるんだ!」と感じた瞬間でした。

――過去にやっていたことが、いま生きているんですね。

 はい。それが武器になるんだったら、いつでも使えるようにしておきたいなと思いましたし、特技を生かすためには、しっかり基礎を固めながら、アクション作品にも呼んでもらえる役者になりたいと思いました。そうすれば自分が出演するジャンルの幅を広げることができると思ったので、もっとアクションを極めたいです。

――最後にこの作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

 タイムループというのは、これまでもいろんな作品があったと思います。でも、5分でタイムループしてしまうところや、結末もこれまで観てきた作品とは、一味違うものになっていると思うので、最初の1回目の感覚を楽しんで、主人公の樹と一緒に、この空間を彷徨ってもらえたら嬉しいです。ぜひ、劇場でお楽しみください。

(おわり)

村上順一

坂ノ上茜

▽坂ノ上茜プロフィール

1995年12月5日生まれ、熊本県出身。
「アミューズ全国オーディション 2009 THE PUSH!マン」で俳優・ルックス部門賞を受賞。15 年、テレビ東京「ウルトラマン X」のヒロイン・山瀬アスナ役で女優デビューを果たす。ドラマ「チア☆ダン」(18/TBS)、「監察医 朝顔」 (19/CX)、映画『見えない目撃者』(19/森淳一・藤井清美監督)、『きみの瞳が問いかけている』(20/三木孝浩監 督)、LINE ドラマ「昔、好きだった人から LINE が届いた。」(20)に出演。21 年 3 月に TBS「王様のブランチ」レポータ ーを卒業。現在 BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」にレギュラー出演中。22年には、主演映画『愛ちゃん物語』(大野キャンディス真奈監督)、ヒロインを務めたアクション映画『BAD CITY』(園村健介監督)など多くの作品が公開され、 23年も『ぬけろ、メビウス!!』(加藤慶吾監督)に主演するなど、女優にバラエティ番組出演と幅広く活躍している。

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